*シリアス *独白 Go→
「まいったなあ」
ぽつりと零した言葉は、帰り道。 こんな筈じゃなかった。 今ではもう言い訳に近いけど、あの少女は利用したかっただけだった。 素直そうだと思って近付き、いざ触れればあんな冷たいだなんて。 優しく声を掛けて愛しんでやれば、利用しやすいと思った。 だけど中々素直にならないから、ついつい必死になって落としてしまったじゃないか。 そうしている内に愛着が湧いたなんて笑えない。 あの安堵したような表情。 あの表情を、もう直ぐ、壊す。 これと言って罪悪感は無いけれど、何と無く勿体無い気がした。 あのままあの少女と居られたら、果たして幸せは掴めるだろうか。 ――もう、叶わない願望では有る。
「そろそろ動くんだろうな…」
こそこそと嗅ぎ回って来た、上司の甥にあたる少年が。 一時は生田目をテレビに落とすと言い張って居た周囲を鎮め、落としてしまえば良かったものを寸での所で再度情報集めに掛ったのだ。 田舎で無ければ。此処が田舎で有るが故に、情報は集まり易い。 バレないと思い込んでいた罪も、きっと暴かれる。 そんな気が、していた。
「…もう会えない、か」
最初から利用する為だけに、傍にいた。 それなのに、こんなに名残惜しいだなんて。 自宅に置かれた指輪が、視界を掠めた。 彼女の誕生日に買ったペアリング。 別に思い入れも無い、がらくたに過ぎないもの。 今になって酷く大切なものに思えて、思わず握り締めた。 そう言えば今日は付けていたような気がする。 僕の指に無くて、がっかりしたんじゃないだろうか。
「…騙されてんのに」
あんな幸せそうな顔しちゃってさ。 最初の嫌そうな顔は何処に行ったの。 もっと、嫌ってくれたらこんな事にはならなかったのに。
「馬鹿じゃねえの」
愛に溺れて漆黒は香る (いっそ嫌いになってしまいたい)
__________________title.空想アリア様
迷走してます。 …私が。
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