さっきはいきなり入って行ってあんなになったから、今回はちゃんとノックして返事が返ってきたら
入ろう。
コンコンッ
「すみませんー」
シーン
待ってみるが返事は返ってこない。
コンコン
「すみませーん!!」
今度は少し大きめの声で呼んでみる。すると...
「誰だか分らんが、入れ。」
中から男の声が響く。名無しは「失礼しまーす」と扉を開けた。部屋の中は、先ほどの第三部隊とはまた違う薄暗さと嫌な雰囲気が漂っている。
「ん〜?女か。なかなか可愛いな。私の趣味ではないが...どれ」
中にいたのは肩につきそうな髪を垂らし、眼鏡をかけた....一言でいえば気持ち悪い男が椅子に座っていた。
男は上から下まで品定めをするように名無しを見つめるとにやりと笑って席を立った。
そしてゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
ヤバい....こいつヤバい。
絶対ヤバい。
あたしの脳内がこいつは危険だと信号を出している。
スルリと頬にふれる指に反応して
ビクリと震える身体。
「ヒッ そそるぞ、その顔。」
そう言って近づいてくる顔。後ろには壁。
「(なんで、なんであたしは迫られることが多いわけ?!しかもこういう時に限って身体が動かない...!)」
無理無理無理無理無理むーりー!!!!こんな奴とキスするくらいなら白蘭の方がまだ数倍、いや数百倍マシ!!
「(びゃくらーん!!!!)」
そう叫んでギュッと目を瞑ったその時だった。
ガチャリ
と扉の開く音がして、薄暗い室内に光が差し込む。
そしてそこには...
「名無しチャン、大丈夫?」
神のごとく輝(いて見える)く白蘭がいた。
「グロ君、悪いけど名無しチャンは返してもらうよ。」
そういって名無しの手を掴むと腰に手をまわしそっと抱き寄せた。そしてそのまま部屋の入口へ向かう。
その様子をグロ・キシニアはなにも言わずじっと見つめている。
「ああ、そうだ。」
白蘭が名無しを部屋の外に出したところでふと思い出したようにグロ・キシニアの方を振り向いた。
「僕のモノに次手を出したら...その時は
容赦しないから。覚えておいてね、グロ....君。」
刺すような冷たい視線がグロ・キシニアを射抜き、ゆっくりと扉はしまった。
部屋へ戻る途中の廊下。白蘭は一言もしゃべらない。
なんとなく悪いことをしたような気になった名無しはちらりと白蘭を見る。
「どうしたの名無しチャン?」
白蘭がそんな名無しの視線に気がついたのか笑みを浮かべながらそうたずねてくる。
特にそんなに怒ってなかったのかと安心したのもつかの間、
ゆっくりと細い切れ長の目が開かれた。
全く
目が笑っていない。
いや、いつものことなんだけどね。そうじゃなくてもうなんていうか....
怖い。
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