仄暗い船の底から

その日の空気は最悪だった
みんな口数が極端に減ったし、ルフィは飯を食べない、ゾロは酒を一滴も飲まなかった
サンジは調理中に指を切ってしまい、おれのところに来た
ウソップは甲板の手すりに腰を掛けずっと動かず、ロビンは調べ物をしているのか女子部屋から一歩も外に出て来ないし、フランキーなんかは船の修理中に船を破壊していた
ブルックは鏡から視線を感じるとかで船中の鏡を割っているのを、おれとサンジで慌てて止めた
ナミが蜜柑の木の下で蹲っていた時は心臓が止まるかと思うほどびっくりした
みんなおかしいのだ
そして、おかしいと言えば医務室もおかしい
器具や薬品が数点消えている
位置が変わっているものもある
誰かが触ったわけがない
鍵をかけているし、その鍵は自分が肌身離さず持ち歩いている
しかし、鍵をかけてある戸の向こうからは、事実、物が消えている
戸の鍵は、掛かったままだ


キッチンへ続く扉を開ける
同時に焦げ臭いにおいと、蒸気が顔にかかる
「うわっ、何だこれ……ってサンジ!!火!」
調理台から真っ黒な煙と火が噴き出していた
その隣のコンロからはボコボコと音を立てる鍋が、水蒸気で部屋を一杯にしている
調理台の目の前でボーッと立ち竦むサンジに声を掛ければ、弾かれた様に動き始める
「あ!ああ……じゃがいもがまだだったな……」
しかし、消火をするわけでもなく、何故か包丁を片手にまな板に向かい合うサンジ
彼の袖には引火しているのだが、それすらにも気づかない
「そうじゃねェよ!!サニー号が燃えちまう!!」


キッチンの消火活動を終え、サンジに怪我がないか診る
「すまねェ、チョッパー……」
椅子に座り項垂れるサンジに掛ける言葉が見つからない
何も手につかない状態はおれだって同じだ
気を抜けば何時もは余裕な処置すらまごついてしまう
「ルビィちゃん、何処行っちまったんだろうな……」
サンジの言葉におれは何も返せなかった
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