「……あ゙ー…、大声出したら眩暈が…」
「…大丈夫っすか、姉さん……」
「悪いな…」
よろめいたナマエを支えたセツもやはりというか何と言うか、覇気がない。いつものウザさは何処へやら。腹が減っては戦は出来ぬという言葉がクルー全員の頭に過(よ)ぎる。ちなみにエースは甲板のど真ん中で簀巻き状態のまま放置されている。
「二人一組で一時間釣りまくれ。優勝したチームには俺が何かしてやる」
『「「「おおおおぉぉーー!!」」」』
「あんま叫ぶと倒れるぞ、お前等…」
青い顔のナマエは力無い声で始め、と言うとセツの肩を借りて船の淵の方へ歩いていった。ナマエも相当キているらしい。足取りが覚束ない。
「もっと早く天候が良くなればこんな事にはならなかったんだがな…」
「仕方ないっすよ…。いくら素敵で無敵な姉さんとはいえ天気までは操作出来ないっすもん…」
「…お前はまだ食塩と水だけでも生きていけそうだな」
「いや、マジ勘弁してください」
憔悴しきった顔でセツが謝る。それを無視してナマエはさっさと釣り糸を垂らした。甲板ではそれぞれのチームが釣りを開始している。チームごとの様子を観察していこう。
まずはマルコ&サッチチーム。
「…お、また釣れた!」
「こっちも釣れたよい」
元気のない顔をしながらも中々順調らしい。バケツの中では魚が5、6匹程泳いでいる。……だが、数分後。
「ぎゃああ!何しやがるマルコ!!」
「うるせぇ黙れフランスパン擬き。食えもしないくせにんなもんぶら下げてんじゃねぇよい」
「待って待って待って!!マルコさん落ち着いて目が据わってる!!」
何が起こったのやらいつの間にか喧嘩が始まっており、マルコがサッチを餌にしようとしていた。もはや最初の勢いは残っていない。この後、二人のバケツの中に魚が増える事はなかった。
次にジョズ&ハルタのチーム。
楽しそうという理由からジョズの肩に乗って釣りをしているハルタだが、体の大きいジョズの肩までの高さ+ハルタの身長。釣り糸が海に届いていない。(ちなみに本人は気付いていない。)ジョズはそれを言おうとしているものの、肩の上ではしゃいでるハルタに中々言い出せなくて困った表情をしている。
「何でジョズばっかり釣れるんだよー!?」
「いや…それは……」
「ずるいー!」
「……!!??」
最終的には嫉妬したハルタがジョズのバケツを海にぶちまけるという暴挙に出た。ジョズ涙目。そしてハルタはまたジョズの肩の上へ。やはり釣れない。
他にも、ラクヨウ&イゾウチームは寝そうになったラクヨウをイゾウが容赦なく銃で撃ったり(怖ェよ!!byラクヨウ)、ビスタ&クルエルチームはクルエルが海に向かってバズーカを発射し、空中に飛び散った魚をビスタが切って刺身にしていたり(魚を釣って下さいよ…byクルー)と様々だ。
そして一時間後。甲板には魚の山が出来ていた。隊長以外のクルー達も相当頑張ったらしい。疲れた表情をしているものの、どこかやりきった顔をしていた。
「優勝は………」
『「「「……(ごくり)」」」』
「……オヤジ&ナースチームだ!」
ナマエが叫ぶと同じにクルー達が「!?」と目を見開く。オヤジならいつもの場所に座ってたはず…!とそこを見ればもぬけの殻。ナースの姿も見えない。
「グラララ…ナマエ、俺達の優勝でいいのか?」
「だってオヤジが釣ったやつが一番凄いだろ」
船尾の方から歩いてきた親父が担いでいるのは……まさかのどでかい海王類。ナース達もたくさんの魚が入った大きなバケツを持っている。
「とりあえず、まだ生きてる魚は生簀に入れておけ。腐らせるわけにはいかないからな。それからコック達は昼飯を用意してくれ」
『「「「はい!」」」』
「間違ってもエースに食料を与えるなよ」
『「「「はい!」」」』
「ナマエ……マジで俺死んじゃう…」
「知らん。今日の夜まで反省してろ」
「………死ぬ……」ぐきゅるるるる
こうして、餓死寸前だった白ひげ海賊団の危機は去ったのだった。
めでたしめでたし?
我慢はほどほどに
(なぁナマエ…本当に俺死んじゃう…)
(煩い)
(ナマエーー…)
→おまけ+後書き
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