「ノボリ、ツグミいた!?」
ホームの向かい側から小走りでやってきたノボリに声をかけたが首を横に振られる。
「寮にも戻っていないそうです」
「どこ行っちゃったんだろ…」
ツグミの持ち場であるホームや休憩室やらを手分けして探したがツグミの姿は見当たらなかった。
きっとツグミ、ボクらの話聞いてた。それでボクらに迷惑かけないように、とか考えてる。
キズつけたかもしれない。
「失言でございましたね…」
ノボリもばつが悪そうに制帽のツバを下げる。
「地上を探しに行ければ良いのですが…」
あいにく地上を探しに行ける余裕はない。だってボクらはサブウェイマスター。
お客様に迷惑かけられない。
ギュッと拳を握るとノボリの手が肩に置かれた
「ノボリ?」
「アナタがサボるのはいつものことでしょう」
「どういう…」
「ツグミ様をここに連れてきたのはアナタです。キチンと責任をとりなさい」
制帽とコートはワタクシが預かります、とひっぺがされる
「はやくお行きなさい」
かすかに笑ったノボリを見て、わかった!と返し走り出した。
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「おつかれさまです!ポケモンセンターです」
ジョーイさんににっこりと明るく丁寧な挨拶で出迎えられる。
その隣にはタブンネも一緒だ。
この街のポケモンセンターは広くて設備も充実していることで評判らしく、初めて街を散策したときもなんともあっさり見つけることができた。
これならわざわざお2人のお家にお邪魔する必要は無かっただろうに、と複雑な心境である。
ケーシィの姿のまま戻ってきたメタモンにへんしんを解いてもらい、受け付けに差し出す。
「この子たちをお願いします。」
「はい。お預かりします」
ダストダスとメタモンを預けた。バトルはしないから別に傷ついたりはしてないけどたまにはリフレッシュしてもらおう。
タブンネがモンスターボールを運ぶのを見届けてからその場を移動する。
数回コール音が鳴り、目の前の画面に映し出された人物を見るのは約1ヶ月ぶり。
「お母さ『ツグミ!アンタ今どこにいるの!』すんません」
久しぶりに顔を見た母は感動の再会ーなんてもんはなくてこちらの顔をみるなり怒声を飛ばしてきた。
「ごめん、って。元気?」
『母さんは元気よ。……』
見ればわかることを尋ねるのはやっぱり多少なりとも感じている後ろめたさをごまかす為だったが母の返答は微妙なものだった。
「どうかした?」
『お父さんがねぇ〜…』
お父さん、と聞いてドキリとした。怒ってる?呆れてる?家追い出される、ってもしかして勘当?
瞬時にたてられた予想にぶわっと嫌な汗があふれる
次の言葉を聞くのが怖くなって思わず目を瞑る
『お父さん、ツグミのことすごく心配してるのよ。結構まいってるみたいで…』
「え……」
だけど続けられた言葉は予想とはまったく異なるものだった。
『ほら、あなた全然結婚とか考えてないみたいだしひきこもってばかりだったじゃない?お父さんもいい歳だし、面倒をみてくれる人と結婚してくれたら安心できると思ったのよ』
だからあんまりお父さんを責めないであげてね、と続けた母に涙が出そうになった。
だけどしんみりとした空気はすぐにかき消され、母に質問責めにされる。
『まぁお父さんにはツグミが元気だってこと伝えとくわ。それより!あなた今どこで何してるのよ!お金は?食事は?どこに住んでるの?』
次々と繰り出される質問に答えていき、一通り落ち着いたところで本題に入る
「お母さん、お願いがあるんだけど」
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