「花乃子さん」 「なあに、基子ちゃん」 「花乃子さんとお兄ちゃんとチューしたんですか?」 「え?………っぇえ!?」 ――なんでそんなことを、基子ちゃん! 心の中で声を大にして叫ぶ。 してないと言えば嘘になるけど、いや、だって大好きな彼とキスぐらいしたいと思うし、秀君は健全な男子高校生だよ。していないのが不思議というぐらいには。だけど、馬鹿正直に答えられないというのが乙女心というもので。 うん、同じ同性の女の子とは言え、もとっちゃんは彼の妹だし。そんな妹に対して兄の恋愛事情をさらけ出していいものなのか悩むよう。 ……それになにより、恥ずかしいし…。 「うう……」 「かわいいなあ。ほんと、お兄ちゃんにはもったいないよ」 恥ずかしくて死んじゃいそうだよう……!そう心の中で叫んでるともとちゃんがなにかをぽそりと呟いていたのが聞こえてそっちを見ると、ぼーっとこっちを見ている、もとちゃんと目が合った。 「……もとちゃんはなんで聞きたいの…?」 今度はもとちゃんが言葉につまった。 「それは…」 もごもごとするもとちゃんに反撃できるチャンスができたとばかりにつつつと近寄る。 「もしかしてさ………もとちゃん、好きな人できたの?」 そういうともとちゃんはもそもそとクッションに顔をうずめた。よく見ると首から上が赤い。 「ほんとにできたの?」 それに髪の隙間からちらりと見える基子の耳も赤いし。照れると耳が赤くなるところは兄妹一緒らしい。 …それにしても!照れるもとちゃん、かわいいかわいい! 思わず頭を撫で撫でするともとちゃんは不満そうにぶすーと頬を膨らませてぷいっと反対を向いてしまった。 ありゃりゃ、失敗してしまった。 うーんと考えて拗ねてしまった基子をどう宥めようかと考えていると花乃子さんとお兄ちゃんがいつちゅーしたか教えてくれたら許しますと言われた。 えええ、そこに話を戻すの!? 「もとちゃーん」 ううう、と赤くなりながらもとちゃんを見るとつーんとされた。 (これは言わないとだめなの…?) このままもとちゃんに無視されたらショックのあまり死んじゃうと思う。 本気で。 「秀君と初めてしたのは……………つきあって二日目、だよ……」 言った瞬間うきゃああとクッションに顔をうずめて叫ぶ。だから、実際にはふがあああとクッションに音が吸い込まれて謎の音として響いてる。怪しいのは分かってるよ。でも恥ずかしいんだよう。 「おーい、もとー母さんが下りて来いって。後、花乃子をいいかげん返してよ」 秀君がしたからもとちゃんを呼ぶ声にはいはいともとちゃんが返事をして去っていった。もとちゃん、クールだね。もう少し照れてほしかった……。ドタン!となにかが倒れる音がして耳をそばだたせたけどなにも聞こえてこなくてたぶんきのせいだと思い、さっきの態勢に戻って、うーうーとクッションを抱えてうなる。 「………くそ……もとのやつ……」 がらっと部屋の入口が開いた。 「秀君どうかしたの……?」 痛そうに頭をなでながら登場した秀君に首を傾げると秀君はうん、いや、まあとなんともにえきらない話し方をしてがくりと肩を落とした。 「……?………元気だしてね?」 元気がなさそうな秀君の頭をぽふぽふとたたくとうんと返事が返ってきた。 110329 |