01

「なァサンジ……今いいか?」
「なんだ、どうしたんだ?チョッパー」


ある日の昼下がり
静かな海上に浮かぶメリー号へ気持ちのいい陽射しが燦々と降り注ぐ
春島が近いのかぽかぽかとしていて、今日なんかは昼寝にピッタリだ
昼食後のこの時間、いつもなら腹拵えを終えたルフィとウソップ、そしてチョッパーが直ぐに大騒ぎしながらバカをやっているのだが……今日ばかりは暖かな陽気に眠気を誘われたのか、ルフィはメリーの頭の上で、ウソップは甲板で大の字になって寝ている
マリモは見張り台の上で昼寝だろう

……野郎どもの事はどうでもいい
今はいち早く、食後のティータイムをマドモアゼル達にお届けしなくては
レディ達の喜ぶ顔を頭に浮かべ、思わず顔が緩むのを感じる
咥えている煙草からは、俺の気持ちを代弁するかの様に、ハート形の煙が飛んでいく
苺のパンナコッタに最後の飾り付けをしていると、キッチンに顔を覗かせる小さな影がひとつ
さっきから姿の見えなかったチョッパーだ
ここで冒頭の会話に戻る


「なァサンジ……今いいか?」
「なんだ、どうしたんだ?チョッパー」
俺がデザートの準備をしているからか、チョッパーは少し遠慮気味に話し掛けてくる
「それ、ルビィ達に出すのか?」
「ああそうだが…お前らの分もあるから安心しろ」
「そうか!良かったァ〜〜〜!!………じゃなくて!!そうじゃ無いんだよ〜〜サンジ〜〜」
パンナコッタがある事に一度は喜んだチョッパーだが、今度は困ったように俺のズボンの裾を両手で掴み見上げてくる
「なんだなんだ、どうしたんだよ?」
「サンジ、頼みがあるんだ」
やけに真剣な目をしたチョッパーに、思わず目線を合わせようと屈む



「ルビィちゃんに牛乳を飲ませる??」
「そうなんだよ!牛乳飲まないと…飲まないと……!!」
「の、飲まないとどうなっちまうんだ!?ルビィちゃんは!?」
「このままじゃ骨粗鬆症になっちまうよ〜〜〜〜!!!」

つい先日、気に食わないマリモとの鍛錬に付き合っていたらしいルビィちゃんから武器として使っていた骨を貰ったチョッパー
前々から気にはなっていたらしく、その骨密度を検査してみたところ、骨粗鬆症に片足を突っ込み始めている事が分かったのだとか
ルビィちゃんがマリモと鍛錬をしていた事は本当に、本当に気に入らないが、今はそんな事よりもルビィちゃんの身体の事だ
「その骨しょしょう症?の話はルビィちゃんにしたのか?」
「それが能力で骨密度は変えられるとか何とか言って躱されてるんだ……」
チョッパーの目線が哀しげに下がる
「さっきルビィに言ったんだ、牛乳を1日コップ1杯でいいから飲んでくれって…そしたら……」
「そしたら?」
「渋い顔して、魚食べてるから大丈夫って…」
そう言ってチョッパーはガックリと項垂れてしまった

何とかしてみる、とチョッパーと約束をし、再びキッチンに向き直る
確かにルビィちゃんは牛乳が苦手だと本人から聞いている
と言うより、この船のクルー全員の好き嫌いはちゃんと把握している
しかし、ルビィちゃんの場合は、牛乳そのものがダメなのであって、手が加えてあれば問題ないのだと、これも本人から聞いている
−……これから暫く牛乳中心の献立を考えるか
別に牛乳そのものでなければ大丈夫なのだ
料理はもちろん、デザート、飲み物だって作れる
パンナコッタに飾り付けを終え、盆に乗せる
それを片手で支えながら、レディ達の元へ向かう為扉を開ける
頭の中では、牛乳を飲んだルビィちゃんの喜ぶ顔を思い浮かべながら

『わあ!サンジありがとう!!牛乳って美味しいんだね!!』

「でゅふ、でゅふふふふ♡」
『サンジ、どうしたの変な声で笑って…あ!それ今日のデザート!?わあ〜〜美味しそう!!』
「お待たせしました、マドモアゼル」
取り敢えず、今は俺のデザートで喜んでいる姿で大満足だ
パンナコッタにも牛乳は使っているし、ね
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