いつもの通り、サボる哉太を月子とふたりで手分けして探していると思ってもみないものを見つけてしまった。 「きみ、大丈夫?」 「た、たすけてください〜〜!」 自分の背よりも高いところで揺れる手と足。まさか、木の上に女の子がいるなんて。 なんとか、手を貸して下ろすのを手伝うと彼女はすとんと木の下に着地した。 「あはは、助かりました」 ありがとうございました、というと頭をさげてお礼をしてきた。 「いや、それは別にいいんだけど。どうして木の上なんかに…」 そういって頭上を振り仰ぐも、登ってまで見るようなものがあるようには見えなかった。 「あ、それはこれを取るために仕方なく」 そういってひらりと見せてきたものはプリントだった。 「…プリント」 「はい、プリントです」 どっからどう見てもプリント。 「もしかして、それを取るために?」 「ええ、まぁ」 錫也は少しびっくりして返すも彼女はそれも気にせず、プリントをたたんでポッケにしまった。 「別にとらなくても、またコピーしてもらえばよかったんじゃ」 「いや、あの、なんか、取れる気がしたんで。…それに、先生の手を煩わせるのも悪いというかなんというかですね」 「(とれる気がしたって…)」 いろいろ突っ込みところがあるがここにはいつも突っ込む幼なじみはおらず、錫也は頬を掻くだけに留めた。 そして、へらりと笑う彼女を見ると手も足も少しけがをしている。 (あー、もう。これからすることをあいつらに見られたら、またオカン呼ばわりされるんだろうな) そう思いつつ、目の前の少女を見るとどうすればいいのか迷っているようで、視線が地面と錫也を行ったり来たりていた。その様子がまるで小さい子供のように見えて、錫也はふっと表情を緩めた。 ――ほっとけないと思うのはなぜだろうか 「俺は二年天文科の東月錫也っていうんだ。きみは?」 「て、天文科一年の鈴木花乃子です!」 「そっか、じゃあ鈴木さん」 保健室に行こうか、そういって錫也は花乃子の手を引いて保健室を目指した。 (それにしても、女の子が木登りなんて危ないからやめなさい) (で、でも………う、はあい) (分かったならいいよ) ((…東月先輩ってお母さんみたいだなぁ)) 110310/群青三メートル |