*相変わらず杉島さんは素直じゃない *安田→杉島さん→←本好 *悲恋 *本好の性格が悪い
※コレの続き Go→
俺は屋上で膝を抱えていた。 そう、思い出すのは一つ―――ついさっきの出来事。 鞄を置き忘れた俺は、部活を終えた後に教室に向かっていた。 本好は俺より一足早く先に帰るとか行って、最後の戸締りやらは俺の役目。 鞄を持って来ればそのまま帰れたし、その上あんな光景を見ずに済んだ。 部活に行く前の俺を、今なら殺せるとさえ思う。その位、不快に思えた。
教室に入ろうと思って開いた扉から中を覗いた俺の目に入ったのは、先に帰った筈の本好と一月くらい前から一切口を利かなくなった幼馴染の綾香だった。 本好は窓に背を向けるような形で、綾香と話していた。 相変わらず穏やかな表情で、静かな空気を壊す事も無く。 その雰囲気に鞄を取りに入るのは憚られて、俺は少しだけ身を隠すような状態で、言い方は悪いけど――覗き見、をする事になった。 俺の意思じゃなかったと思う。鞄を取りに行ったら、偶々アイツらが話していた。 それだけの事だ。咎められる謂われは無いと思う。 話の内容は静かなお陰で、全部筒抜けだ。あの比較的静かな本好の声ですら。 結構前から話していたらしく、内容は良く分からないところから聞こえた。 美作くんなんか諦めれば、と凄まじくデジャヴな言葉が、耳を貫く。 俺も、似たような事を言われた。アイツ、俺だけに飽き足らず、本好にまで僻みかよ。 しかも対象が美作って、可笑しいだろ。思わず笑いかけた、直後。 本好の、肯定の言葉が続いて、俺は目を見開いた。 どういう事だ?呆然とする耳には絶えず声が入る。
「俺は別に美っちゃんをそう言う風に見た事はないよ」
「じゃあどうしていつも…!」
「だって美っちゃんは友達だからさ」
「そんなの…」
「理由にならない?…杉島さん、そんな感じの事…安田にも言ってたね。安田は君の気持ちには気付かなかったみたいだけど」
「え、」
「俺は分かってるよ。…其れは僻みなんかじゃなくて嫉妬で、自分を見て欲しいだけなんだって。…ね」
隙間から、本好と綾香が抱き合うのが見えた。 だから俺は静かにバレないように、走って屋上に逃げたんだ。 悔しくて悲しくて、あいつの本心に気付けなかった自分が憎くて不甲斐無くて。 あいつはどんな思いだったんだろう。 俺はあいつがああ言う奴だって知ってたのに、あんな大事な時に限って気付かなかった。それも、その本好の―――言葉。 あれは紛れも無く、俺に向かって言った言葉だった。 アイツは、俺が居ることに気付いていた。気付いた上で、言ったんだ。 それが堪らなくどうしようもなく、腹立たしくて仕方無かった。 わざと、見せ付けるように、俺が綾香を好きだって事をアイツは利用したんだ…!!
キィ、と扉の開く音がして、本好が現れた。
「やあ。…ねえ、どう?悔しい?悔しいよね」
「うるせェよ…」
「負け惜しみ?――安田ってさあ、本当に馬鹿だよね?救い様の無い、馬鹿だよ。彼女と、俺よりも長く居る癖に」
「うるせェって言ってんだろ」
「俺は杉島さんの事好きだったから正直ラッキーだったけどね。…安田が態々嫌われてくれてさ」
「うるせェって言ってんのが聞こえねーのか!!」
目の前に立って薄ら笑みを浮かべたまま話す本好に俺は怒鳴った。 こんなにコイツに腹が立ったのは初めてだ。 中学に入った頃からいけ好かないとは思い始めていたけど、こんなに気に食わないような奴だとは思ってなかった。尤も、コイツはずっと俺を嫌ってたみたいだけどな。 だから、余計に。 多分コイツは、俺から綾香を引き離すタイミングを虎視眈々と見計らってたんだ。 俺が都合良く綾香を突き放したから、そこに付け込んだ。 つくづく最低だ、コイツは。本好、暦は。 俺が怒鳴った後も、それすら愉快だとでも言う風に笑っている。 嬉しくて堪んねーんだろ…?俺から綾香を奪えた事が。 あぁああぁあムカツクムカツク、いっそコイツを、殺してやりたいくらいに。
綾香が好きだった。 素直じゃないところも魅力だと思ってた。 笑った顔が可愛くて。 熱子は好きだけど、綾香は倍好きだった。 ずっと一緒だった。
誰にも、渡したくなかった。
ルークが最後に嘲笑う (俺はなんて愚かで浅はかなんだろう)
本好くんと安田の仲が宜しくないね← 因みにルークですが某赤毛では無くイカサマ師とかペテン師って意味ですよって。
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