ボク、クダリ!サブウェイマスターをしてる!
ボクには双子の兄のノボリがいるんだけど、最近ちょっとうっとおしい。
「ナマエ様、愛しております」
「はいはい私も愛してますから書類がんばって下さいねー(棒読み)」
執務室で書類に励むナマエと、ナマエに猛アタックしてるノボリ。
それにうんざりしながら書類に向き合うボク。なにが悲しくて自分と同じ顔の肉親のラブコールを目の前で見なきゃいけないの。しかも全然相手にされてないし。
「どれくらい愛してますか?」
ちょっとノボリそれうざい。バカップルの女の方が聞く質問でしょソレ。
「そうですね。ハンバーグに添えてあるパセリくらい愛してます」
ほら全然相手にされてない!パセリって!あってもなくてもいいじゃん!むしろただの飾りだよ!
「うれしいです」
なんで顔赤らめてんの。パセリって言われてんのに!
「ナマエ様ナマエ様」
「なんですかノボリさん」
「抱きしめてもよろしいですか?」
いいから仕事しろよ。…まさかボクがこんなこと思うなんてね。
ううん、ボクほんとは今すぐサボりたい。でもこんなやりとりがここ最近毎日のように続いてサボりまくってたうえにノボリまでちゃんとやらないもんだから溜まりに溜まって大変なことになってる。
「残念ですね。私がベトベターだったら今すぐ全力でハグするんですけど」
ボクらが働かないせいでとばっちりを受けてるナマエは絶対零度を使えそうな目でひたすら書類をすすめていく。
完全に被害者なのに書類がんばってくれるし、加害者の戯れ言にも一応返事してあげるあたりナマエってほんとはとっても優しいよね!
「子供は何人欲しいですか?」
「アナタとの間に子供は欲しくないですね」
キッツイこと言うね!でもノボリうれしそうだよ!「成る程ワタクシと二人きりが良いと」ってどんだけポジティブなの。馬鹿なの。
「指輪をプレゼントしたいのですがサイズを教えていただけませんか?」
「指輪もらうくらいならポテコ嵌めてたほうがマシです」
しょっぱいね!
ノボリってばまたなんか変な想像してる。きっと学生カップルがいちゃついてる感じの妄想でしょ。
「青春ですね…」とか言ってるし。
心の中でツッコミをいれ続けてたら書類が一段落ついた。ココアでも飲もう。
「ナマエ、なんか飲む?」
「あ、じゃあコーヒーお願いします」
「おっけー」
ナマエはちゃんと仕事してれば普通に笑ってくれる。うん、かわいい。
給湯室に向かおうとすると「待ちなさいクダリ!」と呼び止められた。
うんざりしながらなに?と聞き返せば
「ワタクシが淹れます。ナマエ様の飲み物になにか盛られては困りますから」
実の弟になんてこと言うんだ、ありえない。むしろ何言ってんだコイツ、と思ったら
「前私の飲み物に媚薬盛ったのはどこのどいつですか。いいから淹れるならさっさと淹れてこい」
ナマエの発言でどん引きした。どうしよう兄が犯罪者なんて嫌過ぎる。
給湯室に消えた兄の先行きを不安に感じながらナマエに声をかける。
「ごめんね、ナマエ。ノボリが迷惑かけて」
どうやらナマエも一段落ついたようで、ペンをおいて腕を伸ばす。
「いえ、私もノボリさん好きですから」
うん?ちょっと待って。なんでナマエそんな幸せそうなの。なんで顔赤らめてんの。
「好き、って…」
「もちろん恋人としてですよ」
ち ょ っ と ま て
「付き合ってんの!?」
「はい。2ヶ月くらい前から」
にっこり笑顔のナマエ。
頭がついていかない。え、ノボリとナマエ付き合ってんの?ノボリの一方通行じゃなくて?
「全然そうは見えなかったけど…」
「人前でイチャイチャできませんから」
恥ずかしげにそう言うナマエ。え、じゃあさっきまでの毒舌はただの照れ隠し?
「入りましたよ」
驚きに悶えているとノボリが戻ってきた。ココアを受け取って一口飲む。うん、おいしい。
「ナマエ様、書類はお済みで?」
「いいえ。誰かさんが働かないせいでなかなか終わりません」
「終わったらナマエ様は帰ってしまわれるでしょう?」
お前そんな理由で書類サボってたのか。純粋にサボってるボクのほうが何倍もマシじゃない?
「そんなことしなくてもはやく終わればそのぶん一緒にいられるでしょう?」
「おや。待っていて下さるのですか」
当たり前です、と言ってそっぽを向いたナマエ。
ああなんだただのツンデレか。
なにがかなしくて実の兄のラブシーンをみなきゃならないの。これからは書類はさっさと終わらせよう…。
あーあ、彼女欲しい
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いちゃついてない…だと
なんだ、ただの…