幼なじみが行方知らずになって3年。
アイツは一体どこで何をしているのやら

物思いに耽ってベッドで雑誌を読みあさる。あ、ワタルさんだ。

アイツはワタルさんにも勝ったんだよなぁ、と呟くとポケギアが鳴りだした。
画面の表示を見るともう一人の幼なじみの名前


「もしもし、グリーン?」


「レッドの居場所がわかった」



こちらの呼びかけに間髪入れずにかえってきた言葉は私の思考を停止させるには充分だった






───────


「なんでこんな所に…」


視界いっぱいの白に容赦なく打ちつけてくる風
あまりの寒さにこぼした愚痴は風にかき消されてグリーンには届かない


今私はグリーンのピジョットに乗せてもらってシロガネやまに向かっている


しっかりつかまってろよ、と言われてグリーンに後ろからしがみついている


むしろしがみついていないと飛ばされる。そして凍え死ぬ。






どれくらい飛んでいただろうか
相変わらず視界は悪いまま。

ピジョットが大きく一鳴きしたかと思うと着地の衝撃が届いた



「ナマエ、大丈夫か?」

「う、うん。なんとか」


グリーンにしがみついていたからね、と言うと服の生地伸びてねぇだろな、と苦笑いされた。



それじゃ行くか、とグリーンが言った直後鳴り響くポケギアの着信

「はい」

それはグリーンのもので、どうやらジムのトレーナーさんかららしい
長くなりそうなのかチラリとこちらを見て

「悪ぃ、先行ってて」

すぐそこだから、と小声で促す。

グリーンは私より先に一度来ているから遠慮なく行かせてもらう





洞窟の中を進んでいると見覚えのある黄色に出会った



「…ピカチュウ?」

「ぴか!」


元気よく声をあげてこちらに電光石火を喰らわせるのは間違いなくレッドのピカチュウだ。


ひとしきり頬ずりしてからピカチュウは先頭に立って指をさす


どうやら案内してくれるらしい















「………………ナマエ?」



ピカチュウの案内でたどり着いた先には行方不明になっていた幼なじみの姿


相変わらずの無表情でこちらを見ている

3年ぶりに会ったのにもう少しマトモな反応はないのか

…いや、コイツには期待するだけ無駄か


「レッド、久しぶり」



「……どうやってきたの」


わずかに首を傾げる。グリーンはまだきてないから私ひとりできたと思ったらしい


ちなみに私が持っているバッヂは3つだけだ


手持ちにそらをとぶを覚えている子もいない



「グリーンが連れてきてくれたの」


「…………………そう」


素直に答えたのに返事は無口に拍車がかかったようにそっけない

こちらは久しぶりに会えて嬉しくて同時にすごく安心したのに



「3年ぶりに会ったのにそっけないんじゃ、ない…の」


ヤバい。なんか急に泣けてきた


こっちは3年間ずっとレッドのこと待ち続けて、探し続けて、ずっと、ずっと心配してたのに


考えれば考える程涙が溢れてくる

ピカチュウが心配そうな鳴き声をあげてすり寄ってくる


溢れてくる涙を拭っていると頭にポンと手が置かれた

レッドに頭をなでられる


「一緒に、帰ろうよ…」


そう呟くとレッドの手がとまる



「…それは、無理」


どうして、とすがるように顔をあげるとレッドが珍しく表情を歪めている。


「…俺はただバトルがしたいだけなんだ」



まったく呆れた理由だ。それだけで3年間親にも連絡なしにこんな辺境の山に籠もってしまうのか


でも

「レッドはそういう奴だもんね…」


呆れて涙もとまってしまった。
もうさっさと帰ってしまおうか

「……だからさ」


目を擦っているとレッドが声をかけてきた


「なに?」


「…………会いにきてよ。強くなって」


髪を一束持って挑戦的に笑うレッド
思わず言葉をつまらせる。


「…わかった」

「え?」

「私が強くなってレッドをここから引きずり出してやる!」


声高らかに宣言するとレッドは目を丸くして一緒固まった後、


「…いいねソレ。待ってるよ」



不適に笑った。
足元でピカチュウも嬉しそうに鳴いた。


















(じゃあ帰るね。)
(…送ってく)
(え?)
(だから、しがみつくなら俺にして)
(っ!)




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途中からグリーンが空気。