昨日は結局あれっきりクダリさんには会わなかった


私は与えられた仕事を黙々とこなし、定時にあがって寮に行きご飯を食べてお風呂に入ってダストダスとメタモンと遊んでから寝た。

1人暮らしは初めてだからちょっと緊張していたけれどなかなか好調だ。


「よし、今日も行くか!」


朝食を済ませ、制服に着替えてメタモンを肩に乗せて玄関の鍵を閉めた。

上機嫌のまますぐ近くのギアステーションへ向かった。





「夜…ですか」


「ごめんなさいねぇ、深夜担当が熱出しちゃったらしくて」


「風邪ですかね。わかりました。引き受けます」


「ありがとう、助かるわ」



職場に着いて早々先輩に呼ばれたかと思えば熱を出して休んだ先輩の代わりに最終が過ぎてからする見回りをやってほしい、というものだった。



それは警備課の仕事じゃないのか、と思ったが警備課で風邪が流行っていて人手が足りないらしい。先輩方は家庭のこともあるので深夜は無理だそう。


で、私に回ってきたと。


まぁなんとかなるだろうと深く考えずにとりあえず仕事に取りかかった。
















「それじゃあお先にー」

「お疲れ様でーす」


定時になって帰ってゆく先輩方に挨拶をした後は退屈になった。

ダストダスにゴミ処理もしてもらったし、見回りまでには結構な時間がある。
しばらくはメタモンと遊んでいたがあまりにも暇だったので構内を散歩し始めた。


「よく考えたら私ここの地理把握してないんだよね」


構内地図を手に歩き回る
時に示し合わせて納得し、

「これがシングル、…あっちがダブル」


まだ営業時間なので人も多い中、ゆっくり見てまわり、地理を把握していく。


「すいません、カナワ行きってどこですか」

「トイレ行きたいんですけど」

「これ拾いました」


途中で何度かお客様に色々と尋ねられたがちょうど今まわってきたおかげでなんとか答えられた。


だけどまだ新人なので答えられない質問をされたら困る。逃げるように休憩室に戻っていった。



帰り際に売店で夕飯を買い、ダストダスとメタモンと一緒に夕飯を食べた。デザートにプリンも買っていたがお腹一杯になったことで眠くなり、設置されているソファーに横になった。







『ねぇ、待ってよ』

『一緒に遊んでよ』

『ねぇ!!』




「…ひぃっ!」


黒くて長い髪の少女に追いかけられ、崖で足を踏み外したところで身体がビクンッとなって目を覚ました。久しぶりにみたなぁ、ビクンッてなる夢。


息をついて頭を覚醒させる。
あー…怖かった。最後少女の顔がほんとに冗談抜きでホラーだった



「今何時…っ!」




落ち着いてから時計をみるともう見回りを始める時間だ。見回りは大変だから2人組みでやるから時間になったら落ち合う、ということだったのに。まさか爆睡していたとは。



慌てて飛び上がると一緒に寝ていたメタモンも目を覚ましたようなので肩に乗せて、まだ寝ているダストダスはモンスターボールにしまって休憩室を出て行った。




構内の証明はほとんど落とされ、懐中電灯を照らしながら進んでいく。待ち合わせ場所には誰もいなかったから先に行かれたのかもしれない。早く追いつかなければ。


「ここどこだろう…」



昼間地理を確認したとはいえ暗くてよく見えないからイマイチ感覚が掴めない

それにさっき怖い夢みたばっかりで…


「めちゃくちゃ怖いんですけど……。暗いしここどこよ」


ビビりながら呟くとメタモンが何か気づいたように肩からずり落ちていった。


「メタモン?どうしたの…」


声をかけるとメタモンはみるみるうちに形を変え、見覚えのある姿になった。


メタモンのへんしん、だ。


初めてみるへんしんに驚いてまじまじと見つめる


「ランプラー、だね」



メタモンはすっかりランプラーの姿になっていた。



メタモンはその姿でふわふわ浮かぶと、標識を照らしてくれた



「シングル…」


メタモンのおかげで自分のいる場所が把握できた。お礼を言おうとして足を踏み出したら景色が揺れた。


メタモンが鳴き声をあげる。




「いっ…たぁー!」


一瞬経ってから自分の身に何が起こったのかわかった


線路に落っこちた。派手に。


「びっくりしたー…」


心配したメタモンが近くにやってきてふよふよしている。


「ありがと、メタモン……あれ」

心配そうにみているメタモンに笑って立ち上がろうとして足に痛みを覚える


やばいコレ…


「捻った…?」


立ち上がることはできたが左足がズキズキと痛む
捻挫したかな。仕事2日目にして…?


「どんだけ私役立たずなの…」


呆けていると突然眩しい光に襲われた 懐中電灯だろう。
一緒に回る予定だった相方だろうか



「ツグミ!?」


少し光をずらされて目を向けることが出来た。


「…クダリさん?」



まぁこちらからは暗くて見えなかったんだけれど、この声はきっとそうだ。


「何してるの?」


そう言って線路に降りてきた


「いやぁ…見回りだったんですけど足を踏み出しちゃって…」


恥ずかしくて語尾が小さくなる。


「大丈夫?ケガとかしてない?」

「だ、大丈夫デスヨ…!」


「左足、だね」


ギ、ギクゥッとマスオさんのような効果音が聞こえそうなくらい動揺する。
なんでそんなすぐ見抜けるんだ。

しょうがないなぁ、と呟いたと思うとこちらに背を向けてしゃがみこんだクダリさん



「はい、おんぶ」


小さな子供に言うような口調。


「え?いやいや無理です。そんなこと出来ませんよ」


上司にそんな迷惑をかけるなんてそんな、

「お姫様だっこの方がいいの?」
「すいません背中お借りします」

クダリさんならやりかねない。恐る恐るしがみつく。背中広い。



よっ、と軽々立ち上がられて少しびっくりした。意外と力持ちなんだなぁ。



「ボクも今日見回りだったんだけど仕事で遅れちゃって、待ち合わせ時間過ぎてたから急いできたの。そしたらランプラーの灯りが見えたからさぁ」


クダリさんの背中で話を聞いている。




「…すいません」


「ツグミ、こういう時はすいませんじゃなくて?」



「ありがとうございます…」



顔をうずめて感謝の意を述べるとうん、という上機嫌な声が返ってきた。










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