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綾時









*元リハビリ文

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「これ可愛いね」
そう言って隣の綾香ちゃんが指差し示したのは綺麗な銀色のピンキーリング。だけどペアリングらしくて、もう一つ隣に並んでいる。確かに可愛い、と言うか多分褒め言葉として言っただけだから本当に可愛いだけで言った訳じゃ無いと思う。シンプルで無駄な装飾の無い其れは、小さいオニキスと彫られた文字で彩られたもの。文字は外国語なのか、何が書いて有るのかは分からない。英語じゃない、並びだけ見るとイタリア語辺りに見える。値段は2つで5500円。指輪にしては安いと思ったので、店員さんに、これ下さいと告げた。隣で綾香ちゃんが素っ頓狂な声をあげる。
「ちょ、綾時、これ高…!」
「大丈夫大丈夫。それにペアリングって少し憧れるし…折角気に入ったんだから良いんじゃない?」
「そ、そう言う問題なの…?」
金銭感覚狂ってるんじゃないの、と不審な視線を向けられる。確かに金銭感覚は狂ってるかも知れないけど、自分の為だけなら絶対に買わない。何より、綾香ちゃんが欲しそうだから買ったんだって、気付いてるのかな?ああでも、それを知ったらきっと謝るから良いかな。僕だって欲しかったんだし、良いと思うんだけどなあ。もしかしてペアリングで舞い上がってるのが僕だけとか、そんな事は無いよね。無いと願っておく。暫くしてベルベットの箱に仕舞われた指輪が僕たちの所へ持って来られた。何よりもこの箱が高そうだと思ったのは、秘密。取り敢えずお金を払って、二人で店を出る。
「綾時、お金出すよ」
ごそり、と財布を取り出した彼女を、慌てて止める。彼女に払わせるなんて言語道断、何よりプライドとかも一応有るし。
「良いよ、これは僕からのプレゼント。」
そう言うと彼女は少し黙ったあとに、ありがと、と呟いた。そんな彼女の手を取って、ピンキーリングを小指にそっと嵌めた。綾香ちゃんの綺麗な指には、シンプルなデザインが凄く合っていて、買って良かったと思う。素敵だと言うと、照れたように笑ってから、僕の手にあった箱を取って、それから同じように僕の小指にピンキーリングを嵌めた。きらきら光る其れは、彼女の指にあるものとは違う気がして、少しだけ寂しくなる。彼女の指に有る方が、一際綺麗な輝きを放つから。






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