旅にでてもう何年経ったか。才能がないことは自覚していたがあきらめずにここまでやってきた自分を褒めたい。


やってきたのはシンオウジム最後の砦、ナギサシティは電気タイプの使い手デンジ



「お願いします!」


わけのわからない仕掛けのジムをトレーナーを倒しつつなんとかたどり着き、どこか気だるげな表情のデンジにあいさつするとバトルはすぐに始まった。私は基本的に水タイプの使い手なので電気タイプは苦手だが一応対策は考えてきている。



「いけ!ヌオー!」


「レントラー!」


ヌオーをだすとデンジはレントラーをだしてきた。
じめんタイプのヌオーにでんきはきかない。


「じしん!!」

「こおりのキバ!」



お互いが命令をだしたタイミングはほぼ同時だったが相手より先にヌオーのじしんが決まり、レントラーが倒れる。


「やったぁ!!」


「…せんせいのツメか」


「うわ、もうバレたか」



しかしレントラーがこおりのキバをつかうとは思ってなかったから
すばやさの低いヌオーにせんせいのツメを持たせておいて良かった。おかげでじしんを決められたし、うまく発動してくれてよかった。デンジにはすぐ見破られちゃったけど。



「レントラー戻れ。いけ、ライチュウ」


「らいらーい!!」



「ヌオー!もっかいじしん!」


「でんこうせっか!」


先制技のでんこうせっかが決まる。しかしでんこうせっかはそれほど威力の高い技じゃないしヌオーはそんなんじゃ倒れない


遅れてヌオーがだしたじしんがライチュウにヒット。
こうかはばつぐんだし、ヌオーのレベルも高いから一発KO。



「サンダース」



続いてだされたサンダースもでんこうせっかを繰り出してくる。まだ大丈夫。


「ヌオー!じしん!」



またしても一発KO。
ヌオー無双だよ!これはいけるんじゃない!?


「やるな」


デンジが少し笑う。追い込まれてなお燃え盛る闘志はジムリーダーをつとめるだけあってなかなかのものだ。



「エレキブル!スピードスター!」



「ヌオー!じしん!」



スピードスターをくらってもギリギリ持ちこたえるはず。
このままじしんでケリをつけようと思ったがじしんをくらわせたのにエレキブルは倒れない。


「え、なんで!?」


「スピードスター」


おいうちをかけるようにくらったスピードスターでヌオーが倒れる


「ヌオー!!」



ヌオーをモンスターボールに戻し、やっと理解する。


「きあいのタスキ…」


まさかそんなものをつけてるなんて思ってなかった。



「ご名答。エレキブル、かいふくのくすり」


「えっ!そんな!!」



無情にもかいふくのくすりを使われたエレキブルは体力まんたん。やる気もじゅうぶん。


ヌオーを倒された今、私に残されたのは水タイプ3体と




「ルクシオ!いける!?」



唯一水タイプではないルクシオ。
水タイプの使い手、マキシさん…もとい、マキシマムかめんとのバトルに備えて育ててた子だ。はやく技を覚えさせるために進化をとめていたのだが。



「へぇ…電気タイプでくるとは」


デンジは予想外、とばかりにうれしそうだ。



「ルクシオ!かみくだく!」



「スピードスター!」



ルクシオもヌオー同様そんなにすばやさが高くないうえ、レベルもそんなに高くない。


スピードスターをうけ、かみくだくをくらわせたがエレキブルは倒れない。
畳み掛けるようにだされたスピードスターにあえなく倒された。



「うぅ…いけっ!フローゼル!」


「10まんボルト!」


残された水タイプの子をだしてもここぞとばかりに電気技をくらわせてくる。一発でやられはしないがまだレベルでごり押しはできないようだ。



「っギャラドス!!」



「10まんボルト!」



さらに水とひこうのギャラドスに電気は4倍。かなうはずもない。



「カラナクシ!!」



「はっ?」



最後はもうヤケになってカラナクシをだすとデンジはあっけにとられたようにマヌケな声をあげた。





「なに?」



「いや、お前…なんでソイツ進化とめてんの?」



「は?」




「トリトドンに進化させればじめんタイプじゃん」



















「カラナクシ!!ふしぎなあめ!!」


「バトル中にくわせようとするなよ」






はやくじこさいせいを覚えさせたいがために(ついでにトリトドンの目が怖かった)とめていた進化がここにきてあだとなるとは考えていなかった。この辺が私の才能の無さだろうか。



「マヌケだな…」


ボソリと呟かれた言葉が胸にささる。はいそーです。才能うんぬん以前にマヌケです。





「まぁでも楽しめたし。エレキブル、10まんボルト!」




「カラナクシぃぃいい──!!」







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「そんな落ち込むなよ」



「何年もかけてやっとここまできたのに…私がマヌケなせいでみんなを痛い目に合わせて…」


今私はジムの休憩室?みたいなところで椅子に座りうじうじしていた。


倒れたカラナクシをボールに戻し、急いでポケモンセンターに戻ろうとして派手に転び、足を捻り、見かねたデンジにジムに備え付けの回復器具を借りているというわけだ。






「ここまできただけでも大したもんだろ。もしトリトドンになってたらオレも負けてただろうし。…ほら足だせ」



「えっ、いいです自分でやります」



「いいから」




くるくると巻かれる包帯を見つめながら情けなさに涙がでそうになった。




「名前は?」



「え?私ポケモンに名前はつけない派です」


「なんでポケモンなんだよ。お前の名前は?」


「え?…ああ、ナマエです」



わかっててボケたんだけど、ちょっとツッこんでもらえた。



「ふーん。リーグにも挑むワケ?」


「あ、いえ。ここのバッジを取れたら就職しようと思ってたので」


バッジを全部集めればいい就職先が見つかるから、と親に旅にだされたのがそもそもの始まりなのだが。こんなに時間がかかるなら普通に就職したほうが良かった気もするが。



「ふーん…」



ふーんって、聞かれたから答えたのになんだかなぁ。


「じゃあここで働かね?」


「ふーん…はい?」


対抗してふーん、って言ってから突然の提案に驚かされる。



「そんだけの実力あんのに普通の仕事じゃもったいねーし。オレの練習相手やってくれよ」


苦手タイプ克服に、と言い終わる時には包帯も巻き終わっていた。



「ここ電気タイプ中心じゃないですか」


「ルクシオいるじゃん」



「う…まぁ」



確かにここはとてもいい働き口だしこんなチャンスなかなか無い。
しかしだからこそ自分がいていいのか



「オレお前のこと気に入ったし」




な?と薄く笑われてつい、




「はい!」




と答えてしまった。









お父さん、お母さんやっと就職が決まりました。









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デンジのキャラ安定しないな…



実はひとつの話がぐだぐだになったから2つに分けたっていう。だからひとつ前の話とヒロインの設定がかぶってる。