人生っていうのは、先に何があるか分からないんだから楽しいのだと先生が言っていた。
 じゃあ、わたしの隣にいる彼は楽しくないといえるのだろうか。
 陽にあたると金色にも見える髪にうさぎみたいに真っ赤な瞳をもつ、幼なじみの神楽坂四季は幼い頃から未来がうつっていた。例えば、こけて怪我をする未来や明日忘れ物をして立たされるであろうわたしの未来なんてもの。四季の瞳は息をするよりも簡単に未来をうつしだしていた。

「それってまるで神様みたいだわ」

 春のそよ風とは言い難い強風はがたがたと窓を揺らしてようやくやって来た春の温もりをさらうように通り過ぎて行く。そんな風が窓を叩く音が部屋に響くなか四季はわたしの膝の上に頭を乗せてつむっていた目をぱちぱちと瞬いて「…もしかして俺のこと?」と聞いてきた。

「四季以外だれがいるの」
「俺は、神様なんてものじゃ、ない」

 とつとつと零すような独特な話し方で話す四季は、不思議そうな顔で見てきた。
 瞬きをする度に隠れていたルビーみたいな瞳が現になる。澄んだ瞳はまるで宝石みたいで思わず誰にも見せないように隠してしまいたいと思わされるほど、魅力に溢れてみえた。

「もちろん。四季に神様なんてさせないわよ」
「なんで?」
「だって、神様になったらみんなに平等にしなきゃいけないのよ。そんなの嫌だわ」

 四季の髪をすく手を止めて顔を見つめると四季は起き上がってわたしの体を包み込むように抱きしめた。

「じゃあ俺はおまえの神様になる。そしたら、おまえの傍にずっといれる」

 するりとすがるように引っ付いてくる四季はまるで小さな子供みたいだ。

「ばかね、四季は」
「……ばか?」
「そうよ」

 四季とわたしの間に挟まれていた手を四季の背中に伸ばすと、四季の体からふにゃりと力が抜けてお互い寄りかかるようにピッタリと引っ付いた。

「だって、それだったらとっくの昔に四季はわたしの神様なんだもの」


You are not made to do in God. Because, you are only my thing.



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