御伽噺の恋-3/4-






「私ね、ここに来てまたちょっと思い出したことがあるの。私が元いた世界にも大きな劇場があったな…って。流石に飛空艇じゃなかったけど」
「ちょこちょこした話を聞いてるとティナの世界も色々と面白そうだよね。無理だって分かってるけど行ってみたいなぁ。あれも見てみたいんだ…砂に潜るお城だったっけ?」

ティナとオニオンナイトはそんなことを喋っている。ティナは仲間達の中でも元いた世界の記憶が薄い方に入るが、ふとした切欠でこまごまとしたことは思い出しているようで―
一番近くにいるだけにオニオンナイトはそんな話を色々と聞いているのだろうか、ティナの話に楽しそうに相槌を打っていた。
そして彼らは、舞台のあるあたりへとたどり着く―しっかりと作られた舞台に、一行は再び感嘆のどよめきを上げる。

「すっげー!え、これほんとに飛空艇なのか?」
「信じられないんならあとで機関室にも連れてってやるぞ」

驚いたようにきょろきょろとあたりを見回しているヴァンに、何故か自慢げにジタンがそんなことを言っていたりして。
しかしヴァンが驚きたくなる気持ちも分からないではない。これが飛空艇だとはにわかに信じられないほどしっかりと作られた劇場は一行の目を奪う。
奥の方にも色々あるぞー、とジタンに言われ、一行は思い思いに飛空艇の中を散策し始めた。

「ねえ、向こうに衣装部屋あるみたい!ちょっと試しに色々着てみない?」

などとティファがユウナを誘っていて、ティーダを伴って3人が衣裳部屋の方へ消えていったり。
そうかと思えばスコールが何かを読んでいて、ふと見ればそれは残されていた台本だったり。

「…お、ポーションみっけ」

と、戸棚の奥からラグナがポーションを引っ張り出して、ジタンにもらっていいかと許可を取りにいっていたり。

そんな調子で仲間達が皆思い思いに楽しむ中―フリオニールはひとり、大道具を置いてある倉庫のような場所にいた。
雑多に置かれた大道具…それはハリボテの窓枠などもあれば、実際に使えそうな木製のテーブルや簡易なベッドなども置いてある。
その大道具の数々を見るフリオニールの目は、興味よりも寧ろどこか懐かしさに彩られていて―
通路の外から、そのフリオニールの様子を見て取ったライトニングはフリオニールの邪魔をしないようにそっとその倉庫の中へと足を進める。

「何をしている、フリオニール」
「…ああ、ライトか。いや、この大道具がさ」

ライトニングの声に振り返ったフリオニールは、ライトニングに笑顔を向けながら丁度真横あたりにおいてあったテーブルに触れる。
話の続きを待ちながらもライトニングはフリオニールの隣まで足を進め、フリオニールが触れているテーブルに目をやった。

「このテーブルか?アンティーク風に作ってあるようだが」
「ライトにはやっぱそう見えるか。…でも、俺が元いた世界ではこういうのが主流だったんだ」

はりぼての窓枠や戸棚、そしてこちらは本物であるらしい木製のベッドや椅子などに次々視線を移しながら、フリオニールはぽつりと呟く。
瞳の奥に好奇心よりもそれを懐かしむ色合いが強く出ていたのはそう言う理由でか、と納得しながらライトニングはフリオニールの視線の先にあった椅子に腰掛けてフリオニールのほうを見上げる。

「さっきジタンもここを通ったからそのときに聞いたら、やっぱりアンティークをイメージして作ったんだって言ってた。昔話の世界観での芝居に使ったって」

笑顔の奥に、どこか複雑な色が見て取れてライトニングは何も言わずフリオニールの言葉を待つ。
きっと彼の言葉はまだ続く。そのくらい読み取れる程度には、自分はフリオニールのことを理解しているつもりでもあったし。
そして案の定、暫く言葉を出さずにまた大道具の数々を眺めていたフリオニールが不意にその視線をライトニングに向けた。


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