※杉島さんが変態さん。 *甘め Go→
夏って最高!! 半袖だし男子も女子も露出が増える! ボタンも外す子多いし、腕捲りなんて卒倒物だよ! ――私? 私はいつも通り膝丈のスカートにボタンなんて外した事も無いブラウス、その上にはベスト。ブラウスは透けるって大声で安田が言ってたからね。 スカートも透けるらしいから、バッチリ体育の半ズボンを穿いて来てる。 だけど、私にはそんな事よりずっとずっとずうっと大事な事があるの。
何かって?それは事後報告にしよう。
「安田ーッ!!」
「出たな、非常識女!ベスト着るとかどう言う神経してんだ!あとスカート長い!」
「だってアンタが透けるって言ってたんじゃない!スカートは短くても長くても機能的には何も変わらないんだら良いでしょ!」
「訳分かんねーよ!寧ろ見せるくらいの勢いで居ろよ!!スカートが短くねーと足が見えないだろ!覗き辛いし!俺のロマンを返せ!」
「ロマンって…あんたそんな事しか頭に無い訳?…それより」
「健全な男子なら普通だろ!…それより?」
「安田さ…自分の心配した方が良いよ?」
にっこりと多分私は大分晴れやかな顔で笑ってるんだろうな、と思いながら言う。 安田は急に気を削がれたようにきょとんとして(可愛い…!)自分を指差した。 不用心にも程が有る。そうとも、私はずっとこの時を待っていた…! 興奮ゲージが有るなら多分MAXだと思う。しかも真っ赤。 安田が女の人に興奮する気持ちが素直に分かるよ、いつも突っ込んでるけどさ。 だってほら、私は――
「や、安田の鎖骨エロい!!」
―――変態ってやつなので。
「はあ?!おま、何言ってんの?!鎖骨?!」
きゃーっと言わんばかりに鎖骨部分を隠す安田。 何ソレごめん超可愛いんですが…! 慌ただしくボタンを掛けようとしている手を、握った。 その瞬間ピタリと動きが止まって、心底驚いた表情と信じられないと言わんばかりの視線が私を向いた。予想通りの反応だ。 安田って自分でやってる時は本能のままに動く癖に、いざその状況に立たされるといつもの五割増し、もしかしたら十割増しって言う位に狼狽える。 そんな所が安田の可愛いところなんだけど、そんな事言ったら容赦無く撃沈しそうなので、今は言わないでおこうと思う。 じっと鎖骨を見つめて、改めて素直な感想を言うなら…そうだなあ。 安田も『喋ると三枚目』の類なんだ。黙ってればそこそこ、藤くんにこそ敵わないけど悪くは無い。顔に騙されちゃいけないんだよって事を体言したような奴。 でも私はそんな変態な安田が大好きだ。何でかって言われれば、一番の理由はこんな私にも女子として接してくれるから。 多分他の子からして見れば大迷惑なエロ談義も、私からして見れば微笑ましいとさえ思う。思える。何せ私がこんな変態だから、余計。 まあだけど、望みは薄い。…と言うか、無いに等しい。 私は後前田熱子ちゃんみたく可愛くないし、胸はCも無い位だし、大してスタイルが良い訳でも無い。其れに加えて、この性格。 こんな大胆な行動は出来る癖に告白とかになると足が竦む。言ったらどんな顔をするかだとかも、考えたくはない。拒絶される位なら、何も言わないで友達で居たい。
手首を離して、両手で胸倉を掴むような具合にワイシャツの襟を開く。 安田はいつの間にか抵抗を止めたのか、私の一挙一動をじっと見つめてる。 そんなに冷静に見られると、恥ずかしいんだけど…。 つ、と指先で鎖骨をなぞって見る。うわ、安田の癖に肌さらさら。 いつも汗掻いてそうなのに…(興奮した時とかね)、しかも色白!流石化学部。伊達に室内に籠って実験してないなあ…あ、安田が化学部なのは媚薬作る為だっけ。 しかし安田、本当に性格が残念なんだなあ。だってコレでモテない理由なんか、それ位しか見当たらないし。もしかしたら『恋は盲目』とかの類かも知れないけど。 だって安田は、本当は凄く格好良いから。私服のセンスだって良い。実は眼鏡だって似合うし、色素の薄い髪だって綺麗で(これは本格に盲目かも)。 鎖骨から安田の顔に目線を移すと、何も言わない安田と目が合った。 二人きりでこんな状況で、色々訊きたい事だって有るのに嫌われる事を恐れる私の唇は、開く事すら忘れたみたいにただ乾いていく。 今してる事だって嫌われる可能性がゼロって訳じゃないのに。 動けよ!そう念じた唇は訳も無く紡いだ。
「…ごめん」
案の定安田は何言ってんだとでも言うような表情になる。 其れが一体何を思ってるのかは分からないけど(今更かよ、とか意味分かんねえ、とか、色々)、気まずくて視線を逸らした。どうしようも無い居心地の悪さが、焦燥感を与えてくる。どうしよう、どうしよう。 頭の中は其れで一杯になって来て、もう何処から何を言って良いのかすらわからなくなった。一つ一つ謝るべき?それともいつも通りの調子で「御馳走でした」? 安田は何を思ったのか私の頭に幾分も大きい掌を乗せた。 それからぐりぐり、と若干乱暴な手付きで撫でられる。
何、なの?
「はー…お前、本当意味分かんねーよ。俺の鎖骨エロいとか言って飛びついて来て、んで無理矢理拝んで置いて急に黙るし」
「ご、ごめん…」
「謝んなよ。…別に謝って欲しい訳じゃねーし別にその必要も無いだろ。つーか謝るくらいならパンツの色でも教えろ」
「ぱ、パンツの色?えーっと」
「え、マジで。やっぱ覗かせて!!黒?!赤?!も、もしかして意外に白とか…!!」
はあはあ、と安田が息を荒くする。 顔は真っ赤だしにやけてるし、こう言うのを変態って言うんだなと思った。 それを思えば、私ってまだ良い方なのかも。 女子として見れば結構問題だけど、安田の存在には霞む。 思い切り肩を掴まれて、荒い息のままの安田の手がスカートを掴んだのを払った。 油断も隙も無いなコイツ…!!信じられない。でもこれが安田なんだ。 スカート覗かない安田なんて安田じゃない。女湯覗かない安田も安田じゃない。 エロ本持ってない安田も安田じゃない。エロの代名詞なんじゃないかな、安田って。 ちょっとだけ残念そうな顔をした安田が子犬に見えて思わず顔を振った。 気の所為だ、今のは…!騙されるな私!コイツはパンツが見たいだけだ!
「覗くのはダメ!あと赤とかそんな恥ずかしいの持ってないし!」
「ガード堅いな綾香…でもやっぱ、お前そうやってる方が可愛いぞ?」
「…へ?」
「顔真っ赤だし。そんなパンツ見られんの恥ずかしいのかよ、余計見たくなって来た。…しかし綾香が俺の鎖骨エロい!とかって迫ってくる程積極的な奴だとは思わなかったな」
「当り前でしょ!あと本当ダメだからね!!って言うかそれは…その。だって安田肌白いし綺麗だなー、と思って…」
「(それ燃えるって知らねーのかな…)男子に肌白いって…綺麗って…!!褒めてんのかそれ!」
「褒めてるに決まってるじゃん!…や、安田格好良い、くらい」
「あれ、結構上なんだな…つか!格好良いってソレ、マジで!!マジで言ってんのお前?!俺が?!格好良い?!何処が!顔?性格?分かる奴には分かるって事か…!!」
「え、えー…か、顔は普通に格好良いと思う、けど?性格も私は別に嫌いじゃないし…寧ろ黙ってれば普通にモテるよ、多分。もう此処じゃ無理だろうけど」
「お前…それ…」
「それ?」
スティミュラス (それって俺の事好きなんだろ?) (か、かかか勘違いすんな!!)
ダレだ…コイツは…(ごくり) まだ若干の口調掴めてない感がする。 ごめんなさい安田ファンの皆様方…魅力を一割も出せてないよー! そして鎖骨見てんの私だよー← あと名前変換少ないなあ…
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