お願い、愛して



「約束の一年だね。」




「やっと一年か.....長かったようなそうじゃなかったような...とりあえず、これで最後なんでしょ?
最後くらい真面目に相手するわよ。」



ここは町はずれの丘。漆黒の暗闇の中、月明かりに照らされながら佇む二人。




「俺も今日は本気でやるとするよ。最後に笑うのは俺だってこと思い知らせてあげる。」





「いうねー、じゃぁこれまでは本気じゃなかったってことね。」



ニコリとほほ笑む二人の間を一陣の風が吹き抜けた。




ガッ



最初に攻撃を仕掛けたのは名無し。一気に懐に踏み込むと、腹のあたりに蹴りをお見舞いしようとするが
ガードされる。しかし掴まれた足を軸に体をひねると素早く顔面に蹴りをお見舞いした。



「やるね、でもこれじゃぁ俺は倒せないよ。」



距離をとったつもりなのに、いつの間にか神威はすぐ目の前にいて、
手が刀のように皮膚を裂いた。



「ぐっ...。」



肩にのめり込む指先。血の滴る肩を押さえながら、神威を見ると楽しそうに指先の
血を嘗めていた。




「この野郎。思いっきり突っ込みやがって。」



額に汗を滲ませて、うっすらと笑う名無し。正直、神威がこれまで本気を出していないことは
分かっていたが、本気を出したらここまでとは思わなかった。




「安心しなよ、俺が勝ったらもっと太くて硬いの突っ込んであげる。」




「はっ、この変態....!!」




気づいたときにはもう遅かった。


次々と繰り出される攻撃。















どんどん力が抜けていく。




「ガハッ...こ..のやろ...」



口の中に広がる血の味が疎ましい。


血が足りない。


身体が動かない。




「残念だったね。じゃぁこれでおしまい。」




そういっていつもよりも数段楽しそうに微笑む神威が、ぼやけた視界に映る。




「まじかよちくしょー。」





もう笑うしかないね、この展開。




刹那感じた腹への鈍い痛み。



薄れゆく意識の中で、いつもと違う
神威の笑顔を見た気がした。








「やっと、俺のものになったね。名無し。」


意識をなくした名無しを膝に乗せて、血のついた口元をぬぐう。




ずっと恋い焦がれていたもの。




俺の乾いた心を潤せる唯一の存在。






「といっても、また目覚めたらどうせいつもと変わらないと思うけど...
もしかしたら、俺のこと嫌いになってたりして。」




あり得るなー名無しなら。



ゆっくりと頬を撫でて、唇を親指でなぞる。





「それでもね、名無し。それでも俺は..._」




君が好きだよ。





そしてそっと口づけをする。
はじめてのキスは少し血の味がした。










満たされない心




満たされたい心




お願い、俺の心を満たして




お願い、





俺を愛して。







(君が愛してくれたなら、俺はもういつ死んでもいいよ。)








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