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ねいむぷりーず?









*甘い
*ラムダ→←ステラさん

Go→














彼を見ると、胸が締め付けられるように痛くなってとても苦しい。
どうすれば良いか分からないから、もう随分前から我慢して来た。

「…ラムダ、さん」

彼と私は敵同士。
だけど"仕事中"じゃない時はただの知人。
少しだけでも普通に話していたい、とそう言ったのは私だったから。
彼は一瞬驚いたような顔をして暫く悩んでから、まぁいいぜ、と曖昧に応えてくれた。
それにどんな意図があるのかだとか、そんなのは私には分からないけれど応じてくれるならそれで良い。
どうやら私は、彼と居るのが楽しいらしいから。

「……ん?どした?」

「…何でも無いです」

正直私もこんな痛みは初めてで、何かの病気かと思って母さんにも聞いてみたけど意味深に嬉しそうな笑みを浮かべられただけだった。
だから今日は彼に聞く事にした。
…けどやっぱり聞くのが怖くて中々切り出せない。
自然に尋ねようとは思ってみるものの、迷いが生じてしまう。
笑われる、だろうか。

「…何かお前最近変だよな、何かあったのか?」

煙草の吸い殻を足で擦り潰して消火する。
放置されるらしい其れを回収して携帯しているゴミ袋へと入れた。
偉いねぇ、なんて茶化すものだから軽く睨んでやった。何て調子の良い人なんだ。

「……な…んでも、ありません」

改めて聞かれると答えるのに抵抗が出来る。何と無く雰囲気に憚られて誤魔化してしまう。

「何も無いようには見えないんだけどな。あんましょぼくれてると可愛い顔が台無しだぞー」

くつくつと愉快げに笑うラムダさん。
揶揄っているのか何なのか。
冗談でしょうと言い聞かせるのに顔が段々熱くなっていく。恥ずかしい。
少々乱暴に髪を撫でられ、呼応するように俯いた。

「……」

「おいおい、そこで黙るなよ。顔真っ赤だぞお前」

「っ見ないで下さい!」

「いや無理がある、っておまっ!」

必殺(いや死なないけれど)パンチをお見舞いしてやる。デリカシーの無い人だ。
見るなと言っているのだから是非見ないで頂きたい。

「…はぁ。で、結局何なんだ?」

「……その…、…以前母さんにも聞いたんだけど…」

「うん?」

どうやら話す気になったと分かったのか意外そうにしつつも私の隣へ座って続きを促して来た。顔を見られないように、背ける。

「…ラムダさんを見ると、…こう…胸が痛いんです。苦しくて、辛くて逃げたくなる」

「………オレが原因な訳ね、」

「多分、こんなの…ラムダさんだけですから」

「んー、成る程な。…オレ、教えられなくは無いけど後悔するかもな?」

「…脅しですか?」

「そう言う訳じゃねぇよ。ただお前の人生が壊れるかもしれない…ハッタリじゃなくて」

「…そんな大変なものなんですか?」

「人それぞれだな」

へら、と笑って私の頭を撫でる。
暖かくて落ち着く大きな掌。
人生が壊れる、とは一体何なのか。
結局それを聞かない事には問題は解決しない。怖いけれど…聞かなくては。

「その…結局、何なんですか?」

「え、聞きたいのか?」

まさか、と言ったように双眼が見開かれた。暫し私の髪をいじりながら考えている様子のラムダさんを見詰める。
深く寄る眉間の皺は、本当に悩んでいるのだと思わせた。
また少し、怖くなる。

「ま、お前が聞きたいって言うならオレは残念だが教えるだけだな。ちょっとこっち向け」

間を置き決心した風のラムダさんに顎を掴まれる。そこまで強い力では無い為痛みは伴わない。ただ、顔がとても近くて、無意識に顔が上気する。

「…後で怒っても聞かねぇからな」

再確認だとでも言うように告げられる。
重ねられる言葉に段々と不安になってきた。
もしかして、とても大変な事なのでは…幾ら考えようとも不安は尽きない。

「ラムダさ、」

質問を唱えようと口を開いた途端、それを塞がれてしまった。唇に残る珍しく暖かな温もり。眼前にはラムダさん。

「…、ふ、」

との位したか分からなくなった頃に漸く唇を離された。足りなくなった酸素を取り込もうと深呼吸をする。

「…何、なんですか、」

「分かれよ、お前はオレが好きなんだ」

真っ直ぐに見据えられて答えられた。
けれど、言っている事は些か勝手にも思われて。文句を言おうと口を開く。

「そんなこと、」

「文句は聞かねぇ、だってお前が聞いたんだしな」

「勝手に…」

「少し黙っておけって」

ぎゅう、と効果音が聞こえたような気がする。何時の間にやら私はラムダさんの腕の中。
どくん、と心臓の打つ音が鮮明に鼓膜を刺激する。

「ラムダさ、」

何だかそれが嬉しくて、認めたくないのに好きだと思ってしまう。
好き?…これが?
どきどきして苦しいのが、恋?

「…ラムダさん、わたし…わたし、」

「どした?」

「わたし、あなたが……」


好きなんです。
自覚してしまえば驚く程気分が楽になった。好きな人の腕の中。こんなに幸せを感じた事があっただろうか。
勝手に背中へ腕を回して体を密着させる。

「…で、お前はそれで満足な訳ね。オレの有難いお返事はいらんのか、そうか」

「え、」

「え、って事は忘れてただろ。舞い上がるのもいいが、一人で盛り上がるなよ」

呆れたように苦笑される。
…くやしい。

「じゃあ」

「教えろ?態度がなってないなー、」

「教えて下さい!」

「ん、まぁいいわ」



(ずっと前から―――…)




さあ、と鼓膜を震わせるのは甘い甘い砂糖。










眠くてぐたぐたに…






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