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揺れる車内。開かれた扉の向こうから現れて自己紹介してきた人物に絶句した。




「えっ…ノボリっていうのは人間だったの?」


「ええ、ワタクシは人間でございますが?」





何を言ってるんだ、というように首を傾げたノボリにため息がでた。


シンオウのジムを制覇し、イッシュにやってきたナマエは、バトルサブウェイという施設に“まし”と鳴く生物がいるということを小耳にはさんで


ナニソレ可愛い!!と期待してやってきた

まぁ詳しく聞かなかった為に知っていたのは“まし”と鳴く“ノボリ”という名前だということだけだったのだが。



可愛いポケモンが大好きなナマエは“まし”と鳴くと聞いただけでそれはそれは可愛いポケモンなんだろうと予想していたのだが。


その生物は確かに人間だった。


イッシュにはマシュマロポケモンとかいるのかなー世界は広い!なんて期待してたのに


確かに詳しく話も聞かずに勝手にポケモンだと思い込み、勝手な妄想を膨らまし、勝手に期待してた自分に非があることはわかっていた。それでも、



「がっかりだよ!!」


「まし!?」



ふわふわで白くて小さな可愛いポケモンを想像していたのに目の前で“まし”と鳴いたのはマシュマロどころか無表情で背の高い真っ黒い人間でした。


あんなに聞くのを楽しみにしていたというのに実際に聞いてもなんの感動もなかった。
せっかく慣れない施設、ルールに苦戦しながらやっとたどり着いたというのにまったく可愛い要素がないじゃないか!詐欺だ!




「なんでしたっけ、マシュマロもどきさんでしたっけ?」


「ノボリでございます」


可愛くなければまったくもって興味がない。もう負けてもいいからさっさとバトル終わらせよう、とすっかりやる気を失っていた。


一方ノボリは、なかなか強い挑戦者がやってきたと聞きノーマルではあるが多少期待してやってきたのに
よもや自分のことも知らず、よくわからないが勝手にがっかりされて困惑しつつ多少不愉快に感じていた。



「んじゃいきますか。フワンテ、いってらっしゃーい」


一目惚れして捕まえた可愛い可愛い相棒をだすとマシュマロもどきならぬノボリは見慣れないポケモンに沈んだ気分が多少マシになり、ようやくバトルができると思い


「ほう。ゴーストですか。ワタクシのシャンデラと少し似てますね」


そう言ってモンスターボールを放った。中から現れたのは紫色の体にゆらめく青紫は炎、ふたつの黄色いまんまるおめめ。




そのシャンデリアを彷彿させる姿を見た瞬間、



「きゃぁぁぁぁあああ───なにその子可愛いぃぃいいい─────!!」


今にも鼻血をふきだしそうな勢いでナマエが悲鳴にも似た声をあげた。驚いたシャンデラがノボリの背中に隠れる程に。



「お客様!?」


「ノ、ノボリさん!!もうバトル負けでいいんでその子をよく見せて下さい!!」



いつもならこんなことを言われたらノボリは「ふざけないで下さいまし」と言っただろうが、目の前で急に素晴らしく綺麗な土下座をされてはあっけにとられるばかりである。



「ほんとはサイズの小さい感じの子がすきなんだけど…ああでも素敵!!ぜひゲットしたい!!」



恍惚とした表情を浮かべる客にこっそりため息を吐く。
変な客というのは少数ではあるが常に一定の割合で存在するものだ。ここで押されてはいけない。



「お客様、とりあえずバトルいたしませんか?もしワタクシに勝つことができたならこの子のたまごから生まれたばかりの子を差し上げましょう」



厳選で大量に生まれたヒトモシがいるので丁度いい、と思ってだした提案にナマエはくいついた。



「本当ですか!?じゃあ本気でいきますね!!」



そう言ったナマエの瞳には闘争心が宿っていたのでノボリは満足してシャンデラに命令を下した。



















「約束ですよ!!ノボリさん!!」



結果はナマエの勝利。


「素晴らしい。では列車を降りましたら差し上げましょう。それまでしばしお待ち下さいまし」



そう言って備え付けの座席に座るよう促す。



「お強いですね。次はぜひスーパーに挑んで下さいまし」


「えー、と。まぁ…気が向いたら」


「…失礼ですがお名前を聞いても?」


「ナマエです」


「ナマエ様はバトルが好きではないのですか」


「可愛い子がすきです」





ノボリはなんとも複雑な心境だった。バトル狂が集まるこの施設でバトルに興味ないとはどういうこだろう。





やがて車両が停車し、降りて執務室へ向かう。
ナマエを執務室の前に待たせ、中で遊んだいた生まれたばかりのヒトモシに話しかける


「ヒトモシ、あなたが欲しいという方がいらっしゃいましたよ」



「もし?」


「まし」


「もしっ!!」


「まし!」


「もっしぃ!」


「まっしぃ!…いい子ですね。それではいきましょう…か、」


ヒトモシとの会話(?)を終えて振り返ると扉の隙間からナマエがこちらを覗いていたことに気がついた。



「ナマエ様、」


途端にましまし言ってたことが恥ずかしくなって顔に熱が集まるのを感じた。それを見たナマエは興奮気味に




「かっわいいー!!その子をくれるんですか!?白くてちっちゃくてもしって鳴くんですか?まさに私が求めてた子じゃないですか!!可愛いぃぃいいいー!!ノボリさんも素敵ですね!!小首傾げて“もし”と“まし”って会話する姿、写真撮らせていただきました!!いやぁぁあ可愛い!!とっても素敵!!」



ナマエはそこまで言うと興奮しすぎて鼻血をだして倒れてしまった。


薄れてゆく意識のなかで微かに思う


“まし”と鳴く“ノボリ”は確かに可愛いかった

























(きましたよノボリさん!!今日も存分に鳴いて下さい!!)
(鳴かせてごらんなさい!)





(なんかエロい会話してるみたい…。なんかノボリヤケになってない?)



事情をしらないクダリはバトルの様子を見ながらそう思った。




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鳴いて下さい
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