Dグレの世界に行ってみる

「あ〜〜! 忙しい忙しい!」
「あ、レイちょうどいいところに」

白衣をひるがえしているレイに話しかけた。ピタリと止まるとレイは相手に向き直った。
レイの腕の中にはぐらぐらと揺れる山積みの資料の山。とうてい、レイの細っこい腕じゃ持てなそうなその量を軽々と抱えるとレイがすたすたと歩きつつ文句を言うのを聞きつけリーバーは呼び止めた。

「なんですか、リーバー班長」
「今から、室長のところだろ」
「はぁ、そうですけど」

嫌な予感だ。逃げたい。

「じゃ、これ頼んだ」

そういって、一歩後ずさったレイが逃げぬ間に山の上にさらに資料を載せた。

「はああ?! この荷物が見えないんですか!」

目を剥いてレイを怒るのを聞くと、更に人が集まった。

「あ、おれも頼むわ」
「俺も俺も!」
「あはは、じゃあ、オレも!」
「あんた達、なんですか! 鬼ですか! てか、自分で行け!」
「頼んだぞ〜」

ぎゃんぎゃん吠えるレイに、ぐっと親指を立てる一同はにやにや笑うと早々に立ち去る。このまま居たってレイの火の粉がかかるばかりでいいことがないからだ。
高く積まれ過ぎた荷物を置くこともできずに溜め息をつくのをこらえると、また足を動かして今度こそ室長室に足を向ける。
ぐらぐらする資料を支えながら、歩き出す。

「ったく、あいつらの方が悪魔だ、悪魔」
「なに、レイ。だれがアクマなんさ?」

仕方ないので怒るのを諦めて、むくれつつも歩いていたら、後ろからぽんと叩かれたレイの頭。

「あ、ラビ」
「よっす。ただいま」
「おかえり。今帰ってきたの?」
「っそ。ユウも帰ってきたから、もう少ししたらぷりぷりしてるのに会えるさ〜。なんせ今回もハズレだったからな〜」
「ふぅん。じゃあ、しばらく近づかないでおこうかな」
「それがいいさ〜。…それにしても、これまたいつもに増して大荷物だな」
「みんなが押しつけていったからね」

 レイの嫌味にラビは苦笑い。
これじゃあ前も見れないだろうに。ラビは思いつつ腕を伸ばした。

「しょうがないな〜。ほれ、半分持ってやるさ」

ラビに会うとこうしていつも手伝ってくれるので素直に甘えることにする。やっと、視界が確保できて歩きやすくなったことに一息ついた。
その横でラビがよろりと体を後ろに傾けた。

「ちょ、おま、よくこんだけ持ってたな」
「こんなの普通だけど」

ケロリと答えるレイ。自分も鍛えているはずなのに。科学班で鍛えていないはずのレイよりも腕力がないことに泣きそうになる。すたすた歩くレイの後ろをよろよろとついていくラビを通り過ぎた人がああまたかと笑って見ていた。

「……もうちょっと鍛えよ」

 ぽつりとつぶやくと、いつの間にかレイが前の方で振り返って不思議そうな顔をしていた。





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