「なぁ、頼むよナマエ。俺の世界に来て仕事手伝ってくれ。」
「頑張ってエースとかそのセツって奴に、仕事させた方が良いんじゃないのか?」
「毎日だから困ってるんだ!」
バン、とテーブルを叩いて名前は声を荒げる。
毎日じゃ、流石に不味いだろ名前の世界のエース…
マルコも多分やる様には言ってるだろうけど、聞く耳持たずなんだろうな。
「俺には俺の世界があるから、流石に名前の世界にまで行く事は出来ないだろ。」
「…じゃあ俺をそっちの世界に連れてってくれ。」
「それも、ちょっと…」
確かにこっちにも白ひげ海賊団は居るけど。
でも、名前の知る白ひげ海賊団じゃない事は確かだ。
それに…
「“家族”置いてきても、いいのか。」
「…!」
「仕事キツイのは分かるけど、“家族”を置いてこっちに着たら駄目だろ。」
名前が男だったら、一発殴ってる所だ。
俺がそう言うと、名前はちょっとしょんぼりした表情で席に着いた。
…なんでだろうな、俺が悪い事したみたいになってる気がするんだが。
俺は別に悪くないのに。
「…兎に角、無理なものは無理だからな。俺からは、名前仕事頑張れとしか言えない。」
「…取り敢えず、戻ったらエースとセツをはっ倒してくる。」
「……。」
そこまでするのか。
いや、大変だってのは聞いてて分かるけど。
分かるけど、いいのかそれは。
ガタガタガタガタッ!
ガンガンガンガンッ!!
「…なぁ。」
「…なんだ。」
「あの外に居るのは、名前の所の奴らじゃないのか。」
「…セツが居るから、多分そうだ。どうやってきたんだアイツら。」
不意に聞こえた大きな物音。
二人でその音源に視線を向ければ、名前の所のが居た。
あ、エースやマルコやサッチも居る。
一部以外は本当に瓜二つだな。
いや、そのまんまなのか。
「でも入ってはこれないみたいだな。」
「入ってこなくていい。」
「だけど「名前ー!!」…凄い呼んで「姉さーん!!」…るけど。」
「知らん!今はこの安息の時間を堪能したい!」
言い切ったなぁ、名前。
と言うか、あの白ひげ海賊団の面々からしてみれば俺は不審人物だよな。
不審人物過ぎるよな、流石に。
「一応俺は海軍で、男だしな。危険視するよな、そりゃ。」
「ナマエはトラファルガーみたいな事はないだろ。それに俺を捕まえる気はないんだろ?」
「…まぁ、そりゃ。」
初めに言った通り、海賊だからと言って捕まえる気は更々ない。
それについさっき話してくれた名前の所のトラファルガーみたいに、睡眠薬入りのアップルパイ出したりとか、ストーカー行為したりとかは流石に…
そんな事したら嫌われるのが目に見えてるだろ、絶対。
それともあれか、恋は盲目って奴か。
ガヅンッ!
ガゴッ!!
「マルコとかが蹴り食らわせ出したんだが。(凄く必死そうなんだが放置でいいのか、あれ…」
「凄いなこの店は。アイツらが攻撃しても壊れないとか。」
「気にする所はそこか。」
「…たまにはこんな時があってもいい筈だ。アップルパイ美味い。」
「また頼んでたのか、名前。」
これで二十五個目だぞ。
そう言う俺も二十四皿目なんだけどな。
…流石にそろそろ、お互いの世界に戻った方が良いかもしれないな。
あ、いや戻るのは俺の方か?
「名前、俺はそろそろ自分の世界に戻る事にするよ。」
「え?」
「此処はどうやら、名前の世界の方だったみたいだからな。だって、名前の所の奴らが居るんだし。」
「…あぁ、確かにそうなるな。でも、もう二度と会えなくなりそうだな…」
「……。」
この出会いがもし偶然だったのなら、二度目があるとは限らない。
でもグランドラインで常識は通用しない。
もしかしたらって事があるかもしれない。
「まぁ、またグランドラインの気が向けば会えるんじゃないか?」
「…その時はお互いに年食ってたりしてな。」
「はは、有り得るな。」
お互いにそう言って、笑い合う。
外の音が、止んだ気がした。
名前が笑ったから、見惚れてるんだろうな多分。
「じゃあ、またいつか。」
「あぁ、またいつか会おうな。」
互いに手を握り、何時の日かの再会を約束する。
それが何時になるかは分からない。
でも、名前達にならまた会いたいと思った。
次の楽しみに胸を膨らませながら、俺はその店を出た。
(((名前!!!)))
(姉さん!)
(…あぁ、安息の時間が終わった。)
(名前ついさっきの奴誰だよ!店の外出たかと思ったらいねぇんだけど!)
(アイツ海軍だったけど何もされなかっただろうねい!?)
(何か変なもん食わされたりとかしてねぇよな?!)
(姉さん俺心配したんですよ!マジで!船に姉さんの匂いがしないからあぶふぅっ!)
(アイツは、ナマエは良い奴だったから大丈夫だ。(あ、ナマエ代金置いてってる。奢られちゃったのか、俺は。)
(随分と上機嫌だね、ナマエ。)
(まぁな。俺と同じようで違う奴に会えたから。)
(…へぇ。海賊?)
(まぁな。それよりクザン、仕事してくれ。(流石に別世界の白ひげ海賊団とは言わない方が良さそうだ。)
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