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僕の少しズレた恋愛論









*全体的に妙な違和感
*本好くんバースデー

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「本好くーん」

「ん?」


教室の扉の前、ひょっこり顔を覗かせた女の子が見えた。その色素の薄い髪は少し安田に似ていて、偶にイラッとする。けど、ふわふわした其れはやっぱり別物で。振り返るとそわそわとしながら俺の所に来て、一生懸命な仕草でポケットから小さな紙を差し出した。受け取ってみればどうやら手紙らしくて、視線を彼女に戻すと、彼女はそれ、と手紙を指差した。


「それ…後で読んでね」

「後で?…って、いつ」

「放課後…放課後に、読んで!」

「…うん、分かった」


頷いて笑って見せると、綾香ちゃんは満足気に笑って小さく手を振って教室から出て行った。小さな手が消えていくのを見送ってから、受け取った手紙を、先ずは観察。後ろから美っちゃんが俺の肩を叩く。興味深けに覗き込まれたから、これ、と示した。これが安田だったら許さないけどね。当たり前でしょ、美っちゃんだから見せるんだよ俺は。


「手紙…?だよな、それ」

「あ…うん、そう。放課後に読んでって」

「へー…ラブレターとか?」

「さあ…あの子がラブレターって言うのも、結構」

「まー確かになぁ」


首を傾げながら美っちゃんは席に戻っていく。これは、ラブレターなのかな。だとしたら、嬉しい…ような。まあ、嫌では無い。ただあの子は可愛い…そうだ、妹ようなもの。でも好きだから、少し違う。可愛いあの子は妹みたいで、だから好きなのかも知れない。うーん、と俺も首を傾げ席に戻った。授業は、あと2時間。






それから、放課後。
俺は手紙の中身が気になっていた訳でも無く、まあ大した意味も成さないもので。取り敢えず指定された放課後と言う事で、手紙を開いて見た。並ぶのは、可愛らしい文字。割と大きな紙なのに書いてあるのは、たったの「家庭科室に来て」だけ。家庭科室。俺にはあんまり縁の無い場所だ。そのまま帰る事を想定して、鞄を持って家庭科室に向かう。道中美っちゃんや藤に会ったけど予定が有るから、と告げる。美っちゃんは寛大だから、快く行って来いと言ってくれた。


「ごめんくだ…待った?」

「あ、本好くん。…ううん、だいじょぶ」


ぽつんと箱の前に座った彼女。もじもじと膝を擦り合わせるような動作に少しだけ嫉妬したのは、どうしてなんだろう。冷たい空気が彼女に可愛らしい仕草をさせるのが許せない一の、かも知れない。俺って、偶に自分が良く分からなくなる。まあ良いか、と自己完結させてから向かい側の席座った。


「あ、あのね…それね、作ったの」

「うん」

「ケー…キ、なんだけど」


それから綾香ちゃんは手を伸ばして、ぱか、と開いた。中からは綺麗なホールのケーキが現れて、お、と思わず歓声が零れる。綾香ちゃんはいそいそと立ち上がってから、ナイフを取って、四つに切り分けた。四つ?どうして四つなんだろう。と、ケーキを見ていると、綾香ちゃんは手早く3つを箱に戻して、残った1つを皿に乗せた。


「どうぞ。…残りは家に持って帰って、みんなで食べて欲しいな」

「…ありがとう」


フォークに小さく分けた欠片を食べると甘くて、口の中で溶けるような…家庭科部でもないのに彼女の作ったケーキは、凄く美味しい。感想を待ち望んだ顔をしている綾香ちゃん、だけど何も言わずに全て食べ終えた。期待通りの動きはしない。だって俺は俺だし、訊かれなきゃ言わなくたって良いと思う。御馳走さま、と言って、皿を持ち上げれば彼女は慌てて奪い取るような風に受け取ってシンクに置いて、漸く洗い始めた。洗う彼女を見つめながら、俺はぼんやりとする。照れ屋な彼女は口数も少なくて、静かな時間が過ぎていく。


「綾香ちゃん」

「へ?」

「好きだよ」

「え…」

「好き。でも、」

「…?」

「返事は要らない。…恋人にもならなくていい」

「…どう言うこと…?」

「俺はこのままが良いから」

「…そ、っか」

「また、ケーキ作って欲しいな」

「うん、誕生日にね」

「来年か…楽しみだな」

「うん。…おめでとう、本好くん」

「有難う」


僕の少しズレた恋愛論
(君も俺が好きなんだって知ってるけど)
(でも良いんだ、このままが。)







何とも言えない文に仕上がった…本当はバースデー当日に仕上がっていたのですが時間が無く…PCを開けなかったので。こんなのでごめんよ、おめでとう本好くん!






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