仄暗い船の底から

ゾロとウソップも消えた
今回は1日に2人も消えてしまった
毎日毎日、確実に一味の誰かが消されていっている

異変に最初に気づいたのはおれだった
朝、いつもより早く目覚めた、いや寝れなかったが正しいだろうか、おれは仕込みをしていた
ルビィちゃんやチョッパーが消えちまった事、今後の事を鬱々と考えながら、ふと時計を見ればもう6:30だった
−…遅い
確か昨夜の見張り番はウソップだった筈だ
いつものウソップならば、見張りが終わり次第ホットミルクを飲みに厨房へ来て、そのまま二度寝をしに船内へ戻る
見張りはもうとっくに終わっている筈だ
「おいおい!こりゃどういう事だァ!?」
沸騰するお湯を睨みながら考えていると、甲板からフランキーの声が聞こえてきた
慌てた様子のその声に、一旦火を止めおれも甲板へ出る
他のクルーは出てこない
「フランキー!どうした!?」
呆然と上を見上げるフランキーに問うが答えは返ってこない
彼と同じ様に頭上を見上げれば、雲ひとつない晴天には不釣合いな黒が
「な、なんだよこりゃ……」
「誰かのイタズラにしちゃァ度が過ぎてやがるぜ」
見張り台が真っ黒に塗りつぶされていた
「そうだ!ウソップは!?見張り番はあいつだった筈だ!」
胸が騒つく
ぞわぞわ、と嫌な予感にトリハダが出る
梯子に手と足を掛け、登っていく
ひとつ手を掛ける毎に末端から体温を奪われている様な、そんな気がした
「お、おい!サンジ気をつけろよ!」
下から聞こえるフランキーの声がどんどん遠退く

見張り台に辿り着いたおれはグルリと辺りを見渡す
黒く塗りつぶされているだけで誰も居らず、特に変わった点はない
謎の塗装も乾いていて、触れればパリパリと音を立てて潮風と共に飛んでいってしまった
「…い!サ……ジ!降……こ…!!」
「なんだフランキー!?」
下から聞こえるフランキーの声が聞き取りにくい
「い…から!降……こ…って!!」
聞き取りにくいが、降りてこいと言っているらしい
見張り台の手摺に足を掛け、蹴る
甲板に着地した瞬間、見張り台が音を立てて崩れ落ちてきた
「な……あぶねェ……」
心臓がバクバクと音早鐘を打つ
「板が腐ってたらしいな……一体何がどうなってやがるんだ」
そう言うとフランキーは、黒い板を摘まみマジマジと観察を始めた
「こりゃ何の塗装だァ?芯まで真っ黒だ」
一際強い潮風が吹くと、フランキーの持っていた板はバラバラと粉になった
「……気味が悪ィぜ」
それ以上の言葉は出なかった

甲板を1本の酒瓶が転げていく
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