Love Call! | ナノ

10.5











おおー!と言うクマくんの歓喜の声が上がって、私は受け取ったグラビア(雑誌とか、色々袋詰め)をクマくんに渡す。つーか普通祭りの景品にグラビア持ってくるか?誰得だよ。続いて紙袋に入ったキャベツセット(野菜セット、かな)を受け取った。一発だからかなりお得だ。後でクジも引こう。景品は…何だっけ。一先ず雪子の提案でかき氷を買って、少し休む事になった。


「都会ってなかなかこう言う祭が無いから、何か新鮮で楽しいねー」

「人もそんなに多くないし」

「うんうん。…あ、あれ先輩たちじゃない?」

「何か…花村くん凄い色々持ってない?荷物持ち?」


りせちゃんが指を差した方には確かに月森たちが居る。両腕にビニール袋を下げ、手にはかき氷が2つと明らかに荷物を持たされているらしい。ああ可哀想に、月森だなあれは。何で完二じゃなくて花村くんなんだアイツ。鬼畜野郎め。知ってたけどドS過ぎる。相棒、基親友を利用するなんてあいつは悪魔…いや、大王?鬼?もう最強最悪な悪役だ。そんな事は口が裂けても言えないけど、あいつの前で言ったら確実にボコボコだ。ボコボコ所かズタズタのぐちゃぐちゃだ。形が残れば良い方だと思う。ううう、恐ろしいやつだ。


「あれ、クマは?」

「…クマくん?」


気付くと側に居た筈のクマが居ない。と、月森たちの方へ視線を寄せればクマくんがグラビアを掲げて居た。うわあ、何自慢?私に取って貰ったって絶対言ってますよね?え、ちょ嫌だ何あの月森の嬉しそうな顔。にやあ、と凄まじくいやらしい笑みを浮かべて私を見た。咄嗟に視線を逸らす。暫くはあれをネタにいじられそうだ。くそ、こっちもアイツの弱みを握らないと…!


「…ま、あそこならいっか」

「ね、ね。先輩っていつも完二と一緒に居るけど、完二の事好きなの?この間もアイスで粘ってたし…」

「へ?」

「あー、確かにいつも完二くんに張り付いてるよねー。で、どうなの?」

「ゆ、雪子ー!」

「ご、ごめん…私もちょっと、気になるかも…」

「そんなっ!…うーん…完二の事は好きだけど、何て言うか…弟に近いかなぁ。尚紀もそうだし…」

「じゃあ足立さんは?」

「あだっ」

「確かに足立さんは弟って感じでは無いよねー」

「って言うか寧ろお兄さんでしょ。…足立さんがお兄さんって、頼り無いけど」


質問をされているのは私の筈なのにどんどん話が進んでいく。完二で終わりじゃないの?まだ何か訊かれるのか?って言うか何この恋バナ的な…!むず痒い!!鳥肌立つよ!だって私そう言うキャラじゃないしっ!それなら三人の話聞いた方がまだ楽しいと思う訳ですよ私は。…どうか月森の名前が出てこない事を祈るばかりだけど。だってアイツ女癖悪いし。(私は手を出されてないけどね!嬉しいような悔しいような…)あんな男に引っ掛かっちゃ駄目だよ。とか、まあもし付き合ってたりしたら申し訳無いから言わないけどさ。あー嫌だ、恋バナなんて無縁だと思ってたのに!…けど、足立さんか。最近会って無いなー、とかついこの間思ったばっかりだ。別に会わないのは良いけど(真面目に仕事してるみたいだし)、何が悲しかったんだろう私は。嬉し泣き?禿げるから泣いたのか?でも今のところ毛根は消滅してない。完二の手早い対処で何とか救出出来たらしい。有難う完二、今度何か買ってあげよう。フェルトとかが良いのかな。誕生日はまだまだだった筈。


「藍花?」

「はい!何ですか!ぼうっとしてました!」

「見れば分かる。…で、結局のところ足立さんとはどうなの?」

「どうなのって言われても…普通?足立さんとは良い友達…じゃないな、何だろう。少なくとも足立さんは何も思ってないと思うなー、10以上離れてるし」

「愛さえあれば歳の差なんて関係無し!」

「愛が有ればだろ、無いしw」

「わっかんないよー?」

「分かる分かる、じゃあ今度訊いてみればいいよ」

「訊いて教えてくれるのかな、それ」

「…さあ……」

「先輩はどうなんですか?さっきはぐらかしたでしょ」

「げ、バレた。でも本当…んー……何も思ってない…いや…」

「え、脈あり?」

「足立さん最近可愛くないし…寝癖と猫っ毛は最高に可愛いし鼻血ものだけどね、けどこの間は…」

「この間は?」

「…うーん……頭痛くなってきた」

「何でよっ」

「いやだって良く分かんないし…」


本当に頭痛い。月森の相手をしてる時くらい頭痛い。足立さんは?足立さんはどう思ってる?あんな冷たい顔で、あんな冷めた視線で、あんな嫌悪に歪んだ声で。…私を好いてるとは到底思えないし、何よりガキガキ言ってる人が年下を好きになるんだろうか。と言うか、足立さんが私を好きだったら何かなるんだろうか。わからない。付き合う、とかは全然考えられない。私は?私は足立さんをどう思ってる?好きか嫌いかと言われれば好きな部類に入る。最初は可愛くて堪らなかった。寝癖猫っ毛、曲ったネクタイ、陽気な声に実は冷たい部分も有って、飄々としてたりあからさまに間抜けだったり。掴み所の無いところがまた魅力だとは思うけど、でも此れは―――


「あ、噂をすれば足立さん」

「なんですと!ちょちょちょ、私あのアレ、くじ、引いて来るから!」

「えー、折角だから訊いてみようよ!」

「私がか?!私がどう思ってるか訊いてみるのか?!」


嫌いじゃない、とかなら未だしも別に、とかどうも思ってない、とか嫌い、とか言われたら立ち直れる気がしない。勝手に愛でてるんだし、別にどう思われてるかなんてどうでも良いのに、無理だ、そんなの。耐えられる自信がない。これは、まさか、だけど。


「……あれ、君ら月森くんたちと一緒じゃないの?」

「あ、はい、別行動で…強制的に」

「こう言うのはさ、男女一組ー、とかで分かれるモンでしょ」

「うーん、気付いたら、みたいなー…あはは」

「ほら先輩、訊いてみようよ!」

「イヤ、イイですマジで…!」


取り敢えずなんとかしないと。これは私が訊かなくても誰かが訊く空気だ。誰って言うかりせちゃんが。ほらアダッチーがきょとんとしてるじゃないか!コラ!駄目だよ大人を揶揄っちゃ!無理矢理雪子の後ろに隠れて、いつでも逃げられるように構える。あ、そうだ。さっきの野菜セットあげるんだった。何で野菜セット取ったんだろう私。足立さんの為では有るけど、何でわざわざ。…あああもう、何もかも分からなくなってきた!何!?結局何なの!?何でこんな事になったんだ、誰が助けてくれ。出来れば月森以外でお願いします。


「何?何を訊くの?…僕?」

「あーいや!何でも無いですよ!あ、そうだこの野菜要ります?射的で取ったんですけど」

「良いの?じゃあ貰おうかな。…お、キャベツ入ってるー」

「キャベツだけ置いて行ってください」

「キャベツ以外なら置いて行ってもいいよ?!」

「じゃあそれで」

「ケチだね君…」

「嘘です、全部どうぞ」

「ちょっと藍花!何話逸らしてんの!」

「何の話ですかなー、元々この話をしようって…」

「足立さん、素直に答えてください!」

「い、嫌だりせちゃんやめて!いえやめて下さいお願いしま」

「藍花先輩の事、どう思ってますか?」


言ってしまった。何コレどういう嫌がらせ。嬉しくない。当たり前だけど嬉しくない。…ああでも、この間の言葉の続きも気になるから結果オーライ、ってことになるのかな。教えてくれるんだろうか。ああどうしよう、きっとガキの遊びに付き合わされる覚えは無い、とか言ってもう話せなくなったりしたら…!今更になって怖くなってきた。どうしようどうしよう。何でこの子たちは好奇心だけでこんな事までするんだ。全力で止めてればこんな事にはならなかったんだろうから、責める気は無いけど。


「え、何突然――」

「良いから!嫌いですか、好きですか?!」

「二択しか無いのかよっ!…あ、あの足立さん…?別に真面目に答えてくれなくて良いですよ、あのアレ、戯れみたいな…」

「うん。…そうだなあ…明日もお祭りあったよね」

「あ、はい…有りましたよ、確か。千枝、有ったよね」

「あったよー」

「じゃあ…明日、7時に鮫川ね」

「は…?」

「野菜有難う。僕はそろそろ行くからさ、またね」

「…は…え?何?」


ごめん話について行けないんだがww勝手に約束された?明日7時に鮫川?あそこ鮫川って言うんだっけ、忘れてた。ぼんぼん、とやや乱暴に背中を叩かれる。痛いよ千枝、君の力どれくらいだと思ってるの。流石に足じゃないから其処までじゃないけど、痛いよ普通に。何?ちょっと息止まりそう。どんな反応すれば良いの。


「ちょっと藍花!りせちゃん!これってもしかしなくても…」

「もしかしなくても!」

「「デート?!」」

「「はあ?!」」


あ、雪子とハモった。デート?何ソレ美味しいの?デート?デート…?あれ、ゲシュタルト崩壊してきた。デートって何。外国人の名前か何かか。って言うか今更だけど雪子が「はあ?!」って言った…凄く新鮮だ…。しかし、デート。デートって言うのは恋人同士が行くものだと思ってたけど、違うのかな。帰ったら辞書引いてみよう。何で私こんなに冷静なんだろう。いや冷静じゃないか、だってこんな、そんな、馬鹿な。


「……………私……」

「先輩?…行くんですか?」

「…放置は可哀相ですよね……」

「まあ、約束したのに放置はちょっと」

「ですよね……じゃあ私…」

「帰るの?」

「いや……」



くじ引いてくる
(明日は私服で行くべきなのか、ああぁ、私にどうしろと!)







わーおぐだぐだw
もう展開が読めますよね…嫌だな←







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