迷宮の向こう側-3/3-






「俺、ライトに何も出来てないぞ?」
「一緒にいればそれでいい。それ以上何もしなくても私にはそれだけで充分だ」
「…信じて、いいんだな」
「寧ろ疑われていたことが心外なんだが」

腕を組み真っ直ぐ自分を見上げながら、その言葉の通り不服そうな声で告げるライトニング―フリオニールの口から出る言葉はもう、他にはなかった。

「………ごめん」

ライトニングは謝罪の言葉に対して小さく首を横に振る。

「逆に考えたら…お前がそうやって悩むと言うことは、それだけ私は愛されていると思っていいんだろう?」
「当然だろ。どうでもいい相手に対してこんなに悩んだりしないさ。ただ…な」

自然と笑みが浮かび、その視線がライトニングをゆっくりと捉える。ただ今は、愛しくて仕方ない目の前の存在だけを瞳に映していたい。

「こんなに誰かに愛されるのが初めてだから、いまいち自信が持てなかった」
「ここまで思い悩まれるほど愛されたのは私の方だって初めてだが、自信が持てないなんてことはない」

強いな、とフリオニールは改めて思った。
自分の悩みを一蹴して、更にここまで心を幸せで満たす言葉を―意識しているわけではないだろうが見事に選んでのけるライトニングはやはり、強い。
そしてはっきりと思う、この強さこそが自分を捕らえて離さないのだと―
ライトニングは一度だけすっと目を伏せ、それから凛とした声で言い放った。

「ところで、そこの物陰で盗み聞きしてるのは誰だ」
「はっ!?」

言われてみれば確かに気配を感じる―つまり誰かが、今の自分たちの会話を全て聴いていたということになる。

「やべっ」
「バレてたっ!!」

それと同時にいくつかドタバタと足音が聞こえてくる。

「…声がしたのはティーダとバッツ。あと2つ足音が聞こえたが一つは軽かったからジタン、もう一つは…ラグナか?」

冷静にそう言い放つライトニングを見てフリオニールからは自然と笑みがこぼれた。やはり、彼女は強い。

「俺もライトくらい強かったらなあ」
「お前も充分に強いだろう。一旦悩むと揺らぎやすいところを除けば」

ぽんぽん、とフリオニールの肩を叩いてライトニングは立ち上がる。

「とにかく、忘れるな。私は間違いなくお前を愛している…それだけは信じていてほしい」
「ああ…もう迷ったりしないさ」

思考の迷宮で彷徨うフリオニールに差し伸べられた手はしっかりと強くて、そして優しくて。
この手は信じられる。何が起こっているのかすら全く解らないこの世界の中でもライトニングだけは何があっても信じられる―フリオニールの中に出た答えはあまりにも単純で、そして…揺るぎがなかった。


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