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そして私は引き金を引く









*シリアス
※死ネタ

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「…ラムダさん」

「どうした、」

「私、実はスパイなんです…って言ったら、どうしますか?」


驚愕したように、大きく見張られる目。
普段は余裕綽綽と言った様子なだけ、見慣れない表情に笑みが溢れる。
このひとでも、こんな顔が出来るのか。
そう、素直に驚く私が居た。
彼は、嘘では無いと判断したらしい。

「…どうする、ね……そんなん、答えた所で結果は変わんねぇだろ?」

外から、けたたましい程のサイレンが響いている。
自嘲気味に笑みを見せるラムダさんは、もう自分の運命を受け入れているのだろうか。
…否、受け入れるしかないのだろう。
その原因は、紛れもなく私自身なのだから。

「そう…そう、ですね」

小さく肩を竦める。
ビルの扉を、勢い良く開ける音が続く。
私は懐から拳銃を抜いた。
弾は、ひとつだけ込めてある。
元より外すつもり等無い。
そう言う意志の現れだった。

「…残念だな」

「何がですか」

「…お前がスパイだった事がだよ」

「意味、分かりません」

親愛を感じる言葉を拒絶する。
聞きたくない。
それが私の素直な気持ちだった。
聞いてしまったら、きっと決意が鈍ってしまう。そんなの、許されない。

「分からなくて良い。…お互いの為にも、な」

に、といつもの笑みを見せる。
ああ、確かに私はこのひとを慕っていた。
荒い優しさに、視界が滲む。
スパイであろうとも、それだけは揺るがない事実だった。


遂に、階段を上って来て居た足音が静まった。ドアノブに手が掛かる。



そして私は引き金を引く
(さようなら、せめて安らかに。)





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