天気予報は今日も晴れのマーク。買い置きのアポロをカバンに入れて玄関を飛び出す。

通学路を相棒のヌオーと一緒に歩く。今日はなんとなくはやく目が覚めたからはやく家を出たのだけれど。



「ヌオー、暑くない?」



もう4月も終わりそうな今日この頃、陽射しも少しだけ強くなってきたから水ポケモンのヌオーが心配になって声をかけたけどヌオーは別段気にする様子もなく両手をあげた鳴いた。なにこの子超かわいい。親ばか?褒め言葉ですね。


抱きしめて頬をすりすりするとうれしそうに返してくれる。



「ああもうヌオーまじかわいい」
「あれっミハル?」

「ん?」



道路の真ん中で悶えていたら自分の名前を呼ばれ、振り返るとそこには


「わぁ天使が僕の前に舞い降りてきた」


「何言ってるの?」
「おはようございますミハル様」

頭にクエスチョンマークが見えそうな感じで不思議そうに首をかしげたのは天使、もといクダリだ。


「いやぁクダリは今日もイケメンだね。おはよう!」


「よくわかんないけどおはよー!」
「おはようございますミハル様」



朝っからハイテンションでハイタッチ。ちゃんと応えてくれるクダリは私のテンションに慣れきったみたい。というかただの天然?


「あ、ミハル。見て、ボクのバチュル!」


そう言ったクダリの肩に現れたのは小さくて黄色いバチュルの姿。突然現れたけど背中にでもくっついてたのか?


「うひゃーかわいいね!まぁ私のヌオーには負けるけど」

「ミハルってほんとヌオーすきだね」
「ミハル様!!」


クダリと仲良くお話していたと言うのに大きな声をあげたのは



「ああ、いたんだノボリ生徒会長」
「ええ。最初っからいましたとも」


まぁわかってたんだけど。さっきからしつこく挨拶されてましたし。ご丁寧に名前つきで。


「なぜワタクシをスルーするのです?」


「スルーするって!ぷぷっ!」

「ああ!はからずもギャグのように!ではなく、なぜ無視するのです?」


あわあわしているノボリさんがおもしろい。ええもちろん、


「おもしろいから!」



グッと親指を立てれば、ノボリはひじょーに複雑な表情をして「…そうでございますか」ともらした。


「じゃ、行こっか!」


ニコニコこちらを見ていたクダリが会話が終わったのを見計らってそう言ったので今日は3人と2匹で仲良く登校。


…2匹?


「ねぇノボリの手持ちってなに?」

「ワタクシですか?シャンデラでございます」


「へぇーシャンデラかぁ。見せてー?」


純粋な好奇心で言ったのに露骨に嫌そうな顔をされた。なんだよ。


「いえ、シャンデラはゴーストタイプなので昼間からだすのは少し…」


もっともらしいことを言ってるけどクダリが小声で教えてくれたよ

“ノボリ、ミハル以上に親バカ。デレッデレになるとこ見られたくないんだよ”





デレッデレのノボリ、見たいなぁ。













**




「じゃあねノボリー」

「ええ。クダリ、ミハル様になにかされたらきちんと報告して下さいね」

「どんだけ私信用ないのさー」



ケタケタと笑うミハルと、わかったーとにっこり笑うクダリを見てため息をつきながらノボリは自分の教室へと入っていった。






「ノボリはしっかりしてるねぇー」


自分の席に座ってアポロを2人で食べながらおしゃべり。はやく来たおかげでいつもより時間の余裕がある。


「んー…でもノボリちょっと抜けてる。あと、結構テンション高くなりやすい」



一粒ずつぱくん、と口にアポロを放るクダリは無自覚なんですかわざとなんですかあざとかわいい男子ですか。



「そういえばブラボーって叫んでたなぁ」


きのこの山で。


「ミハルもうノボリのブラボー聞いたの?すごいね!それ結構珍しい!ボクも滅多に見ないよ」


…きのこの山で?


「へぇ…ノボリのツボがわかんないや」



「てかミハル、なんでアポロのピンクの部分ないの?」



私の手元にはアポロの茶色の部分だけ。それをちまちま食べていた。


「ちょっとねー。あ、クダリにも見せてあげる」


丁寧にカバンから取り出したそれを見てクダリは拍手をくれた。



「すっごい!ミハル器用だね!」

ふふん、とどや顔をしてたらチャイムが鳴った。









***


「ミハル、お客さんみたいだよ」

「へ?」


昼休み、購買にダッシュして買ってきたチョコデニッシュにかぶりつこうとしたらクダリに声をかけられた。

誰だ私の食事タイムを邪魔する奴はヌオーの餌食にしてやろ「あ、ミハルセンパイ!こんにちわ」


「やぁトウヤくんトウコちゃんじゃないの」


笑顔で駆け寄ってきた双子ちゃんにどろばくだんを喰らわせるなんて出来ない。むしろ今日もかわいいね。


「あの、センパイ。前に言ってたお弁当なんですけど…」


お弁当?…ああ!確かちょっと前にノボリさんに手作り弁当をねだって玉砕した時に言ってたな。


「え、ほんとに作ってきてくれたの!?」


トウヤくんの手には丁寧に包まれたお弁当。


「はい。あの話をした次の日から作ってきてたんですけど…」


そう言って双子ちゃんが苦笑いを溢す。


ああ…



「ごめんね、昼休み食堂に行ってたんだわ…」




まさかほんとに作ってきてくれるとは思ってなかった(忘れてた)から私は生徒会の名の元、割引を有効活用していたんだ。
それを定例会の時に言ってくれれば良かったのに…でもこの子達いい子だから気を遣ってくれたのかな


「で、今日は教室にいたみたいなんで来たんですけど」


「センパイもうお昼あるみたいですね…」


気まずそうに私の手元のチョコデニッシュに視線を向ける2人。


「いいや!私はトウヤくんの作ったお弁当も食べる!私の四次元腹を舐めるな!」


いいんですか、と心配そうに見つめるトウヤくんの手からお弁当をぶんどる。


「へっへー!この弁当はもう私のものだ!どうしようと私の勝手だもんね!」


小学生男子のようなセリフを吐けば、双子ちゃんは少し驚いた後笑ってくれた。




「じゃあお弁当箱は定例会の時にでも」

「明日洗って返すよ」

「そしたら明日作ってこれないじゃないですか」



目尻をさげながら笑ったトウヤくん。え、明日も作ってきてくれるの?


「あ、お口に合わなかったり嫌だった、別にいいんですけど」


この子は語尾が“けど”になることが多い。そしてそれ故に私は断れないのだ。



「じゃあおいしくいただいて返すね!」


互いに納得したようなのでお弁当をあける。


「うっわ。まじうまそう」


色彩豊か且つ栄養バランスの良さそうなお弁当は見た目だけじゃなくて味も素晴らしかった。


「トウヤくん嫁にこない?」


私にとって最上級の褒め言葉をなげかけると戸惑いながら笑ってた。
じゃあまた後で、と踵を返した2人だけど


「あれ、そういえば今日定例会無いよね?」


トウコちゃんが思い出したようにこぼしたセリフに箸が止まる。


「え。そうなの?」


「ああ、そういえば今日顧問出張だしなんかの点検日だから無いって」


初耳なんですけど。
クラさん今日出張なのか。




「じゃあ放課後にでも取りにきます」


そう言って今度こそ2人が教室をでていった後、クダリに声をかける



「ねぇクダリ、放課後ノボリ呼んでくれない?」


「いいけどなんで?」


「ほら朝見せたやつ、みんなで食べようよ」


「そっか!わかったー!」




よし、放課後が楽しみだ。
しかしトウヤくんの弁当まじうめぇ。


そしてチョコデニッシュも貪った私まじ四次元腹。


***






放課後、教室から人が消えてきた頃にノボリはやってきた。


「やっほーノボリ」


「おや、ミハル様も一緒でしたか」



そう言ってノボリは教室に入ってきてクダリの前の席に座る。


「なにかご用ですか?」


「ええ、ちょっと」



用件を急かすノボリを適当にあしらい、双子ちゃんがくるのを待つ。2人は案外すぐやってきた。



「センパイ遅れてすいません。掃除当番で…」


「いいよいいよー」



そろって申し訳なさそうにする2人を手招きし、私の前の席に座らせる。トウヤくんが椅子に、トウコちゃんは机に座る。お行儀なんて気にしません。


「じゃまずはい、お弁当箱。すっごいおいしかった!」


一応水道で軽く洗ったお弁当箱を返す。照れるトウヤくんまじ嫁にきてくれ。


「それじゃ、食べようか!」


私の声に、クダリはわーいと拍手をし、事情を呑み込めない3人は首を傾げる。



「じゃっじゃじゃーん!!」


ニャン○ュウばりのダミ声で取り出したるは、



「「「…カー○゛ィ?」」」


「せいかーい!」



直径20センチほどの平面のチョコで作られているのはピンクでつぶらな瞳で食いしん坊で任○堂の○ービィ。

いわゆる痛チョコというやつである



「すごーい!センパイが作ったんですか!?」


「すげー…」


ふふん。どうだ私は実はお菓子づくりが得意なんだぜ!



「……ミハル様がコレを?」



ノボリが目をかっぴらいて尋ねてくる。ええ、正真正銘私が作りましたとも!
ちみちみアポロを切ってピンクの部分を集めたんだぜ!
作ろうと思ったのが夜遅かったからお店が開いてなかったんだぜ!

「今日はカービィの誕生日なんですよ。私すごくない?」



「ぶ、」

「ぶ?」



「ブラボー!!」


きましたノボリさんのブラボー!!

「イェーイブラボー!!」

「「ブラボー!!」」


ブラボーコール再び。クダリが若干引いてるっぽいけど気にしたら負けだ!



「カ○ビィ…たいへん愛くるしいですね…」


ノボリが目に見えて浮かれてるから、つい私は


「じゃあ食べましょうか」


パキッ




「「「「カー○゛ィィィイイー!?」」」」






真っ二つに割れたカ○ビィの姿を見て落ち込むノボリの姿を見て私は爆笑した。








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