5月12日 本日も晴天


今日も今日とて制服に身を包…まずにパーカーに袖を通す。ゆったりとしたズボンの裾がひっぱられるのを感じて視線を落とせば最愛の相棒がこちらを見上げていた。


「ヌオー、おはよう」


何か言いたげなヌオーを抱えあげて頬擦りしてやると微妙に嫌そうな顔をされた。


「嫌そうな顔もかわいい!よしヌオー、行こうか!」


日よけの帽子をかぶって歩きだせばヌオーの表情が綻ぶ。よほど楽しみなのだろう。



そう、

学校をサボって池に遊びにいくのが!



「しゅっぱーつ!」







そうして意気揚々とミハルは自転車を漕ぎだした。












「かわいいなぁかわいいなぁー!!」


近くの池へとやってきたミハルはヌオーが水面を切るように泳ぐ姿を見ては感嘆の声をもらす。
暖かい日に思う存分泳ぐことが出来てうれしいらしく、ご機嫌で泳ぎまわっている姿は見ていて癒される。



そんな風にヌオーを眺めながらミハルはと言うと、竹の棒に糸を結びつけその先にサキイカをつけたお手製の釣竿を垂らしていた。


「釣れないなぁ…あーサキイカうまい」






おつまみのサキイカを文字通りつまみながらアタリがくるのをひたすら待つ。

ジッとしていられない性分ではあるがボンヤリと待つことだって嫌いでは無い。空に流れる雲なんかを見つめがらアタリを待つ。





ぽかぽかと降り注ぐ日射しにウトウト仕掛けていると突如ライブキャスターが鳴り出した。
飛びかけていた意識が半ば強制的に連れ戻され慌てて画面の表示を確かめる。


今日学校をサボることはもう担任とクダリ、トウヤくんトウコちゃんに言ってある。つまり着信音の主は



「なんすか…ノボリさん」



液晶に写されるへの字口に不快感を隠さずにはいられない





「こんにちはミハル様。元よりヒドイ顔がよりいっそうヒドくなっておりますよ」




失敬な。どうやらこの生徒会長に年上を敬う気持ちはないらしい。まぁ変に距離を置かれるよりはよっぽどマシだけど。



「私の顔面偏差値なんてどうでもいいわ。それよりなんか用?」



「ああ、そうでした。ミハル様…今日学校に来ていらっしゃらないのはサボりらしいですね。」




時刻を確かめると学校ではおおよそ昼休みの時間帯。トウヤくんトウコちゃんにでも聞いたのか。




「サボりだなんて失礼な。今日はちょっと体調が悪くて寝込んでるんだって」

「青空の下で寝込んでいるとはずいぶん頭の調子が悪いようで」



「ああはいはいサボりですよサボり。それがどうしたって?」


「随分な言い種ですね。いいですか?ミハル様は 仮にも!生徒会執行部の一員なんですよ?いくらボンクラだろうがなんだろうが学校の看板を背負っていることには「あーもうわかった!今から行くよ行けばいいんでしょ!?」



ながったらしく説教を始めたノボリの台詞を遮って半ば強制的に通信を切る。


元々今日は学校に行くつもりだった。
ただその前に準備があっただけで。



ふてくされながらライブキャスターをしまえば、手作り感満載の釣竿が揺れた。












──────







「やっほーい!!呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!!」


「「先輩こんにちはー」」



元気良く生徒会室に足を踏み入れればもう慣れている双子ちゃんは動じることなくあいさつをくれた。



「あれ、ノボリは?」

「今ちょっと資料室に行ってます」


「ふーん」



チャンスとばかりに釣ってきたものを取り出せば不思議そうに見てきたトウヤくんトウコちゃんに今日の計画を伝える。



「さすが先輩ですね…」

「おもしろそうですね!」



楽し気なトウコちゃんに若干引きぎみのトウヤくん。




準備を済ませて自分の座席に着いてノボリを待つ。




さほど待たずにやってきたノボリは何冊か本を抱えながらミハルの姿を見て



「おや、本当にきたんですね」




第一声がそれかよ!と思いつつなんとかツッコミをこらえて用意していたものを取り出す。




「まぁね、しかもノボリに差し入れ持ってきたよ」



そう言えば少し期待するように「なんです?」と返される。いつもはお菓子だけど今日はちょっと違うんだ。ごめんね。



後ろ手に持っていたバケツを元気良く差し出す。




「はい、コレ」


「?…ひっ!なんですソレは!?」

「ザリガニ」



「ザリガニ!?」



「今日はザリガニの日だそうで。わざわざ釣ってきたんですよ、食べて下さい」


「食べっ…?」



バケツの中でゆったりと動くザリガニは紛れもなくついさっき池で釣ってきたものだ。

ノボリは若干引きつつザリガニを観察している。受け取れよ。




「が、学校に生き物をつれてきてはいけません」

「ポケモンは?」

「あ、いや…その。とにかくワタクシが受け取るには少々荷が重いです」


非常に困った表情をしながらもきっぱりと断るノボリ。まぁそりゃそうだよね。
だけど私は負けない!


「そんなこと言うんだ…へぇー?そんなこと言っちゃうんだ?ザリガニさんかわいそーぅ」


「なんですかその言い方」


「予言しよう!そんなノボリにはザリガニの呪いが降りかかると!!」


「はぁ…」



おもいっきり残念そうな顔をされる。ちょっと心が痛いなり。だが私の反撃はここからだ!



「会長、後ろ…」


トウコちゃんがノボリの後ろを指差す。そうして振り返ったノボリの後ろには




「ッッ!!」

「あ、気絶した…」




私が用意した大量のシザリガーがハサミを振り上げていた。
そして不意討ちでそれを見たノボリは短い悲鳴をあげて倒れた。




「やっば超うける!気絶とか!気絶とか!!」


予想外にいい反応をされてトウコちゃんとミハルの間で爆笑が巻き起こる


トウヤくんは苦笑いしながらノボリに声をかけるが応答は無し。





「あー超うけた。じゃ、トウコちゃんチョコでも食べようか」


「わーい」「あ、オレももらっていいですか?」



気絶しているノボリを放置してチョコを食べる。ヘーゼルナッツおいしいよね。高いしもったいないからノボリは今日はおあずけってことで。




ザリガニはどうなったって?池に返したよ。














次の日に生徒会室に入ったら大量のマッギョに出迎えられた。




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