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頭の中は、君一色









*クリスマス
*ギャグあま
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「綾香、綾香、」

「何ですかアマイモンさん。甘いものが欲しいですか」

「甘いもの…?綾香なら食べない事も有りませんが違います」

「あ、そうですか。それと普通にセクハラですねそれ」

「はあ。…そうじゃなくて、今日はクリスマスですよね」


ちょん、ちょん、と服の裾を引っ張るのはアマイモン。これでも一応地の王様の悪魔なのだが、中身は案外そうでも無い様に思う。悪魔らしい所と言えば外見と、その力くらいだろうか。そんな事はどうでも良くて、表情と言うものがあまり無いアマイモンは、真顔でさも当然の如く問い掛けに答えたあとに要件を伝えて来た。私の注意に対して聞く耳を持った様子が無かったのは気の所為なんだろうか。はあ、って。何か納得した風には見えたけどね。ちょっと暫く気を付けよう。悪魔にとって人間は甘いのかと少し前メフィストに聞いたところ物凄く呆れた様に溜め息を吐かれたあと、「そんな訳無いでしょう」と馬鹿を見るような目で言われた。何もそんな反応をしなくても良いのに。純粋な少女の素朴な疑問じゃあありませんか。あんまりだと思う。それより今はアマイモンだ。突然の問い掛けは、本日のイベントについてらしい。今度は一体どうしたと言うのだろう。またメフィストに変な事を吹き込まれたんじゃないと良いけど。


「うん、クリスマスだけど…」

「…なら、綾香からプレゼントが欲しいです」

「え、プ…プレゼント?」

「はい。ボクも用意してきました」

「え、え……何が欲しいの?人間とか以外で」


プレゼントとか何も用意してないんだけど。
いや何でと言われれば単純に、アマイモンがクリスマスを知っているとは思わなかった。し、ちゃっかりプレゼントを要求してくるだなんて予想外にも程が有る。その上私にプレゼントだなんて、何と言うか、普通のものである事を願うばかりだ。人間の骨とかじゃないと良いけど。何を考えているのか分からない相変わらずの表情でアマイモンは首を傾げて見せる。返答を待つ間観察をして見たけれど、見れば見る程メフィストとそっくりだと思う。流石兄弟。あの兄に、この弟…分からなくも無いけれど教育を改めるべきだ。そんな事言えないけど。そんな事を言う度胸は無い。あるなら今頃メフィストの趣味とかアレとかソレを指摘しているだろう。じゃなくて、考え事をするといつも論点がずれてしまう。アマイモンはどうやら思い付いたみたいで、ぽん、と掌に握った拳を打ち付けた。人間らしい仕草だ。


「綾香が欲しいです」

「人間以外って言ったんだけど、つまり私はキミにとって人間だと認識されてないって事で良いのかな?」

「はぁ。…ああ、はい」

「え、マジで」

「綾香はボクを恐れることも無いので、とても…人間だとは」

「思えないってか…」


キミが迫って来た時はいつでも生きた心地がしないんだけどなあ私。


「だから、綾香が欲しいです」

「手足とか頭とか、部分的に?」

「いえ。全部欲しいです。綾香の――こころも、全部」

「は」


何処で覚えて来たんだそんな言葉…どう考えてもメフィストしか居ないけどこれは悪影響と言うか、無害な悪影響を受けている。突然の激白に頭は上手く働いてくれない。まるで考える事を拒否しているかの様に、先程の言葉を反芻するばかり。綾香、とアマイモンが呼ぶ。呼んでいるのに、何も言えない。いやこれは冗談なのかも知れない。無表情だからいまいち判断が付かないだけで、きっと、教えられた言葉を繰り返しているだけなんだ。赤子、みたいに。私の思考回路は、強制終了。シャットダウン。目の前はアマイモンの緑色めいた金色の瞳が広がった。唇に温かい感触がするのは、どうか気の所為であって欲しい。食い千切られる――咄嗟にそう思ったけれど、痛みはいつまでもやって来ない。その代わりに温もりは離れて、相変わらずの無表情が視界に戻った。


「え、アマ…」

「プレゼントです。メリークリスマス」

「いや、ちょ…え?」

「もう一度しますか。今度は契約でもしようか」

「か、…噛み千切るやつですか」

「この世界のものでいいです」

「(メフィストめ…!)」


でもどうやら噛み千切られる危機は無くなったようだ。
中身までお前に似たらどうしてくれるんだメフィスト、と今はこの場に居ない男に文句を吐く。知らぬ内にキスとかクリスマスとか覚えてるし、一体どうするつもりなんだ。キスはまだいい、知らなければ間違い無く噛み千切られる。痛みを伴う誓いとか契約はごめんだし。…と言うか何故契約をすることが前提なのだろう。ちょっとおかしいんじゃないか。一旦冷静になって、状況を整理しよう。「少し待って」とアマイモンに告げて、いつもの「ハイ」と言う返事が聞こえたのでまた思考を巡らせた。これは丁重にお断りするべきなのか、受け入れるべきなのか。断ったらどうなるかも、受け入れてもどうなるか分からない。ああ、どうしてそんな事言い出したんだアマイモンは…!お兄様の教育が悪いんじゃないのか!


「ええ、と…本気?」

「ハイ。綾香が欲しいです」

「…そう何度も言われると流石に照れるんだけど。プレゼントは、どうすれば」

「綾香が良いです」

「ハイ…あの、どうやって」

「ボクのものになって下さい」

「えええ…と、」

「"幸せにします"…から、ダイジョウブです」

「は、はい…」









頭の中は、君一色
(拒否権が存在しないのですが)
(それに何処でそう言う言葉を覚えて来るかな…)


(不覚にもときめいたとか、絶対無い、…多分)











アマイモンを見ると時々弟だなあと思います。
なんか…かわいいんですよね。
えっおかしいかな…






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