haco | ナノ



偶には悪くない









*ささげもの

Go→














やべえ、教科書忘れた。
そう思ったのは授業開始のほんの数分前で、これはもう諦めるしか無いと屋上へ足を向けた。
少しでも理解しようと授業を真剣に受けるのは悪く無いが、真剣に、と言うのは無理だ。
何せ人間は集中すればする程睡魔が湧き起こるのだから、もうこれは仕方無い。
密かに誰も居ない事を祈りつつ、屋上の扉を押し開けた。
その祈りは、開けた場所に転がった人物によって打ち砕かれた訳だが。


「いけねえの、サボりかよ」

「準さんこそサボりじゃない、見逃してよ」

「別にどうもしないっつの。…隣座るぞ」

「どうぞどうぞー」

おおよそ大の字になって寝転がった利央の隣にあぐらを掻く。
何と言うか、コイツがサボるのは珍しいモンだから少しだけ対応に困っていた。
いつもどうやって揶揄ってたっけ、俺。
普段はすらすら言葉が出て来るのに、こんな静かな二人きりの場所で何も出てこないなんてあんまりだ。
そわそわ、自分でもおかしいと感じながらもひたすら視線をさまよわせた。


「ねえ準さ…どうしたの?」

「べ…つに、何だよ早く言えよ」

「ん?うん…ね、ここ、寝転がって」


つい、と示されたのは利央の上。
おお、ついに頭までおかしくなったのか。
残念ながら今の俺が言える事じゃ無かったが、この際無視だ。無かった事にしよう。それが良い。


「聞いてる?」

「さあ、寝よう寝よう」

「ねえ、準さん?」

「おやすみー」


掛けられる言葉はガン無視。知らねえよ誰が乗るか馬鹿。馬乗りか?馬乗りが良いのか?
ああもう駄目だ、俺も利央も本当に馬鹿だ。
暑さでどうかしてんだよ。

「…ちょっと」

「がー、ぐー、」

「嘘くさ。何その下手くそな鼾」


吐き捨てるような言葉が聞こえたけど堪えろ俺。
何も聞こえなかった。
ちぇー、とかお前誰みたいな拗ねた声が続いて、俺は薄ら開けていた目を閉じた。
これで静かになるだろう。馬鹿な事を言うのはこれきりが良い。


「ん、しょっと」


耳元でそんな声が聞こえる。ああ、何だよもう寝ろよ…――耳元?


「おまっ」


「あ、気にしなくて良いよ」


するり、と腰に手が回る。何だこれ。何かのバツゲームか。嫌がらせか。
ぎゅう。と効果音が聞こえてきそうな位に抱き締められる。
目ぇ覚めたんだけどどうしてくれんだよ、コレ。
おい。お前だよ目の前で数分足らずの内に寝やがって。


「ばーか。」


それでも心地良いなんて、やっぱりどうかしてんだな。




偶には悪くない
(こんな時間さえ愛しい)







モノクロム。の霧さまに捧げさせて頂きました。
もう本当…誰コイツら?(^p^)gmプギャーみたいな文で済みません!
そして受け取って頂き有難うございます…!
最後の「嘘くさ。〜」は仕様なんだからね!と言っておく←







prev | next





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -