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「あれ、子供がいる」


バトルサブウェイでバトル要員を務めている私は今もシングルで挑戦者の相手をし、負けて下車したところだった。


1戦目だったし別段気にせず、通常業務に戻ろうとホームを歩いていたら、ベンチに1人ちょこんと座る小さな男の子を見つけた。



じっと俯いて身動きをとらない。


小さい子供が挑戦にくることは別に珍しいことじゃないけどその子はモンスターボールを持っていないようだし、なんだか妙に気になって私は思いきって話しかけることにした。



「ねぇ君、どうかした?」



話しかけると男の子は顔をあげてこちらを窺うように不安そうな表情をした。


「挑戦しにきたの?迷子?1人?」



なるべく怖がらせないようにしゃがみこんで目線を合わせて尋ねると男の子は私の質問に首を縦横にふって答えた。


どうやら迷子らしい。1人だと答えたのでお母さんは?と聞いたがやはり首を横にふってしまった。


「んー…。ギアステーションからでたい?」


ふるふる。違うらしい。


「どこか行きたいところは?」
「お家どこかわかる?」
「お名前は?」


色々と質問をしてみても首を横に振るばかり。どうしたものかと悩んでいると男の子は涙ぐみながら私の制服の袖をぎゅっと掴んだ。かっわいいなオイ。




「とりあえずお姉ちゃんと一緒にいく?お菓子があったはず」


頭を撫でてやるとちょっとだけうれしそうな顔をしてから遠慮がちに首を縦にふった。めちゃくちゃかわいいんですけどアレ私ショタ好きだったっけ?













少年と手を繋いで仕事部屋に戻ろうと歩いていると「ナマエ様!」と後ろから大声で名前を呼ばれた。少年が驚いてビクッとなっちゃったじゃないの、


「ノボリさん…」



振り返れば上司であるサブウェイマスターの1人、ノボリさん。
めんどくさい人に見つかってしまった、と心の中でため息を吐く。
だってほら今だって肩を震わせて口はきれいに大きな三角を描いて信じられない、とでも言いたそうに目を見開いている。



「ナマエ様…!その子は…」


「ああ、迷子かなにかで「隠し子がいらっしゃったのですか!?一体誰の子でございますか!?ワタクシという者がいるというのに!!」…。」


駄目だコイツ。壮絶な勘違いをしてやがる。普通に考えれば迷子だってわかるだろ。どんな思考回路してるんだ。


ああそういえばクダリさんが前に「ノボリは頭いいんだけどたまに頭おかしい」って言ってたな。こういうことか。それにしたっておかしすぎる。


「ワタクシのことを愛してると言ったのは嘘だったのですか!?」


「そんなこと言った覚えないんですけど」


「なんと!マッギョの次くらいに愛してると仰ったじゃありませか!!」


ああ、そんなことも言った気がする。うん。だけどさ私ソレ言う前に「私マッギョの可愛さが見いだせません」って言ったんだけど。つまりそれ以下だって皮肉のつもりだったんだけど。



「全力で抱きしめたいとも仰りました!!」


「それは文頭に“私がコマタナだったら”とつけて言いましたよね?」


もしくはキリキザンだったら全力ハグ。とは言った。

しかしこの人に皮肉や嫌味はこうかがないようだ…



「ナマエ様がツンデレなのはわかっておりましたが…ここまでとは…」


「オイ私がいつデレた」


つい上司に向かってタメ口を叩いてしまっけれどノボリさんは気にする様子もなくむしろまだ何かぶつぶつ言っている。



「ごめんね、行こっか」


めんどくさくなったので少年に声をかけて上司には目もくれず再び歩きだそうとすれば、



「ああナマエ様、ワタクシも行きます」



真面目な表情に戻って、少年を挟んで一緒に歩き始める。黙って真面目な顔してればかっこいいのに。真剣に仕事してる時だってちょっとは、



「まるで家族のようですね」




目をスッと細めてやんわり微笑むノボリさん。
ちょっとじゃなくてかなりかっこいいのに



「ああでも子供は女の子がいいですね。ナマエ様に似て可愛らしい子になるでしょうし、例え赤ん坊といえどワタクシ以外の男がナマエ様の胸に「はいはいちょっと黙りましょうか」




もういいからお前黙っとけ。













「あっれー迷子ですか?」


仕事部屋に戻ると同僚たちが物珍しそうに少年を見る。まっさきに話しかけてきたのはカズマサ。

「親近感わくなぁー」


仲間意識でも芽生えたのか少年の頭を撫でる。


「放送とかせんの?」


「クラウドさん。それが1人でいるみたいなんでとりあえず私が保護しようかと」


そう言えばみんな快く承諾してくれた。





緊張している様子の少年にクッキーとホットミルクを差し出せば、おずおずと口に運んでゆっくり飲み込んでからはにかんだ。


かわいいなぁほんと。連れて帰りたいくらい。



でも本当にこの子の身元がわからないから一体どうしたものか。



「もうお姉ちゃんの家にくる?」

冗談のつもりで笑って少年に問いかければ

心底うれしそうな顔で笑って私のほっぺたにキスをしてきた


「ましぃぃぃいいいー!?」




いや、キスというより動物が主人の顔を舐めるような感じで。
すりすりと顔を寄せる少年はまるで、



「…ポケモンみたいね」


そう呟くと少年は目をまんまるに見開いて、



「わおん」



まるでヨーテリーみたいに鳴いたかと思えばその姿は一瞬で変化した

犬のようなその姿は以前トウコちゃんにずかんで見せてもらったことがある。たしか…


「…ゾロア?」


「わふっ!」



なんとまぁ、少年はゾロアだったらしく小さな身体で私にタックルをかましてきた。
あれ、ゾロアってめずらしいんじゃ?







「ポケモンといえどワタクシのナマエ様にキスなど赦せません!!」

タックルを全力で受けとめ頭を撫でているとノボリさんが引き離そうとゾロアに手をかけた。



「ちょっと何するんですかノボリさん!!というか私がいつノボリさんのものになったんですか!?」





「出会ったときかぎゃあああー!!」


気持ち悪いことをいいかけたノボリさんの手を噛むゾロア。おお、もう敵と認識してるのね。




「ゾロア、イイコイイコ」


「ワタクシへの心配は!?」





ノボリさんを無視して頭を撫でるとうれしそうに舐めてくるゾロア。


「くっ、またしても…!」









「 ノ ボ リ ?」






賑やかな仕事部屋に響く声。
一瞬にして場の空気が固まる。皆が振り返れば
声の主は口角をこれでもかというくらい吊り上げて笑っているが、帽子によって影の落とされた目は一切笑っておらず、背後にドス黒いオーラすら纏っているように見える。





「おや、クダリ…」



「ねぇノボリ?仕事もしないで何してるの?書類すっごい溜まってるんだけど?ボクが寝る間も惜しんでやってるっていうのに何ナマエに迷惑かけてんの?」



ねぇ?とノボリさんに問い詰めるクダリさんは目の下にクマができていてさらに充血していて苦労が伺える。


「ク、クダリ…」


「デンチュラ、いとをはく」






容赦なく攻撃命令を下したクダリさんはノボリさんを抱え、


「ごめんねナマエ。みんなも。じゃあお仕事がんばってね」




今度は天使と呼ばれる純粋な笑顔(やっぱりクマはすごかったけど)で声をかけてからクダリさんは部屋から出ていった。




「…ゾロア。あの人には逆らわないようにしようね」


「わふっ…」









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アニクダっぽいな…



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