04


「ったく…」
あれからプラス3本の酒瓶を空にしたこいつは、漸く満足したのかスヤスヤと寝息を立てている
結局、持ってきた酒の殆どが俺の胃袋に入る事はなかった
穏やかに眠るルビィの頬を、食べ物ならぬ酒の恨みとばかりに叩く
「おい、起きろ」
痛みに一瞬眉を寄せるが、直ぐに規則正しい寝息が聞こえてくる
起きるつもりはないらしい
もう一度溜息をつき、ルビィを持っていた毛布で包んでから、見張り台に掛けられた縄梯子を降りる

洗濯済みの籠から毛布を1枚取り出し、キッチンへ向かう
とっくに寝静まった船内には波の音と、合わせて揺れる船の軋む音だけが子守唄の様に響く
キッチンに近づくと光が漏れていることに気がついた
誰が居るかなんて明白だ
何も言わずに扉を開けるとクソコックが仕込みをしている最中だったらしい
「おいルフィ、夜食なら作ってやるから盗み食いすんな」
「盗み食いじゃねェよ」
「!……何の用だマリモヘッド」
「コーヒーを一杯よこせ」
「あァ?テメェ頼み方ってモンがあんだろうが」
「おれのじゃねェ、ルビィのだ」
「は?ルビィちゃん!?なんでルビィちゃんが!?」
女の名前を聞いただけで喚きながら顔を近づけてくるクソコックに煩わしさを感じながら、何故こんな事を自分がしているのか考える
−面倒くせェ
「いいからコーヒーよこせ」
いまだブツブツ文句を言うクソコックの淹れたコーヒーを受け取り、キッチンを後にしようと扉を開ける
ふと立ち止まり、見張り台の上でルビィの言っていた言葉を伝えるか迷う
−……当人達で何とかしやがれ
やはり面倒になってしまった俺はあいつの眠る見張り台へと足を向けた





『いやァごめんごめんゾロ君!ホントすまん!』
東の空が薄っすらと白み始めた頃、呑気に眠りこけていたルビィは、漸く目を覚ました
昨晩の酒は残っていないらしく、酒があまり好きではない船長とは違ってイケるクチらしい
コーヒーはすっかり冷め、アイスコーヒーになってしまっていた
固い見張り台の床に身体を預けていたせいか、頬には木目の跡がついてしまっている
座り直してからコーヒーカップに口を付けるルビィを眺めながら、欠伸をひとつ
「そういや、夜言ってたことだけどよ」
『夜?』
「クソコックに嫌われただの、嫌がらせされるだの言ってたろ」
『あー…ここ最近牛乳味のする食べ物ばかり勧められるんだよね…』
「は?牛乳?」
『何か悪い事したかな…』
コーヒーを啜りながらウンウン唸るこいつを見る
「牛乳嫌いなのか」
『無理…加工してあれば良いんだけど、牛乳そのものと、味と臭いがする食べ物とかはダメ』
「……それクソコックに言ったのか?」
『言ってないけど…』
「言っといてやれ」
『?わかった』
首を傾げながら飲み終わったカップ片手にルビィが梯子を降りていくのを見届け、見張り台の床に寝転がる
起きてきた騒がしい船長達の声を聞きながら微睡みに沈んでいく
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