16時40分
ツグミは与えられた個室のベッドに倒れこんで数分前の会話を思い出して焦っていた。
あれは告白と受け取っていいんだよね?
あれなんか急に不安になってきた。もしかしてクダリさんは友達として好きって意味だったりして。
なのに花嫁修業してきますとか自惚れすぎじゃない?うわ恥ずかし過ぎるどうしよう。
でも、好きって言われてそれに応えただけなのに胸のもやもやしたつっかかりが嘘みたいにすっきりした。
私はクダリが好きなんだ。
「…自分に自信がもてるまでジョウトでがんばろう」
先はまだまだ長い。
一方クダリはツグミを乗せた客船が大きな飛沫をあげながらジョウトの方向へと優雅に走ってゆく様を見届けていた。
自分の隣にいるのがツグミの母親だとも知らないで。
「アナタがクダリさんね?」
「あ、はい」
「イケメンねぇ〜。あの子のこと好きなの?」
「はい」
突然話しかけられて戸惑いつつ、クダリは笑って答える。
「あの子ねぇ、自由に生きたいとか言ってわりと周りが見えてないことがあるのよね。人に迷惑かけてもお構い無しよ。ほら、お見合いの時とかそうだったでしょ?」
「え、あの貴方は?」
「あらあら。自己紹介がまだだったわね。はじめまして、ツグミの母です」
「え?は、はじめまして。クダリです」
改めて名乗り、お辞儀をする。
「クダリくん、ツグミが迷惑かけるかもしれないけどよろしくね」
「迷惑なんてないです!」
「ふふ、さっきも言ったけどツグミってたまに周りに迷惑かけてもけろっとしてるのね。そんなあの子が迷惑かけたくないって言ったもんだから私驚いちゃった」
よっぽどアナタのことが好きなのね、と笑ったツグミのお母さんはどことなくツグミと似ている。
「うれしい、です」
その後、船が完全に見えなくなるまで話をしてようやく別れた。
アーケオスに乗って自分の分まで働いてくれているノボリの元へと急ぐ。
ちょっと寄り道して
ノボリへお土産と、
教えてもらったサイズの指輪のオーダーメイドを頼んでいこうかな。
次に会えるのはいつだろう。
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