小さい頃からへんなものが見えていたので、とりあえずこれが普通ではないということだけは分かっていたから誰にも何も言わずにただただ避けていた。
だからって大人しく見ているわけではない目の前を漂う黒い靄。

「あーもう、うっとーしいなー」

べしんと本で叩くと黒い靄はふよふよと埃のように隅のほうに移動していった。
はー、まったく。どうせならどっか遠くに行ってくれればいいのに。なんて、言葉の通じそうにないやつなんだから文句を言ったってしょうがないんだけど。
それでもこぼれる愚痴をぶつぶついってると視線を感じた。

「……」

目線の先には眼鏡くんこと奥村雪男くん。
「おーっと失礼失礼、奥村くん。眼鏡かけてる人が図書室って言ったらなんて言ったって本を読むためだものね、うるさくしてごめんごめーん」なーんて軽くいえたらいいんだけど、奥村くんの視線がそれをフインキを言える感じじゃないからねこれがまた。
まあ気にしててもしょうがないので、そのままそーっと視線をそらして本をかかえるとまた手元にふよふよと黒い靄が来たのでべしんと払うと今度こそ奥村くんのほうから息をのむ声が聞こえた。「まさか…!」ついでに押し殺した感じでなんか言ってるしさ。声が小さくて分からないけれど、わたしには関係ないですよーっとべしんと叩いた靄をついでに足でげしげしと隅っこへ追いやると今度こそ普段おとなしい奥村くんのほうから「あの、きみ!!」とわたしに対して聞いたこともないくらい大きな声をかけられたからびっくりして、本を落とした。
ドサドサッという大きな音とともに突きぬける激痛は地味に痛い。
あー、涙出てきた。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -