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笑っている君が見れるだけで









*安田も杉島さんも結構酷い
*悲恋
*安田→←杉島さん←本好
Go→
















「貢広」

「んあー?」

「また熱子ちゃん?」

「おう。熱子は本当可愛いよなー…」


ぱらぱらと私に視線を向ける事も無く雑誌を捲る安田。
後前田熱子特集!と書かれた大きな見出しが憎たらしい。
熱子ちゃんは可愛いし凄く素敵だと思うけど、一般人からして見れば雲の上の存在。
そんな子に、安田はもう随分前から夢中になっている。
別に熱子ちゃんは嫌いじゃない。寧ろ好きだと思う。
だけど熱子ちゃんに夢中な安田は嫌い。だから、嫌。
嬉しそうな顔で熱子ちゃんを見てるから、イライラしてくる。
本当は一緒になって話せたら良いのに。
私は素直じゃないからついつい憎まれ口叩いて――


「もう諦めたら?」

「はあ?」

「熱子ちゃんはアンタの事なんか知らないし。…無駄だよ、それ」

「…お前に何が分かるんだよ。俺が誰を好きだって関係無いだろ」

「な…私はアンタを想って…」

「余計な御世話だって言ってんだよ」

「な、に…?」

「熱子はお前みたいに捻くれて無くて可愛いよ、本当。お前も僻む前に努力すれば?」

「…安田の馬鹿!!大ッ嫌い!死ね!!」


――――こんな事、言いたくもないのに。


貢広は一瞬びっくりしたような顔をして、それから思い切り顰めた。
不機嫌に歪んだ表情は、本当に怒っていて。
不味い事を言ったと思うのに、撤回する事も出来なくて。
やめて、嫌わないで、って思うのに、何も言えなくて。
言いたい事素直に言えなくて、どうしても怒らせるようにしか言えなくて。
思わず教室か飛び出した。
出る寸前に聞こえた、「俺も杉島の事なんか大嫌いだよ!!」は聞こえないフリをして、耳を塞いで屋上に走った。




「…大嫌い、か」


屋上に着いて、見えない場所で膝を抱える。
私も同じことを言った。
けどそれは本心じゃなくて、文句みたいなもので。
だから貢広に嫌いだって言われるのは相当ショックだった。
涙で目の前が滲んで苦しくて悲しくて、嫌われたくなかったのに自分からそうなるように仕向けてしまったようなものだ。
謝ればきっと間に合うのに、きっと許してくれるのに、また傷付くのが怖くて、私は鞄を置いて家に走った。
貢広が謝りに来てくれるんじゃないかって期待して、走った。
ずるいって、分かってる。
私がいけないのに謝れない。素直にごめんって言えない。
それが苦しい。また貢広と笑って話したいのに。
ちゃんと謝って、素直な気持ちも伝えたいのに。
昔から甘えてばっかりだった。こうやって、人任せにしてた。
貢広も分かってくれてるって、きっと慢心してたんだ。


その日から貢広は、私に目も向けなくなった。





笑っている君が見れるだけで
(充分だったんだよ)
(我が儘な癖に素直じゃないから、当然なのかな)








安田ってあんなんだけど、冷たい部分も有るんじゃないかなあと言う妄想の産物2。
続きますよ。次は本好くんが登場します。
相変わらずシリアスだと思われる。と言うかシリアスです←






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