*甘?
Go→
「うーん」
観覧車乗り場、入り口前。 私はじっと扉を睨んだまま腕を組んで其処に仁王立ちしていた。 何故ならこの観覧車は二人でしか乗れなくて、一回目は何故かNと乗った。 けどいち女の子としては好きな人と乗りたいとか、今の目的は"観覧車に乗りたい"、それだけだけど。 この間はハルと乗ったんだよなあ。 でもハル途中から黙っちゃってちょっと気まずかったし。
「ぁあああもう観覧車乗りたいよぉおおおおおお!!」
「迷惑だよ其処。何やってんの?」
「ぉおおおおお…!?」
思わず叫んだ瞬間、チェレンが、突然現れて言った(や、多分気付かなかっただけだと思うけど…!)。 迷惑とその言葉通り眉間に皺を寄せ不審者を見るような視線を向けてくる。 止めて止してそんな目で見ないで…!! チェレンは私の横を通り抜けて自販機の前に経つと15回位お金を入れてボタンを押して、を繰り返した。 ガタン、ガタンと落ちてくるのは5本ずつのおいしいみず、サイコソーダ、ミックスオレ(5本は数えてた)。 其れをバッグに仕舞い込んだチェレンは素知らぬ顔で観覧車乗り場に入って行く。 あれ、チェレンってもしかして二人でしか乗れないの知らないのかな…!? 慌てて後を追って入れば、チェレンはまだ其処に居た。
「この観覧車二人でしか乗れないよ?」
「知ってるけど。…だって#6#乗りたいんだろ」
「えっ…あ、うん、乗りたいですけど…」
「………何でそんなに鈍い訳?苛々する」
「ひぇえええ済みません済みません」
「一緒に乗ってあげるって言ってんの」
「ぇええ…え、え?」
「ほら早くしてよ、ぼくこれからジム行きたいんだから」
「は、はいっ」
え、え、何この展開? チェレンに続いて流れのまま観覧車に乗り込む。意外と小さめなんだよなあ。 向かい合わせになる形で座れば、早速観覧車は動き出した。 乗り降りの関係で早いような遅いような、普通の観覧車よりは早いと思う速さで上昇していく。
…気まずい。 何でチェレン喋らないの…!! 元々あんまり喋る方じゃなかったけど、何より何で私を見たまま黙ってるの…! せめて外の景色を!!夕日が綺麗ですよ!
「…え、と…有難う、チェレン」
「別に。暇だったから」
さっきジム行くとか言ってたのにね。
「それでも有難う」
そう言えばチェレンと乗りたかったんだって、今更思い出した。 Nと乗ってもハルと乗っても無かった、この緊張はきっと相手がチェレンだからなんだろうなあ。 当の本人は何食わぬ顔で偶に外を眺めてますけどね。 チェレンはやっぱり、偶々私が居たから付き合ってくれたのかな。 チェレンはどうして私なんかと一緒に乗ってくれたんだろう。
「もうあと少しかぁ…」
気付けば観覧車は既に4分の3位を廻っていて、もう直ぐ下車と言うところまで来ていた。 きっとチェレンと観覧車乗るのはこれで最後なんだろうと思うと、少し寂しい。 幼馴染みだからって誘えれば良いのに、そうそう上手くいく訳でも無い。
「#6#」
「はぁい…?」
「……また明日、夕方にあそこに居て」
一瞬チェレンの顔が大きく映って、下車を知らせる声が聞こえた。 何が起こったのかいまいち判断が付かないまま地面へと降り立つ。 首を傾げてチェレンを見ればやっぱり涼しい表情で外へ出て行く。 追うように外へ続けば、チェレンが私の額に指を押し当てた。勿論無言。 何、何なんだ、困惑したまま呆然と次の行動を待っていると、大きな衝撃が走った。 デ、デデデ、デコピンされた…!!痛い! 思わず額を押さえると、何故だか溜め息を吐かれた。一体何なんだ。
「痛みには反応するのにね…」
「何の話?」
「#6#が鈍感過ぎるって話」
「そんな事無いよ」
「良く言うよ。観覧車でぼくが何やったか分かってるの?」
「……うーん…?」
「はあ……まあ、せいぜい悩みなよ。じゃ、また明日」
「え、ちょ、教えてよー!」
Ferris wheel (気付けよばか)
因みにハルってハルオの事。 チェレンってこんなんか…?
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