御伽噺の恋-2/4-






「お前も随分嬉しそうだな」

いつもよりどことなく表情が明るく見えるフリオニールに気づいたのか、ライトニングの表情もどことなく明るい―フリオニールが楽しいと思っていることがライトニングにとっても楽しいのかもしれないなどと自分で思いながら、ライトニングはそんなフリオニールの隣に並ぶ。
ライトニングの問いかけに、フリオニールは大きく頷いてみせた。その目はどことなく輝いているように見えて…まるで子供のようだと、ライトニングはそんな風に思っていた。
子供さながらに表情を輝かせているフリオニールは、ライトニングの問いかけに興奮したかのように言葉を紡ぎだす。

「だって飛空艇を劇場にしてるなんてのがまず凄いだろ?俺はそんな大きな飛空艇に乗ったことないしさ」
「ああ…そう言えばお前の元いた世界ではそう言う技術があまり発達していなかったんだったな」
「それに、劇場に入った事もあまりないような気がするんだ。俺が元いた世界ではみんな、心にそんな余裕を持ってはいなかったから」

ライトニングはその言葉にはああ、と短く答えて…そのときの、子供のようだと思ったフリオニールの横顔から目が離せなくなる。
幼い頃から戦乱の続く世界にいたフリオニールの…この世界でも結局戦うさだめは変わっていないが、それでもこんなひと時の娯楽によってその心に受け続けてきた傷が癒されているのであれば―この状況に少しは感謝するべきなのかもしれない。
ぼんやりとそんなことを思いながら、ライトニングはフリオニールと並んだまま仲間達と共にその巨大な飛空艇を目指すのであった。


「では、レディファーストでどうぞ」

乗り込み口でジタンはやはり芝居がかった口調でそう言って、先頭近くを歩いていたティファの手を恭しく取って見せる。
…いつもの如く「興味ない」と言い放って同行しなかったクラウドが見ていたらそれだけで憤慨しそうな光景ではあるが、ここが劇場であることも踏まえてのジョークだということを理解しているのでティファも何の迷いもなく手を引かれて劇場艇に乗り込む。その光景に対しても一行から沸くのは笑いのみであって。

「って、お前らぼさっとしてんなよ?ティファはクラウドが来なかったからオレが代わりにエスコートしただけだけどお前らがやらないならオレが4人まとめてエスコートしちゃうぜ」
「余計なお世話だよ。じゃ、行こうかティナ」

悪戯っぽいジタンの笑みが出た段階で、オニオンナイトは既にティナの手を取っている。言われて慌てたかのようにフリオニールがライトニングに、ティーダがユウナに手を差し出した。
そんなフリオニールとライトニングの様子に、また一行からはどっと笑いが湧き上がる。その笑いを気にすることなく、手を取られたライトニングとユウナは劇場艇の中へと足を進めた。
その後に続いて他の仲間達もぞろぞろと中に足を踏み出す。そして皆、驚きや感嘆の声を上げるのであった。
中は劇場と言うこともあってか、飛空艇としては割と豪華に作られている。その豪華な装飾などを見ながら、それぞれに色々思うところがあったようだ。

「しかし、世界が変われば飛空艇の利用目的も変わるものだな。俺達の世界の飛空艇は人を運んだり、戦争の道具として使われたりしていたが…飛空艇を劇場、か」
「凄いよね。元の世界に還ったらこの話、みんなに聞かせたいな。きっと驚くと思う」

しみじみと呟いたカインの言葉にセシルが深く頷いている。彼らが所属していたのは軍事国家だったということだから、飛空艇が娯楽の為に用いられているということもまた驚きの対象となるのだろう。

「でも、空も飛べて芝居も見られるってちょっと得した気分だよな」
「そうかぁ?別に空飛ぶ必要はないような気がするんだけどな。おれ絶対芝居に集中できないと思う」

ヴァンの呟きに彼らしくもなく眉を顰めて首を振ってみせたバッツを全員が一瞬不思議そうに見て、そして思い出す―そう言えば、バッツは高所恐怖症だった、と。
それを思い出した瞬間にまた仲間達が笑い出したり、バッツをはやし立てたり。賑やかに語らいながら、その足は奥へと進んでいく。


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