仄暗い船の底から

ゾロが居なくなった

ダイニングでの一悶着があった後、酒瓶片手に1人消えたゾロ
そっとしておいてやろう、という事で皆が片付けをし、あいつの様子を見に行ったのがおれだ

展望台にでも登ってひとり寂しくトレーニングでもしているのだろうと思いきや
そこにゾロの姿はなく、このキャプテン・ウソップ自ら様子を見に来てやったのに……と文句を垂れながら見張り番であったおれは見張り台へと登った

見張り台に着いて先ず目に入ったのは、黒だった
全体を覆い隠すように広がる黒
木目すら見えず、ペンキをぶち撒けた様なそれは、夜の世界と同化しているかにも見えた
思わず引きつった悲鳴をあげる
梯子から手を離しそうになるのを、慌てて手に力を込め難を逃れる
恐る恐る再度覗き見れば、隅に酒瓶が1本転がっている
ラベルを見るに、ゾロが持ち出した物のようだ
中からはチョロチョロと中身が溢れ出しているのか、見張り台の黒に更に染みを作っていく
−い、一体何がどうなってんだ……?
そろそろとゆっくり見張り台に上がり、手摺りに手をかける

ヌルリ

咄嗟に手を引く
冷たいような、生暖かいような、ぶよぶよした何かが手に触れた
叫びそうな心臓を抑えながら、手摺りに顔を近づける
−な、なんだ……これ
雲に隠れていたか細い月が淡くそれを照らす
漸く見えたそれは、チューブの様な、子供の腕くらいの太さの、長い黒い物体だった
それが何かの生き物の臓物だと気付いた時には、ボタボタと音を立てて別の何かに姿を変え、落ちていく
あまりの事に、目の前の出来事を処理できなくなってしまったおれの脳は、思考することを諦め、只々呆然と立ち尽くす事だけを選択した
うねる黒い生物が群をなしておれの方へ向かってくる
「ひっ……」
小さく上げた悲鳴は黒に飲み込まれてしまった
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