*ギャグ Go→
そんな。まさか。いやいやいや。 弁明しつつもやっぱり感情と言うのは覆される事が無くて、俳優さんや女優さんは改めて凄いのだと認識する。 今日は私服。だからどうしたと言う話でも有るのだけれど蛇足ながら説明すると、珍しくスカートなのだ。 制服で着ているのは別として、休日にスカートと言うのは片手で足りる程だった。 ただ単に蒸し暑いからジーンズよりもスカートの方が涼しいかも知れないと思って履いて来た訳だが、運が良いのか悪いのか、へっぽこ刑事(完二曰わく)の足立さんに遭遇してしまったのだ。 いつも通り気持ち悪いくらいへらへらと笑いながら先ず私の全身の眺め(おえ、)品定めするように腕を組んで、そう、一言。
「君がスカートって言うのも悪くない…と言うか、可愛いんじゃない?」
「き……気持ち悪ッ!!」
叫んでしまったのは不可抗力だよなあ、と同意してくれる人も居る筈の無い問いを心中で投げ掛ける。 へらへらと締まりの無い顔が僅かに歪んで、失礼だなぁ、と罵倒された。 挫けないぞ、私は。 まさか普段から憎まれ口を叩き合って来た人物に誉められる等想像を絶する事なのだ。 彼はそれを、分かっているのだろうか。 私があなたを誉めるのと一緒ですよ、と言ってあげたい。 怪訝そうにぶつぶつと文句を吐き出す彼は、一体何を思ってそんな事を。 嫌な予感しかしない。天変地異でも起こったのでは無いか、とすら思ったのだ。 鳥肌が立ったのは秘密で、それも腕に足立さんが目を向けたので早々に顔を顰められてしまったのだけれど。
「僕は思った事を言っただけだよ。君っていつもズボンとかだからさ、スカート持ってないのかと」
「この間買ったんですよ、済みませんねぇ持ってなくて…!」
「あれ、そうなんだ。あはは、でも今は持ってるでしょ?今度僕とデートする時履いて来てよ」
「デート?耳がおかしくなったみたいです。私とあなたは別に恋人でも無いし何より体裁を気にして下さいあなたは」
一息でそう告げれば、信じられないと言わんばかりの表情を向けられた。 信じられないのはこっちだ。 体の良い話し相手だと思っていたのに話が飛躍し過ぎなのである。 恋人?頭がどうかしたとしか思えない。 罵倒なんて当然で、たわいの無い話こそすれど結局小競り合いになったりと平和に欠ける普段。 何か拾い食いでもしたんじゃないか。もしかして堂島さんに殴られ過ぎて螺が飛んだのか。
「君がそんな事を気にする子だとは思わなかったなあ。…ま、良いじゃない」
「相変わらず失礼ですね。何が良いのか詳しく訊きたいんですけど」
「…こんな田舎でさあ、正直つまんないの。だから少し位余計な事して刺激が欲しいって言うかさ…取り敢えず付き合ってよ」
「本音丸出しですね。…付き合うって買い物とかで良いんですか」
「本当にそう思ってるなら僕は君を撃ち抜いちゃうかもね」
「え…ああ、わかってますよ!恋人とかそう言うのでしょう!?」
今脅されました。善良な市民が警察に。 しかも銃で。信じられないってレベルじゃないよこれは。へらへらと気味の悪い笑顔を私に向けながら、満足げに頷いている。 この男は本当にふざけている。腹立ってきたけど、本当に撃たれたら堪らない。 思わず両手を上げる。冷や汗掻いてきた。良いのかこんな奴が警察で。稲羽の治安が心配になる。
「まあそんな訳で。…建て前はそんなんだけど僕ちゃんと君の事好きだよ?」
「たてま…え、いやいやいや…何言ってるんですかそれ…うわぁああ嘘だぁあ…」
「何そのドン引き!みたいな言い方。本気の人間に対してそんな事言うかなあ、普通」
「いや事実…あ、何でも無いです」
うっかり本音を零しそうになると、彼からか細い金属音が聞こえた。 引き金に指を掛けましたか今。 本気で好きな人間をあなたは容赦無く撃ち抜く気なんですか。 信じられない。それはもう相思相愛でも何でも無い、脅迫で得た愛は本物じゃないですよ!こっそりと心の中で呟く。 今まで奴を罵倒してきた自分はどれ程身の程知らずだったのか、眩暈がする。
「…で、返事は?」
「急に言われても…保留とか、有りですか?」
「保留?…んー…そうだなあ、じゃあ条件。先ず君が保留してる間は僕が学校に迎えに行きます。あ、あと答えがノーなら射撃の的になって貰うから」
「前者はまだしも後者逃げ場無いじゃないですか!止めて下さいよ脅迫紛いの事は!」
「だってそうでもしなきゃ君、断りそうだし?」
「そんな人間と付き合うなんて恐ろしい事出来ませんよ…大人しく待って居られないんですか?」
「えー。…一週間くらいなら」
「……じゃあ一週間待って下さい。あと一週間以内の返事でノーなら見逃して下さい」
「…まあ、良いけど」
「はい。じゃあそう言う訳で」
未だに不満そうな顔を尻目にそそくさと立ち去る。あの人にも人を好きになるなんて感情があったのか、と少し感動。 まあ脅してたりしたから純粋さには欠けるけど。 最後のふて腐れたような顔は不本意ながら少し可愛かった。 あと絶対言わないけど告白してきた時の顔もちょっと格好良かった。 きっと私はイエスと答えるんだろうなあ、とほぼ確定した予測に溜め息を吐いた。
そんな馬鹿な! (突然の告白と、自分の想いに叫ばせろー!)
足立…誰だおまえは…← そして何でこう微妙に生ぬるいのしか書けないんだ私は…!
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