あとち。 | ナノ

白に彩る君色









*白足立
*シリアス
*ほぼ独白
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暇だ、と思う。する事が無い。毎日同じ事の繰り返しで、最近は飽きてきた。真っ白な部屋に薄汚れたシミを見付けて手を伸ばしたけど、天井だったから届かなかった。見ているともどかしさで苛々するから、固いベッドに転がった。ごろごろと体を揺らして、仰向けになってみたりうつ伏せになってみたりして見る。疲れて来たので仰向けになって目を瞑った。マブダチじゃないけど、まるでそれみたいに彼女が浮かんだ。どれ位掛かるのかも分からない出所を待つと言った、僕を待つと言った、馬鹿なひと。彼女は本当に僕を待っているのだろうか。もしかしたら僕を安心させる為の嘘だったのかも知れない。けど、まあそれでも構わないと思う。何せ仮にも同じ事をしてたんだし、仕方無いと割り切るしかない。それでもやっぱり、覚えていて欲しいとは思う。欲を言うなら。今何をしているんだろう、とか元気なのかな、とか。僕が彼女に思うように、彼女も同じように僕の事を考えていてくれたら、今のこの状態でこれ以上の幸福は無いと思う。
彼女はちゃんと、笑ってるんだろうか。笑ってくれていると良い。別に僕が居ないから笑わなくなっただとかは無いと思うけどやっぱり、寂しいんじゃないだろうか。考える事は大抵半ば希望になってしまうけど、まあ、良いや。寂しいのは自分だし、笑えないのも自分だからそう思うのかも知れない。彼女の声がせめて聞けたなら、楽になるだろう。寂しさを紛らわせる方法を、僕は知らない。電話なんて出来る筈も無いしだからと言って手紙を書くのも、違う気がする。そんな事を言いつつ以前月森くんには送ったけど、それは触れないでおこうと思う。上手く解決したんだろうか、それすら分からない。もう帰った頃だろうから、それを知るのは出所してからになりそうだ。何て遠い話なんだろう、気になる事すら知る事が出来ないなんて。マヨナカテレビとか力の話をする訳にもいかないから、ひたすら報告待ちになる。ああ、誰か来てくれれば良いのに。


「足立」


声が聞こえて思わず目を開けた。体を起こすと扉の前に堂島さんが居て、誰か来て欲しいとは思ったけど流石に気まずい。何ですかと訊けばCDを渡された。CDプレーヤーも置かれて、一言、聞いてみろ。堂島さんはそれだけ言って、出て行った。口数は少ない人だけど、まるで日本語の喋れない人みたいだなあと素直な感想。CDプレーヤーにCDを入れて、イヤホンを付けた。真っ白のCDはきっと録音されたものだと思うから、少しだけ緊張する。再生ボタンをゆっくり、押した。
ざ、と最初に雑音が聞こえて、続いたのは咳払い。それから、あー、と言う声。聞き覚えのあるその声に心臓が大きく震えた。


「足立さん。
元気、ですか。きっと何も無くて詰まらない思いをしていると思います。…なんて、嫌みっぽいですかね。済みません。
私は元気です。今まで通り、花村や千枝たちと楽しく学校生活を送っています。知っての通り月森は帰ってしまったので、少し寂しくなりました。けど、今度のゴールデンウィークには遊びに来ると言っていたので、みんな楽しみにしてます。みんなで足立さんの所へ行こうかなんて、話してましたよ。きっと気を遣ってくれているんだと思います。…変に優しいですよね。あぁ…あと、マヨナカテレビについてですが、無事解決しました。イザナミと言う人物…あ、神様、ですかね?…が人類の望みを叶える為に動いていたそうです。多分、足立さんはイザナミと何らかの形で握手をしたんじゃないでしょうか。その時に力を与えられたのかも、って月森が言っていました。詳しい事はまた今度お話しようと思います。…足立さんの気になる事、先回りしてみましたけど、どうでしょう。ふふ、今度教えて貰いますね。…私、今でも信じられません。足立さんが居なくて寂しくて…どうにかなりそうです。けど、弱音ばかり吐いてはいられないので。電話を、癖でかけそうになります。留守番電話サービスに繋がる度、泣きそうになるんですよ、可笑しいですよね。足立さんの声が聞きたいです。笑顔が、顔が見たいです。手、繋ぎたいです。沢山したい事あるんですよ。…だけど、待つって言ったので、我慢します。ちゃんと、我慢しますから。寂しくても。会いたくても。…だから会えた時は、沢山甘えさせて下さいね。おかえりって、笑顔で迎えますから。ゴールデンウィーク、楽しみにしてて下さい。…じゃあ、また。」


声は反響して、それから途切れた。
最後のまた、と言った声が泣きそうで、視界が少しだけぼやけた。やっぱり馬鹿な子だと再確認。でも彼女は、僕を泣かせる天才だ。止めようと思ってたのにまた止まらなくなった。
責任取ってよ、白い部屋に文句が響いた。





今直ぐにでも会いたい
(我慢出来なくなったらどうしてくれるの?)














ほぼ独白。
そして刑務所にどんなルールが有るのか分からないから不安だらけである。









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テーマ「人外ファンタジー」
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