またかよ。心中に留めたはずの言葉は無意識のうちに垣根の口から溢れた。その言葉は今、目の前にある悲惨な光景に対してでもあるが最もはその中心で凛と立っている華奢な少年に対しての言葉だろう。地面に転がっている、という表現が似合うそれらは垣根を見て只でさえ醜く歪ませていた顔を更に歪ませるのだからこれはもう笑うしかない。

「よく飽きねえな、お前ら」

嘲り。しゃがみこんで目線を僅かに近付けると、無能力者の生徒は少しばかりか身体を震わせ。手に握られている鉄パイプやスプレーに、垣根は大袈裟なため息をついた。こんなモノで、あんな化け物を倒せると思っているのか。況してや触れることさえ困難なはずだ。数人の人間が正面から勝負を仕掛けて勝てる筈がない。垣根は哀れだな、と誰に言うでもなく呟き、立ち上がると生徒の頭を蹴り飛ばした。ぐらり、此方の視界まで揺れた気がして、おー痛え、と喉を鳴らして笑う。

「で、お前はまた弱い者イジメして楽しんでんのか?は、ほんっと笑えるな、一方通行」
「…ベラベラとうるせェ野郎だ。オマエもこォなりたくなかったら今すぐ失せろ」
「聞こえねえよ。こん中に俺のオトモダチがいるんだ」
「その蹴り飛ばしたやつがか?」
「友達いないお前にはわかんねえだろうよ。まあ、」

口実なんてどうでもいいけど。
垣根は口角を吊り上げ、こちらを睨み付ける一方通行に向けて制服のポケットから取り出した缶コーヒーを投げつけた。これは試合料金。254回目の喧嘩を申し込むための料金だ。それを面倒臭そうに受けとると、一方通行は首輪のように見える漆黒のチョーカーに手を置いた。そして、現代的な杖を手放し、くだらなそうに首を鳴らす。

「ちくしょう、平等にじゃんけんじゃねえのかよ」
「…前回はオマエ有利だっただろォが」
「ふ、は。お前能力無かったら底なしに弱えもんな。マジで」
「殺されてェのか」
「んなわけねえだろ」

木原センセーは怖いからな、と付け加えれば、く、と笑う白い少年。いつだったか、一方通行に負けた末、木原数多に教育という名の暴行を受けたのは。校舎を壊すのがやはり悪いのかと思う。(主に校舎を壊しているのは一方通行なのだが。)それにしても、学園第一位の能力を誇るには疑わしいほどに華奢な身体は、きっと傷ひとつない。あいつは化け物なのだ。だからその身体に傷をつけたら勝ち。勿論、肉体戦では完璧に一方通行が不利、能力戦では認めたくはないが垣根の方が不利だ。仕方なく、いつもはじゃんけんで勝利した方が有利な条件というルールがあるのだが、今の一方通行にその気はないらしい。大方機嫌が悪いのだろう、それも垣根にとってはほんの些細なことだった。間を置き、垣根は軽い単調で、

「俺が勝ったら放課後デート、若しくは俺の寮で一泊」
「オマエが負けたら女のアドレス全消去だ」
「妬いてんの?」
「死ね」


楽しい、と思う。

消去されるアドレスの人数を数えながら、垣根はただ小さく笑った。



A criminal is you.



(犯人は貴方だ)



fin.





シロップ!の天草さんより、25000hitのリクエストでいただいた小説です…!本当にありがとうございます!!けんかっぷるな垣一…この再限度!!>< 半端ないですね…!とっても悶えました! 
この度はおめでとうございました!!
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