リクエスト作品 | ナノ






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そして店長に散々謝り倒されたナマエはお代を帳消しにしてもらい、アップルパイは二ホール貰うことで手を打った。ほくほく顔でカフェを出たナマエは嬉しさをそのままに話し出す。

「なぁ、ついでだからそこの公園でこれも少し食わないか?」
「いいですね!さっきのケーキは結構小さかったですし」

そのまま公園へと足を運び、アップルパイを切り分けた二人。(何で切ったかは察してはいけない。)サクサクのパイにぎっしりと詰まったリンゴにナマエは目を輝かせる。その姿は手配書に載っているような人間には見えない。それを横から見るたしぎがこっそりと癒されていることをナマエは知らない。

「いただきます!」
「いただきまーす」
「んー…………」
「…わぁっ!これ美味しいですね!リンゴの甘さが程よく抑えられているというか…」
「……たしぎ」
「はい?」
「これ、」

ナマエが続けた言葉を聞き、表情が固まったたしぎ。その数分後、公園には二人の悲鳴が響いた。




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スモーカーはイラついていた。何にというと、自分の部下に。

「(刀見てくるっつってから五時間だぞ…。いつもなら長くても三時間だってのに)」

タンタンと貧乏ゆすりによって足が音を立てる。それを近くで聞いている部下のそのまた部下は内心青ざめる。早く帰ってきてくださいたしぎさん…!!心の中で叫んだところでたしぎには届かない。

「スモーカー准将!」
「見付かったか?」
「いえ、迷子の子供が…」

やっと帰ってきたかと思えば迷子の子供。そんなのこの島の駐屯所にでも預ければいいものを、何故自分のところに言いに来るのかと蟀谷に青筋が立つ。その場の温度が一度は下がった気がして部下は小さく身震いした。

「んなのさっさと駐屯所に…」
「い、いえ!それがただの迷子ではなくてですね…!!」
「すもーかーさぁん!」
「…すもーかぁ…」
「…な、!」

言い淀んだ部下の足元から現れたのは、明らかに見知ったの面影を残した子供だった。一人は先程まで自分が探していた部下であり、もう一人は自分が追い求める海賊の一人。彼女達の身長はスモーカーの腰辺りかそれ以下だ。スモーカーの姿を認めたたしぎらしき子供は、勢いよくスモーカーの腰に抱き着いた。ピシリと固まるスモーカーとその場の空気。部下の部下はこそこそと後退りをしつつ「おい、あれどうすんだよ…」「あれたしぎさんだよな…?」「てか准将顔赤くね?」等といった会話をする。ギロッ!と部下の部下を睨み、その犯罪者も泣き出しそうな顔でナマエらしき子供に向き合う。

「…テメェ、こいつに何をした」
「…わるいが原因はおれじゃねーぞ。ちゃんとわけを話すからつかまえようとすんなよ」
「あぁ?」
「すもーかーさん!ほんとうですよ!ナマエさんはわるくないです!っむむぅ!」
「…っち。分かったから叩くな、たしぎ」

ぷくぷくとしたたしぎの頬をつまみ、そのまま抱き上げる。あれ、お前等そういう関係だったっけ?と小さく首を傾げるナマエだが、このシリアスな空気を壊すつもりはないのか口には出さない。ちなみに首を傾げたナマエを見て、部下の部下は鼻血が出そうになるのを必死に耐えていた。

「ん」
「…何だこりゃあ」
「これ、おれとたしぎが食ったやつ」

んで、ここを見ろ。とナマエが指したのはケーキボックスの角。そこには黒い丸…いや、ハートの海賊団のマークが印刷されていた。そしてケーキボックスの中にはメッセージカードも入っており、『半日はそのままだから、すぐに俺に会いに来いよvV』という手書きの文字が。メッセージカードが真っ二つに裂けているのは恐らくキレたナマエが読んだ瞬間に破いたものと見られる。そしてそれをたしぎが必死に止めたのであろうという事も。

「これな、たぶんとらふぁるがーが作ったやつだ」
「何だってこんなもんを…」
「どうせくだらねーこと考えてたんだろ」

ごもっとも。

「おれがあのかふぇに行って、これを食うようにしむけたんだと思う」
「そのカフェは?」
「そこのこうえんを出て左にまがったとこ。きいろのやねと風ぐるまが目印だ」
「そうか。…おい」
「はっ!今すぐ確認してきます!!」

慌しく駆けて行った部下の部下を見送ってから、ナマエは「ん、しょうこぶっぴん」とスモーカーへとケーキボックスを渡す。スモーカーもそれを素直に受け取る。

「……で?」
「ん?なんだ?」
「お前は何を目的にカフェに行った?そもそも何でたしぎもこんな状態になっている?」
「…」

まさかカップル限定のアップルパイ目当てに彼女役をしてもらったのが事の始まりであったなどと言えるはずもなく、ナマエは能力を駆使してスモーカーから逃げ出した。

カフェから帰ってきた部下の部下は、目ぼしい情報もなかったと肩を落として帰ってきた。そして、海水に浸って力の出ないスモーカーを必死に支えている子供のたしぎが今にも潰れそうになっているのを発見し、急いでたしぎを助け出すことにした。




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「…で、こんなになってんのかい」
「ナマエンギャワイイイイイイイイイイイイ!!」
「エース、ナマエ下ろしてやれよ。出会って二秒で肩車とか可哀想だろ」
「おめめパッチリくっそヤヴェエエエエエエエエエ!!」
「えーす、うるさい」
「舌っ足らず超可愛いいいいいいいいい!!」
「おやじぃー…」
「グララ、エースは放っといて俺の膝に来な」
「オヤジ!?」

裏切られた!と言わんばかりに顔を歪めたエースだが、どう考えても自業自得である。しかし、ここでまさかの返答が返ってくることになる。

「んー、いやだ!」
「「「……!?」」」
「えっ、ちょ、ナマエ、俺の頭に抱き着いてくれるのは凄く嬉しいんだけどそれだと俺の首を絞めることにぐえぇ…!!」
「お、おいナマエ…?」
「いやだ!えーすがいい!」
「うごごごご…!!!!」
「待ってナマエ!二重の意味で待って!」





たまには甘えてみたいの!

(エースの顔色が真っ青通り越して真っ白に!!)




「すもーかーさん、このくっきーおいしいですねぇ」
「…お前にやるから食え」
「いいんですか!?わぁい!」
「「「(俺達何しに来たんだっけ…)」」」





→後書き+懺悔


 

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