ドタタタタタ‥、タッ、バーンッ


「晋ちゃんッ!!」

「あ?‥うがッ!!」


ドタンッ


騒がしい足音が止んだと思ったら、いきなり俺の部屋のドアを開け、俺目掛けて誰かが飛びかかってきた。

誰が飛びかかってきたきたかは声を聞かなくても、すぐわかった。


「いッ、てェ‥‥」

「晋ちゃん、誕生日おめでとうッ!!」

「‥‥、あァ‥ありがとよ、なまえ。」


そう、そいつの名はなまえ。
俺が生まれた頃から知ってる、いわゆる幼なじみだ。幼なじみで毎年俺の誕生日にはなまえがドッキリ大作戦!とか言って毎年色々なことを仕掛けてくる。

どうもこいつの性格は17年経った今でも理解不能だ。
第一に‥


「なんでなまえが俺ん家勝手に入ってんだよ。不法侵入で訴えるぞ?」

「やー、晋ちゃんの彼女です。って言ったら管理人さんが「高杉くんの彼女さん!?まぁ可愛い彼女さんね〜!」って鍵開けてくれて、入れちゃった!」


最近なまえん家とは近所の家から出て、少し離れたところにあるマンションに一人暮らししている。だから昔は好き勝手に家を出入りしていたが、なまえもそうもいかず引っ越してから一回部屋を見にきた以来だ。


「入れちゃった!じゃねェ‥てか、なまえみたいなアホ丸出しの彼女作った覚えはねェよ」

「アホ丸出し!?誰のこと!?」

「なまえしか居ねェだろーが‥」


俺に彼女だァ‥?ふざけんな。
俺ァてめェが居るせいで彼女なんか作ったこたァ一度もねェよ。
‥くそノロマなまえが‥いい加減気付けよ。


「アホは私じゃなくて晋ちゃんの方だよ!アホ晋助〜」

「てめェ‥あんま調子乗ってると痛ェ目あうぜ?」

「へんっ!アホ晋助にはできっこないよーっ」


ぷちん‥

ドンッ


「いたッ」

「痛ェ目あうって言ったろ?それに、いくら幼なじみの俺だからって、少しは気をつけろよ‥‥ここ、男の部屋で‥ベッドの上、だぞ?」

「うるさ‥ひゃっ!」


形勢逆転。
俺がなまえを布団に押し倒す形になった。

ふぅーと耳に息を吹いてやりゃァ‥変な声出しやがって‥


「ベッドの上に居る俺を堂々と押し倒してくるとは‥アホはお前だろ?なまえ。」


そう。俺が今まで居るのはベッドの上。ベッドの上だぞ?なのに押し倒してきたのはなまえ。好きな女が自分から押し倒してきたのに何もしない男なんて男じゃねェだろ。


「ちが‥「何が違うんだよ?」‥ンぁッ‥」


耳元で囁いてやると色っぽい声まで出すなまえ。
‥理性が持たねェッ


「なァ‥いいんだろ?」

「‥んっ‥‥はッ!‥待って!晋ちゃん違うの!」

「何が違うん「待ってッ‥!」‥‥わーったよ‥」


せっかくいい雰囲気だったのに、お預けはキツい。だが、ここまで待てと言うなまえの頼みを聞かずにヤる俺は本当に最低だ。渋々とりあえず話を聞いてやることにして、なまえの上からどいた。


「ありがと‥ちょっと待ってて!」


そう言って俺がどいてからベッドから降り、さっきなまえが開けて開きっぱなしのドアの横から、何かを取り出してきた。


「何だそれ‥?」


さっきのさっきで少々気まずさがあるが、気になるから聞いてみる。


「はいっ!!これ誕生日プレゼント!晋ちゃんおめでとう!!」


俺の前に差し出されたのは意外にも俺の誕生日プレゼントで、小さな箱にリボンをして包まれていた。


「ありがとよ。‥開けていいか?」

「う、うんっ」


やっぱなまえも気まずさがあるのか?と思いつつ、リボンをほどき、気になる箱を開けてみた。


「ッ!?‥これは‥」


なんて言おうか迷ったプレゼント。そしたらさっきまで黙って俺が箱を開けるのを見てたなまえが、俺が箱を持ったままの両手を握ってきた。


「結婚しよう。晋ちゃん!!」

「!?‥‥ッ‥」


箱の中のプレゼントは‥なんと、指輪だった。流れから行くとなまえからしたら結婚指輪‥だろう。

‥今結婚しようって言ったか?プロポーズ‥?だよな!?いやいや‥


「お前‥ッ、本気か?」

「私はいつでも本気だよッ!」


‥‥本気らしい。マジかよ。つまり‥‥いや待て、なまえは俺のこと好き‥ってことだよな?‥‥やばい、本当に嬉しい‥。でもよォ‥


「プロポーズ‥って順番早くね?」

「へ!?‥え!?」

「‥ッほんとアホだわお前。」


ククッ‥

よくよく考えたら笑えてくる。なまえらしいっちゃらしいが‥


「あのな、」

「‥うん。」

「俺たち、まだ付き合ってないだろ?」

「あ‥!そう、だ‥よね?」

「‥何で疑問系?」

「んー‥昔、晋ちゃんの誕生日に紙に『晋ちゃんが17歳になったら旦那さんにしてあげる』って書いた覚えがあるから‥」

「いや‥それ突っ込みどころありすぎだろ。まず、俺を旦那にしてあげるじゃなくて、なまえを嫁にしてもらう、でいいだろ。で、俺そんな紙見せて貰った覚えはねェぜ?あと、何で17歳なんだよ。」


なまえのことだからなまえの中では勝手に付き合ってた、ってのか‥?幼なじみながらにすごいと思うぜ、なまえの思考回路が。


「‥あぁあっ!!紙は机に閉まったままだったぁ!通りで晋ちゃんに渡したはずなのに何でここにあるんだろう‥って思ったはずだ!‥旦那さんは間違ってはないよっ!17歳は‥」

「17歳は?」

「結婚できる年だから!」

「‥は?」

「だから結婚しようって‥」


いやいや、待てよ。結婚出来るのって‥くそッ。


「やっぱなまえはアホだな‥ククッ」

「あ!笑ったな!!‥‥てか、返事は?」


思い出して急にシュンとなるなまえが可愛くて仕方ねェ。返事ねェ‥


「来年の俺の誕生日な‥」

「へ‥?」


理解不能、と書いてあるような顔。笑えるぜ、ほんと‥


「なまえ、男が結婚出来るのは18歳からだぜ?」

「え?‥あっ!あぁぁ‥ッ嘘ォ?」

「嘘じゃねェよ?」

「や〜‥ッ」って言いながら床にへなへなと座り込むなまえ。張り切ってプロポーズしたのはいいが、自分のアホっぷりがきたんだろう。


「なまえ、」

「‥ん?」


俺の言葉にゆっくり顔をあげるなまえ。そのなまえに‥

チュッ‥


「‥‥ッ‥!?」


俺は唇を重ねた。

約束を込めた‥


「なまえ、俺が18歳になったら結婚してやるよ。」

「ほんと‥?」

「あァ‥その代わり、それまでは俺の彼女になれ。」

「‥うん!」


笑顔で頷いたなまえは、俺に抱きついてきた。


「晋ちゃん、大好き。」

「俺も好きだぜ?お前以上にな。」

「え?私の方が晋ちゃん好きだよ?」

「るせ‥ッ俺の方がなまえが大好きなんだよッ」

「‥晋ちゃん、可愛いッ」





ぎゅぅっ

と抱きしめてくる温もりを、

「本番は俺に残しとけよ。」

そう呟いて、強く、

優しく、抱きしめ返した。








(晋ちゃん、17歳の誕生日、おめでとうっ。)

(なまえ、一生残るプレゼント、ありがとよ。)



(気付いてなかったのはお互い様。)







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