クダリ視点
「クダリ、今日はアナタ見回りでしょう」
帰る支度をしていたらノボリに声をかけられた
「あー、忘れてた!待ち合わせの時間過ぎてる!」
慌てて懐中電灯を掴んで走り出した。
遅れてついた待ち合わせ場所には誰もいない。先にいかれちゃったかな。
足早に進んでいったら、遠くにぼんやりと灯りが見えた。相方に追いつけると思って走っていったら灯りは懐中電灯ではなく、ランプラーのものだった。
しかも線路で。不思議に思って近づいたら線路に立ち尽くすツグミの姿があった。
驚いて声をかけたら様子が変。
重心が微妙にズレてる。
「左足だね」と指摘したらビンゴ。ツグミってば超わかりやすい
今日の相方はたまたまツグミだったらしい。最近はどこでも風邪が流行ってるから駆り出されたみたいだ。
背中にいるツグミが申し訳なさそうに謝ったからそれは違う、と訂正させた。うん。素直でいいね。
「あ、見回りどうしましょう」
責任を感じてるみたい。ボク全然気にしてなかった。
「ノボリに頼んでおくよ」
ライキャスでノボリに連絡する。事情を説明すると小言をいいながら引き受けてくれた
「医務室でちゃんと治療するんですよ!大体女性が1人で見回るなんて物騒でしょう!これから気をつけなさい!」
話が終わってから、ツグミがノボリさんってお母さんみたいですねって笑ってた
たしかにね。
それから医務室につくまでなんでもない会話をした。
「それで、黒くて長い髪の女の人が追いかけてきて、私ガケから落ちたんです。それで体がビクッてなって目さめました」
「あーたまにあるよね。落ちるはずないのに落ちた感覚になるやつ」
「だからホームめっちゃ怖かったです。メタモンがいてくれて助かりました」
「メタモン妙に君になついてるよね」
「そうですか?うれしいな後でおやつあげよう」
「ボクへの感謝はー?」
「クダリさんには…プリンをさしあげます」
「ピンクの?」
「食べるほうです」
医務室で湿布を貼って包帯を巻いてあげる
ツグミは自分でできますから、って言ってたけど不器用そうだからたぶん無理だろうね。
「よし、できた!3日は安静にしなよ?」
「でも仕事が、」
「上司命令!」
そう言うとちょっと不満そうだったけど了承してくれた。素直がイチバン!
その後ほんとにプリンをもらって、寮まで送り届けた。
「ノボリおかえりー」
「ただいまクダリ。ツグミ様は大丈夫でしたか?」
「うん。ちゃんと包帯巻いてあげたし安静にするように言った!」
「それは良かった、」
「お見合い相手に怪我などさせては沽券に関わりますからね」
ノボリの言葉になんだかもやっとした。
コケンにかかわる。
上司の娘になんかしたらボクらの信用が落ちるってコト?
確かに正論。だけどなんだか嫌な感じ。
「クダリ?」
「…ううん、なんでもない」
ボクらはバトルが、地下鉄が、ポケモンが好きで、今ここにいる。
ツグミはそれを壊すかもしれない
ツグミの意志に関係なく。
ツグミはただの女の子じゃない。
ボクらにとって厄介な存在なのかもしれない。
ボク、後悔してる?
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