絶対、認めない



さわやかな陽気



照りつける太陽




暖かい春の日差しに包まれて




ただいまデート中です。






「でもさ、なんで急に付き合おうとか言い始めたの?」



あたしは今、たけしという同じバイト先の男と付き合っている。



前々からあっちがこっちに気があるのは知っていたので、こちらから告白したら
すぐにokしてくれた。




「なんでって、好きだからじゃダメなの?」



少し小首をかしげて上目遣いで見つめれば、




「い、いやっ全然!」




すぐ赤くなってなにも言わなくなる。



自分に好意を抱いているやつなんて、操るのも簡単だし便利。




実際、こいつと付き合っているのは好きだからとかではなく、あの夜兎族の男、神威が
本当にしつこく付きまとってきて、そのたびに攻撃を仕掛けてくるのでこちらに恋人が
できればおとなしくあきらめるかなって思ったからである。



が、しかし





そんな考えは甘かったというのが、後々よくわからされることになる。






最近神威を見なくなった。たけしと付き合い始めてデートをするようになってからだ。




これはかなり効果があったんだなと内心すごく満足して。
ウキウキでバイトへ行くと、今日たけしはいなかった。



シフトは入っているようだけど、連絡がとれないらしい。


しょうがない、あとで連絡しておこう。


なんて思ってそのままバイトに入った。



バイト帰り、なかなか機嫌がいいのでアイスを買って家への帰路につく。
大きな月が地面を照らしていた。


なんだか今日の月は気味が悪い。赤っぽくて、すごく大きい。
今日は満月の日だというのはわかっているが、この月はすごく
異様に見える。




だけど、月なんて変えられないし家に帰ってしまえば見ることもないのでそのまま無視して
歩き続け、気がついたら家の前まで来ていた。




ふわっ



と生暖かい風が吹いた。




それに混じって匂ってくる、



血の匂い。





急いで玄関に鍵を挿して鍵をあけると勢いよくドアを引いた。




「っ!!」



部屋に充満する血の匂い。




いったい誰の?



この家にはあたし一人しか住んでいないはず...





ひどい血の匂いに耐えながら、靴を脱がずに部屋にあがる。


口と鼻を手で押さえながら、血のにおいが濃くなっている方へ歩みを進めた。





「おかえり、名無し。」




リビングの扉を開けると、窓を半分開けてそこに座る一人の男。
風が髪を揺らし、月があやしくその男を照らしていた。




「神威...!」



そう叫ぶと、いつもの貼り付けた笑みを浮かべた神威がこちらを向いた。



その顔や服にはたくさんの返り血。



手は真赤に染まっていた。




ゆっくりと視線を神威から床に移す。


壁にこびりついた血、血、血。




床一面に広がる赤い水たまり。





そのなかにある"モノ"をみて




思わず息をのんだ。




「た、たけし...」




ほとんど人としての原型はとどめていないけど、間違いない。アレはたけしだ。





「ねぇ、俺聞きたいことあったんだけど。」



そういって窓からスッと降りるとこちらへゆっくりと歩いてくる。




「この男なに?結構仲良さそうに一緒に歩いてたけどさー手とかつないで。」




いつもの笑顔、でもいつもの笑顔じゃない。




これは




いつもの神威じゃない。





一歩一歩、神威が近づくたびにこちらも一歩ずつ後ろに下がる。
そんなことをしていたら、いつの間にか後ろは壁。




ガッ







刹那、思い切り髪の毛をつかまれ壁に押し付けられた。




ゴンという鈍い音がして、後頭部が壁にぶつかる。




すうっと手で頬をなでられる。それに合わせてできる赤い線は、たけしの血。





「この男のこと好きだった?愛してた?でもね、どんなに好きでもどんなに愛してても
ダメ。名無しとコイツは結ばれる運命じゃないんだよ。ね?」



そんな風に小首をかしげても全然可愛くない。それ以前に引っ張られている髪の毛が
痛い。



正直たけしが死んだところでこちらにはなんの支障もない。
だが、自分のせいで死んだとなると少し寝ざめが悪かった。




「俺の言ってる意味わかるよね?こういうことになりたくないなら、これからは簡単に
男作ったりしない方がいいよ?」




「あーもうわかりました!!!!分かったから、離してくれる?!」




神威の腕を掴んでそう抗議すると、案外あっさりと手を離した。




「別にあたしはたけしが好きだったわけじゃなくて、ただあんたがあまりにしつこいから男が出来れば
寄ってこないかなって思ってとりあえず付き合っただけなのに...!」




「なんだーそうだったの。なら早く言ってくれればよかったのに。」




「言えるかっ!!つか殺すことないでしょ!」




「だって名無しにあんな触ってさームカつくし。」



ニコリといつもの笑顔で笑う。先ほどまでの重い空気はもう感じられない。




「あたしはあんたの物じゃないでしょうが。誰に触られようと、なにされようと
あたしの勝手です。」




ふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向くと、ふと視界が暗くなった。





視線を正面に戻すと神威があたしの顔の横に手をついて、覆いかぶさるような形になっていた。






「ねぇ知らなかったなら、よく覚えといてよ。」












君は絶対、俺のもの





(これは最初から決まってること。
君に触っていいのは俺だけだよ。)




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