仄暗い船の底から

「見られてる気がする」
女子トークに花を咲かせ、夜も更けてきた頃、ふと彼女は思い出したかの様に口にした
花も恥じらう女子としては聞き捨てならない言葉だ
「サンジ君?ブルック?」
「いや、そこまでは分かんないけど……」
可能性の高い、覗き常習犯の名をあげるもルビィの歯切れは悪い
言いづらそうな彼女にロビンが問いかける
「何処で見られていると感じるの?」
「甲板とか、廊下とか、展望台とか、かな」
曰く、1人でいる時に視線を感じるらしい
最初は男共の覗きだろうと気にしていなかったルビィ
しかし、入浴中やお手洗いではそういった視線を感じないらしく、気味の悪さを感じでいたらしい
それでいて私やロビンが何も言わないから、不安にさせたくなくて余計言い出しづらかったのだ
「気のせいかもしれないし、この話は忘れて」
視線に心当たりがなく、黙り込んでしまった私達に気を遣う様にそう言うルビィ
夜も遅いと言うことでそのまま就寝した私達が、この話を再び話題にする事は結局なかった

翌日、ルビィの姿はサニー号の何処にもなかった


「いたか!?」
「ううん、こっちにもいないわ……」
一味総出でサニー号の隅々を隈無く探す
生け簀兼アクアリウムの中までも探したが、結局ルビィの姿は見つからなかった
「海に落ちてしまったのかしら」
ロビンの言葉に全員顔を青くさせる
落ちてすぐなら助けられるが、いなくなって一体どれ程の時間が経過しているかも分からない現状では、もし仮に落ちていたとしたら生存は絶望的だ
「ルビィ!!!」
「待てよルフィ!!」
船長であり、双子の兄でもあるルフィが甲板へと飛び出し、今にも海へと飛び込もうとする
海に嫌われた彼をウソップが必死に引き止めるのを、船室に残された船員達は暗い表情で見つめる
「気持ちは分かるが、お前が海へ飛び込んでもどうこうなる問題じゃねェだろ!」
「それにルビィちゃんが海に落ちたと決まったわけじゃねェ……少しは落ち着いてこれからの事を考えようぜ」
何時もより暗いサニー号に、煙草の煙がゆっくりと充満した
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