「さっき名無しチャンが太猿君をぶっ飛ばしちゃったらしいからさ、謝りに来たんだよ。」
相変わらず笑みは崩さない白蘭に対しγの方は特に面白くなさそうな顔をしてウィスキーを飲む。
というか、仮にもボスが来てるというのにこの男、ソファから立ち上がろうともしない。
嫌味くさっ
白蘭はそんなこと気にしていない風だし...
あたしもボスに対してタメ口きいてるけど....
でもあたしとあいつは根本的に違ーう!!
「.....だが、当の本人には謝る気はサラサラ無いようだが?」
そういってちらりとこちらを見るγ。
すっげー目がうぜぇ。もう全体的にうざい、この部隊!
「名無しチャン、ほら。」
トンッと背中を押されて前に出る名無し。
目の前にいる偉そうな男γを上から見下ろすとパッと視線を端の方へ移す。
そこには包帯の巻かれた太猿の姿があった。
「..............。」
その怪我に視線を向けると、後ろを振り返って白蘭に視線を送る。
「名無しチャン。」
白蘭に再び名前を呼ばれて、名無しは「はぁ」とため息をつくと太猿に向き直る。
「ごめんなさい、あたしが悪かったです。」
そういって頭を下げる名無しに太猿は少し驚きながらも「気にするな」と笑顔を返した。
「........ほら、これでもう要件は終わったでしょ。戻ろう、白蘭。」
太猿の見せた笑顔に今更ながらちょっと罪悪感を感じた名無しは、気まずくなったのかサッと太猿から視線を逸らすと白蘭の顔を見た。
「そうだね、それじゃぁ失礼するよ。」
そういって歩いて行く白蘭の背中を追う名無し。
すると、部屋を出ようとしたところで「おい。」と、後ろから声をかけられた。
「お前、白蘭の女か?それとも、またお遊びか。」
なんでおんなじようなことばっかり聞かれるのか...
「(つか仮に付き合ってたとしたら本人に「お遊びか?」って聞くのはかなり失礼なんじゃ...まぁ付き合ってないからいいけど。)」
というか、今更思ったけどまたお遊びって...正ちゃんも最初会った時
『また女遊びですか』
っていってたなぁ。
どんだけ女癖悪いんだろ、あの人。
てか
「違いますから、女でもお遊びでもなんでもありません。あたしはただの世話係です。」
それじゃ失礼します。と言って部屋を出る。
これ以上話をしていたらまた喧嘩に発展しそうなので名無しは早々に話を切り上げ白蘭の後を追った。
パタンとしまる扉をじっと見つめるγ。
γ「.....世話係..ねぇ。」
そういってγは薄く笑うとグイッと一気にウイスキーを飲みほした。
「それじゃぁ名無しチャン、これから僕少し仕事だから。おとなしくしてるんだよ?」
部屋の前までつくと、白蘭はいつもの笑みのままポンポンと二度頭をなでそのまま自室へ戻って行く。
遠ざかっていく白蘭の背中に向かって、名無しは小さく「ありがとう」とつぶやいた。
部屋に入ると水を一杯コップに組み、それをゴクリと飲み込む。
喉には冷たい水の感触。
コップを置くとそのままベッドへ倒れこんだ。
「女遊び...か。」
今まで本気になれる女性がいなかったのか。
そういう性格なのか。
「いまいちわかんないなぁ。」
白蘭の場合、どこまで本気でどこまで本気じゃないのか分からないから。
ただ........
さっきのあの言葉だけは 間違いなく本気だった。
あの時の白蘭の声は今まで聞いたことないくらい低く、心に残る声で
今でも耳から離れない。
『もう、勝手なことしちゃダメだよ?じゃないと僕...
君をぐちゃぐちゃに壊しちゃうよ。』
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