これが俺の生き様だ | ナノ





「やー、いい天気だねえ」

「平介はのう天気だねえ」

「え、何それどういう意味」

「そのままだよ」


だらだら歩く家からの道、もとい学校への道。
こいつ…ええと、杉島の家と俺の家は同じ方向にある(らしい)。
から毎日どっかで鉢合わせて、帰りはどっかで別れる。
こいつも俺も気ままなもんで、遅刻しそうでもだらだらだらだら。
鈴木とかに怒られると杉島は走って俺は連れていかれて。
いやあ、自由だなあ。引っ張られる痛みなんてなんのその。
小鳥が囀る道は驚くほど平和だ。
機敏な二人がいない。それだけでスローペースになる空間。
杉島は失礼な(あーでも、そうねえ)一言を吐いて携帯を開く。
今時のおんなのことはとても思えない程そのままの姿。

「普通デコレーションとかするもんじゃないの?」

「普通はしないでしょ。わたしがずれてるんじゃなくて世間がおかしいの」

かちかちなにをしているのやら携帯の画面から視線を外さない杉島。
どうやらそういうことらしい。
でも"普通"って言うのは普通、大多数を基準にするんじゃないの?
まあいいけどね。俺はじゃらじゃらストラップつけるのも好きじゃないし。
でもこの間見せて貰った時、待ち受けはいつか俺が作ったケーキだった。
クリームの量がすごくて果物がたくさん乗ってて、
「おいしそう」と言ったら平介が誕生日にくれたやつとか何とか言われて。
あれそうだったっけ。そうだったかも。うわ、俺これ自分の為に作りたい。
しかしケーキが待ち受けとはおんなのこらしいんだか何なんだか。
鈴木には先ず喜べよと言われたけど一体何を喜べばいいんだろうか。
杉島におんなのこらしい部分があったこと?別にどっちでもいいや。

「杉島って女子?」

「べつに男子でもいいけど、一応スカート穿いてるし」

「あー女子かあ、女子だねえ」

「女子だよ…て言うか平介こそ男子なの?」

「え、俺のどこが女子に見えんの?」

「どこも。でもお菓子作るのうまいし」

「あれだよ、今流行りのスイーツ男子」

「なるほどなぁ。そっか、男子かー」

「うん男子だよ」

なぜか納得してくれた模様。
何でこんなまのぬけた会話ができるんだろう。
一応成り立ってるのかなこれは。
ちらっと携帯の画面を覗くと杉島がブログを更新していた。
俺が見ている事に気づいたけど杉島は何も言わない。
あれ、こう言うのって見られてもはずかしくないの?
日常生活とか赤裸々に書くもんじゃないの?
…あ、これが普通なのか。
そうか、俺は杉島を世間一般と一緒くたにしちゃいけないのか。
しかし会話しながらよくもまあ文字が打てること。
携帯依存症だっけ。そんなこと言ってた気がする。いいや。

「わたし平介のことすきだなあ」

「…え、なにいきなり」

「なんとなく思っただけ」

「あ、そう……」

「平介はすき?」

「うーん、すきかなあ」

「そっかーよかったー」

携帯から顔をそむけて俺を向いた杉島からの一言。
若干動揺したけど多分こいつ何も考えてないね。
もちろん友人として、と言うのは大前提なわけだから、
こいつも俺も照れたりなんてしない。
恋人かー、全然考えられないなあ。
て言うか、俺とこいつが付き合ったりしたら誰が世話するんだろう。
鈴木とか佐藤がいないと大変なことになるよなあ。
気楽ではあるけどいろいろ問題、が
…何考えてんだろ。ありもしない事を考えるのは自由だけどもね。
杉島はもう携帯を見ていない。

「今日一時間目なに?」

「なんだっけねえ」

「覚えててよ」

「おまえが覚えてればいいのでは」

「たしかに」




この関係が心地よいのだけれど
(時々、もう少し歩み寄っても
怒られやしないと思うのよねえ)