サブマスでエイプリルフール



ちらりと卓上のカレンダーをみやる。日付が変わって新しくドレディアのイラストが描かれた月へと移行する。


今日の日付は4月1日。俗に言うエイプリルフールである。
イベント好き(但しバレンタインは除く)な私はさぁどんな嘘をついてやろうかと思案していた。



やはりここは「大嫌いです」からの返り討ちが定番(?)だろうか。しかし本当に2人に大嫌いですなんて言ったものならたとえエイプリルフールだろうがなんだろうがお構い無しに制裁と言う名のセクハラを受けそうなのでやめておきたい。




しかしいざ嘘をつこうとすると案外浮かばないもので、考えることに集中していたら業務に支障がでる。そのうちなんか思いつくだろうと書類に取りかかることにした。





*

しばらく書類に集中していたが2人の上司、ノボリさんとクダリさんがやってきてから
エイプリルフールであることが頭から離れない私は、自分が嘘をつく前に2人に騙されるんじゃないかと警戒していた。



「コレ判子お願いします」


「おっけー」



「2人ともコーヒーはいかがです?」

「あ、ありがとうございます…」

「ボクカフェオレがいい!」




いつ嘘をつかれるかはらはらしながら会話に相づちをうっていくがなかなか嘘らしいことは言われない。ひょっとしたらさっきノボリさんが言ってた雪山に籠っている伝説のトレーナーとやらの話が嘘だろうか。しかしだとしたらネタバレが遅すぎる。なんで今日に限ってこの2人は真面目に仕事してるんだ!?







*




「それでは今日はこのくらいにしましょう。お疲れ様でした」


「おつかれー!」


「お疲れ様です…」






まさか1日が終わるなんて!!



2人がいつ嘘をつくのか警戒しすぎて自分が嘘をつくのを忘れてしまっていた。
このままでは2人とも帰ってしまう。なんだか悔しいので思わず私は帰ろうとしている2人を呼び止め、




「私、2人のこと、だ、大っ嫌いです!!」



どもりながら声高らかに宣言した。とっさに出てきた言葉に後悔しつつ2人がどんな反応をするのか待っていると

ゆっくり振り向き、 笑っていた。




ノボリさんが笑っているだと!?





「あ、あのボス」


冷や汗が流れるのを感じて咄嗟に弁解しようとするが言葉が出てこない。2人の笑顔が怖すぎて。



「ノボリ、聞いた?」


「ええ、はっきりと」




まさかのヤンデレルート!?恐怖に身構えているとクダリさんが盛大に笑いだした。



「エイプリルフールっていったらこのネタだよね!」


「もう駄目かと思いましたが待っていたかいがありましたね」



楽しそうに笑う2人についていけない。エイプリルフールだってバレバレだし。








「それじゃ、ボクらのこと大嫌いだなんて言った罰」


「なんにしましょうか」






つかつか歩み寄られてあっという間に両手を掴まれ逃げ場を失う。





「定番だよねー!」





心底楽しそうな2人を見て、嘘なんてつくもんじゃないな。と全力で後悔した。





(大嫌いな人からもらうわけないよね?)
(せっかく貴方様の為を思って準備したのですが…)
(ああもう好きです!好きですから早くソレ下さい!!)


(素直がいいよね!)

───────



ソレってなんでしょう。



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